ダングフォート 1
──────────ギィィ
と音をたて重厚な鉄格子の扉が開く。
「おおっ!
スゲーなぁ! ジェイドはそんな事までできるのかよ」
フィリアを起こしたアッシュが近づいてくる。
「いいや……多分やけども
俺たちを捕まえた奴らはおそらく玉藻さんの所の協力者や
扉は簡単に開くように細工されとったわ
手足の拘束も無し、おまけに見張りも無しや……
こんな緩い警備、普通は考えられへん」
「つまり、何らかの事情があってこういう形になったと? 」
「そう考えた方が自然やろな……
もしくは、極端にアホかのどっちかや」
4人は檻をでて、室内を見渡す
部屋の端にあった机の上には何やらメモ用紙のようなものが置かれていた。
びっしりと文字が書いてある。
それは、顔も知らぬ協力者からルナ達への手紙であった。
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注意!
この手紙は、読んだら必ず燃やして処分すること!
目を覚ましたかい?
手荒な真似をして済まなかった。
王国から手配されている君達をダングフォートに潜入させる為には、君達の事を、捕まえてきた奴隷と偽って、私の所有物として簡単な検査で検問を突破するしかなかった。
私の事は'S'と呼んでくれ。
立場上、この場で身分を明かすわけにはいかないが
奴隷商売の関係者とだけ言っておこう。
君達の装備は、その建物の外の馬小屋の飼養箱の中に隠してある。
外にでたら回収していくように。
さて、本命のターゲットの捜索についてだが、少々厄介な事になっている。
今のところ、まだ見つかってない。
ダングフォートの街に運び込まれた事は目撃証言から確実なのだが、その後の行方が掴めていない。
街に運び込まれた奴隷は奴隷市が開かれる会場の建物の地下か、
もしくは闘技場地下に戦奴として、監禁されているはずだ。
例外は無い。
そこで、君達はどうターゲットを捜索すれば良いか
なのだが、奴隷市会場の出納記録を見ると良い。
会場に収用された奴隷達は1人残らず出納記録があるはずだ、闘技場に収用される戦奴も同様。
出納簿には名前や身長、性別、容姿の特徴や年齢等わかる範囲で全て記録されている。
そして、その奴隷が市場に出品されるのか、
誰かに既に買われているのか、誰が買っていったのか、
闘技場送りになっているのか等の全ての出納記録だ。
それを見れば、おそらくターゲットがどこにいるのかわかるだろう。
だが、しかしそれだけではダメだ。
もし、最悪のパターンで闘技場送りになっていた場合、助け出す手段が限られる。
闘技場送りになった戦奴と接触する方法が無いからだ。
そのため、君達の内の1人
手足が機械仕掛けの彼を、私の商会の戦奴として登録する申請書を作っておいた。
この後彼は、私の用意したシナリオ通りに問題を起こし犯罪歴のある奴隷として、闘技場送りになるよう仕向ける。
闘技場内でのターゲットの捜索はその彼に任せるしかない。
机の引き出しの中に別のメモがあるから、それ通りに行動してほしい。
大変申し訳ないが、
現状で私が手助けしてやれるのは、捜索の手伝いまでだ
それ以降の救出方法については、連絡をくれれば可能な限りバックアップしよう。
正直無理がある作戦だとは思うが、次の奴隷市まであと3日、のんびり準備している時間は無い。
やるかやらないかは君達に任せる。
上手くいく保証は無い。
やらない場合は4人揃って逃げてくれれば良い。
街から出る時は、検問はほぼ無いから大丈夫だろう。
だが、やるのなら
健闘を祈る、我々も手伝わせてもらおう。
S
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手紙を読み終えた4人
ルナ、ジェイド、フィリアはアッシュの方を振り返るのだった。
「・・・・」
その後、監禁されていた小さな建屋から小走りに駆けていくルナ達、馬小屋で装備を回収し、人目につかないよう街の中心部に向かって歩き始める。
3人は建屋の方を振り返る
しばらくすると、建屋の中から爆発音
黒い煙がもうもうとたちあがり、炎が見えた。
辛そうな目をしてルナが呟く
「頼んだぞ、アッシュ……」
戦奴
闘技場で殺し合いをする為だけに使われる、最も身分の低い奴隷
ダングフォートの街では月に2回
闘技大会が開かれており、大会の参加人数が足りない時の補充や賭博の対象、残酷な処刑パフォーマンスとして様々な方法で使用される。
重罪を犯して奴隷の身分に落とされた者や
一般奴隷であったが主人に無礼を働いた等の理由で戦奴に落とされる者
戦争で捕まえてきた捕虜等が戦奴として、命を散らすことが多い。
武装させて戦わせ、どちらかが死ぬまで終わらなかったり
勝ち目の無い魔物に挑ませたり
一方的な虐殺が行われることもしばしば
吐き気がするほど悪趣味なこの行事は
日夜、圧政に耐え不満を募らせている民衆のガス抜きや貴族の娯楽として習慣化している。
闘技場での賭博はダングフォートの大きな収入源であり、身分問わず街に住む全ての住人にとっての娯楽と化している。
賭けで身を滅ぼし、戦奴になる者も後を絶たないがそれさえも余興の一貫である。




