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オルビア国物語  作者: バルカン
第2章
53/72

ダングフォート 2

アッシュが目を覚ますと、

薄暗い部屋に閉じ込められていた。

冷たい石造りの壁に、汚れて黒ずんだ天井

鉄格子がはまった石壁越しに通路の方を見ると

正面にも同じような部屋が連なっており、ここが牢屋なのだと景色が教えてくれる。



幸い手足の拘束はされておらず、義手義足ともに体に付いたままだ。

体を起こし辺りを見渡す。

頭が痛い。



「いてて……

アイツらおもいっきり殴りやがったな……

最近気絶させられてばっかりだ、ちくしょう


────酷い目にあったが……

潜入成功って事でいいんだよな? 」



気絶する前の事


先程の手紙を読み終えたあと、話し合いの末

アッシュを闘技場に戦奴として潜入させることが決まった。


最後までルナがダメだと言っていたが、他に手段が無いのはわかっていたんだろう。

しぶしぶ折れて、同意してくれた。


それからアッシュは、机の中にあった'S'の書いたシナリオを一通り読み、頭に叩き込んだ所でルナ達と別れ


シナリオ通りに、捕まっていた建屋に隠してあった火薬の樽に火をつけ火事をおこしてやった。


しばらくすると、ダングフォートの衛兵達が駆けつけ、

頭を殴られて気絶したところを拘束された所まではアッシュも覚えている。



その後は、犯罪を犯した奴隷として手早く処理され

見事に、'スコール商会' の戦奴として闘技場地下に収用される事になった。

そうして、気絶したままのアッシュは牢屋に運び込まれ、目を覚まして現在に至る



一応は、'スコール商会'の所有物であるため最低限、

生き物としては扱ってくれているようだ。



'S'が考えたシナリオ通りに事が進んでいることに、少し驚き、アッシュも感心せざるを得なかった。


既に夕暮れ時、ぐずぐずしている暇は無い。




闘技大会が開かれるまであと3日だというのに、その1日目の終わりが近づいているのである。



────コツコツ、コツコツ


と石畳を歩く足音が聞こえる。

規則正しく歩いており、体重移動もスムーズ

一定の歩幅を崩さず歩いていることから、おそらく衛兵であろうことが予測される。




しばらく静かに足音を聞いていると、周りの牢屋で誰かが騒いでいる。

ガンガンガンガンと鉄格子に何かを叩きつけるような音と共に奴隷がわめく声が聞こえた。



「オォイ、腹減ったぞ!

メシだ!! メシよこせよぉ!! 」


「うるさい!

戦奴めが! 大人しくしてろ!! 」


「大人しくだぁ?

どうせ、オレ達は次の闘技大会で死ぬんだ!

もうどうでもいいさ、好きに騒がせてもらうぞ! 」


──ガァン!


「ぐぁ!」



恐らく、衛兵が戦奴を殴り付けた音だろう。

騒いでいたやつは突然くぐもった声を出して静かになった。


「何が、どうでもいいだ

貴様らにはやり直しのチャンスが与えられただけありがたいと思え

戦奴として名を挙げ、人気の闘技士(ファイター)になれば今よりは、マシな生活ができるだろう?


せいぜい、死なないように戦って勝つことだ……

もっとも、今の突きでのびてるようでは期待できんか……


こりゃあ、またあの炎の闘技士(ファイター)に賭けときゃ間違いねぇな!」



笑い声と共に、規則正しい足音が再開される


しばらくするとアッシュの牢屋の前を、衛兵がニヤけた顔をしながら、1人で通過していった。



通りすぎる衛兵を横目で良く観察するアッシュ


「ふーん……

見回りは1人、無駄に奴隷に絡む時間もあるたぁ……

警備体制は甘いねぇ…… 」



それから、アッシュは静かに夜が来るのを待つ

足音を聞いている様子だと、見回りが来るのはだいたい3時間ごと

王都のお堅い衛兵と比べるとユルい奴らだ、とアッシュは思った。


夕食だと言って牢屋に投げ込まれたカビの生えたパンを投げ捨て、夜中を待つ

他の奴隷達のイビキが聞こえ始めたのを確認し

行動を開始する。

取り急ぎはソフィの捜索だ。


義手の中に仕込んだ細く尖った鉄の棒を取り出し、

鉄格子の扉の方へ向かい慎重に鍵穴に突っ込んだ。


5分程カチャカチャと手を動かしたかと思うと

満足げに立ち上がり

──────ギィィ


という音と共に扉が開き、牢屋の外に出た。


「さて、ここまでは順調だが、問題はこれからだな

片っ端から牢屋を探すしかないか……? 」


小さく独り言を呟いて、行動を開始する。



それからアッシュは手早く、手当たり次第に牢屋を一つ一つ探して回る。

予想していたよりも地下の収容所は広く、とても1晩で見きれるような数では無かった。



牢屋の中にはだいたい、1人か2人ずつ奴隷が収用され

殆どの者が床にうずくまって寝ている。


何度か目を開けている者にも出くわしたが、

壁に向かってブツブツ何かを呟いていたり、

部屋の一点を見つめて微動だにしない者だったり

床に延々と頭突きを繰り返して頭から血を流している者など

おぞましい光景が広がっているばかりで、ソフィの手がかりは掴めないままだった。



「クソ……あんまりモタモタしてる時間はねぇぞ。

もうちょいしたら見回りが来る……


それまでには、戻らねぇと……」



最後に目の前にある通路の奥だけ確認したら、引き返そうと思ったアッシュはこっそりと、廊下を進む。


アッシュが足を踏み入れた、通路は他の牢屋の通路より少しだけ広いような気がした。

それに、壁には松明も掲げてあって、少しだけ明るくて暖かい。


「ここだけ見たら、今日は終わりにするか……

にしても、この牢屋の奴は厚待遇だな、さっきまでが地獄だとしたら、ここはまだゴミ溜めくらいの感じだ……」




「おや?

こんな夜中に、誰かと思えばいつぞやの若人ではありませんか?

他人の部屋をゴミ溜め呼ばわりとは感心しませんな……」



─────!!!!


牢屋の中の人物に突然声をかけられビクッとするアッシュ

慌てて、飛び退き辺りを警戒するが牢屋の中の人物は構わず話続ける。


「そう、身構えなくても

ここには貴方と私しかいませんよ?


いやぁ、それにしても嬉しいものですなぁ

また、ジジィの相手をしてくれるんですか? 」



アッシュは目を凝らして、牢屋の中の人物を目を凝らしてよく見る


「────!!!! あ、アンタは!!!!」



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