潜入
ルナ達一向はダングフォートに向かって移動を続ける。
既に里をでてから4日
オルビア西部の大都市であるダングフォートは目前に迫っていた。
夕暮れ時、街が見渡せる小高い丘に野営を張り
4人はこれからの作戦を確認する。
「ようやく、街が見えたな…
さて、ソフィ救出のためにこれからの作戦なんだが、
いくつか課題がある。
まずは街に潜入する事、
その後はソフィの居場所を突き止めること、
4日後の闘技大会までに救出すること、
という流れになる。
私達はお尋ね者だ、なるべく事を荒立てず目立たないように行動する必要があるだろう…」
「街への潜入とソフィの大体の居場所は玉藻の部下の諜報員が協力してくれるって事で良かったんだよな? 」
「あぁたしか、街の外に着いたら日暮れを待って
小鳥飛ばせ言うとったな
フィリア、そろそろええんちゃうか? 」
「ジェイドさん、小鳥じゃありません!
ポックルって名前があるんですからちゃんと名前で呼んであげてください!
ゴメンね、ポックル
玉藻様の部下の人の所までお願い
手助けしてくれる話になっているはずなの」
ホホーッと一声鳴き
小さな羽をいっぱいに広げて、暗くなりつつある空にポックルが羽ばたいて行く。
ダングフォートの街に向かって静かに飛んでいくポックルをフィリアは心配そうに見つめていた。
考え込むような表情をしてルナが言う。
「とりあえずは、諜報員の協力を得るために連絡をとるのが優先だ
それは、ポックルにお願いするとして問題は潜入してからのソフィの救出方法なんだが……」
「こっそりやれるならそれに越したことはないだろ?
奴隷市場に出されるなら、それまでは監禁されているだろうからな…
居場所さえつかめば、なんとかなるような気もするが、
敵もそこまで甘いわけ無いよなぁ……」
「うん、屋敷を襲った'夜鷹'とかいう連中が全く関与してないとも思えない。
敵がいる可能性も十分考えられる、最悪戦闘が起こることも念頭において
皆、心の準備をしておいてほしい」
そうこう話している内にすっかり夜は深まり
月が空高く上がる頃、ポックルが帰ってきた。
パサパサと静かに羽ばたき、フィリアの肩に留まる。
どうやらそこがポックルのお気に入りの場所のようだ。
ポックルの脚には小さな手紙が縛り付けてあった。
─明日ノ早朝 南門ソト 林ノ中ニテ待ツ─
手紙には短い一文
「会うた事無い奴から、この文章が送られてきても不安やなぁ
むちゃくちゃ怪しいやんけ……」
「うん、だけど今
私はこれにすがるしか無いんだ、なんとしてもソフィを助けたい……
私に付き合わせといてこんな言い方、失礼かもしれないが、不安ならジェイドは待っていてもらっても構わないよ」
「な……なに言い出すんや?
ナメたらアカンで!
こっちだってアドニス姐さんとの約束があんねん
ルナ達の事ほったらかして、何かあったらそれこそ姐さんのトコ帰られへんようなるわ」
「そうか、ありがとうジェイド」
明日は朝早くから行動を開始することが決まった一向、
その日は早めに休むことにした。
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翌日の朝早く、ルナ達一向は陽が昇る前に行動を開始しダングフォートの南門に続く街道の脇にある林を目指していた。
辺りはまだ薄暗く、街の近くだというのに、人の気配は無い。
街道から外れ、林に入り
中心部に向かって歩いているときだった。
ガサガサ…
と不自然に草むらが揺れ全員が武器を構える
4人の間に緊張が走ったかと思えば突然
─うぉ!?
─キャッ!
─のわっ!?
と自分以外三人の声がし
突然の事にルナは焦った
「だ…誰だ!?
───ッ!!」
と声を上げた瞬間、突然頭から袋のような物を被せられ手にした武器を叩き落とされる。
同時に背後から拘束され地面にうつ伏せで倒されてしまった。
視界が遮られ、ハッキリとは確認できないが
すぐ近くで仲間達も同様に倒されて抵抗しているような音がする。
「なんだ、お前らは!
このッ!! 離せ!! 罠など───」
ストンッ!
と背後より首に手刀を打ち込まれる。
驚くほど綺麗にきまり
眠るようにしてルナ達4人は意識を手放した。
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「───ナ ───ルナ ───ルナ!!」
誰かに名前を呼ばれ、意識が覚醒し始める。
目が覚めた時、ルナ達4人は重厚な鉄格子の扉がついた檻に入れられ
薄暗い部屋に捕まっていた。
アッシュとジェイドも既に目を覚ましており
アッシュはフィリアを起こすために声をかけに行く所だった。
状況を整理しようと辺りを見渡すが、
ここがどこだかわかるようなものは無く
部屋には木製の机と椅子が一組
あとは無機質な石壁に囲まれているだけ……
まさか、本当に罠だったのか?
絶望感に襲われ、唇を噛み締めるルナ。
昨日、ジェイドが言った通りだ
まんまと誘い込まれた…
悔しさで手のひらに爪が食い込む程に握り締め、俯く
鉄格子の扉の前に、こちらに背を向け座り込むジェイドに対して、ルナは自嘲気味に声をかけた。
「ジェイド……
済まない、君の言うとおり敵の罠だった……
私の判断が甘かったようだ、もう───」
「いいや、多分アンタが正しいで……
ダングフォートの潜入………成功や」
ジェイドが立ち上がると同時に
──キィ
と音をたて、鉄格子の扉が開いたのだった。




