短剣
結局ルナ達が帰って来たのは深夜過ぎだった。
3人とも多少怪我していたためアッシュは驚いていたが薬師がすぐに対応してくれたため大事にはならず
アッシュはそのまま、薬師の所へ土人形の核と共に預けられ
翌日朝から土人形の核を義肢に定着させる儀式を行う事となった。
薬師とカラクリ師で対応するため、ルナ達は寝所で待機し体を休める
思っていたよりも疲れが溜まっていたのか、3人ともぐっすり眠ってしまって、武器の手入れや今後の事について考えている間に日が暮れてしまった。
寝所にて…
ルナはフィリアの事を気にしていた。
岩屋堂内でフィリアが放った見たこと無い魔術
本人すら記憶が無いと言っているがあれは間違いなくフィリアが放ったものだと思われる。
フィリアの足元に魔法陣が展開されていたのが何よりの証拠…
上手く聞く方法は無いだろうかと考えている内に夜になってしまい、フィリアもジェイドも床についてしまう。
(よし、やめよう
余計な詮索ばかりしていても互いに気不味くなる
フィリア達はもう私たちの仲間だ、仲間は信じてあげないと! )
考えが纏まらなかったため、考えるのを辞めてしまおうという結論に達した時、ルナの部屋の扉がノックされた。
「ルナ…… 起きてるか? 」
「__!! アッシュ!?」
扉の向こうから聞こえるのは間違いなくアッシュの声
急いで扉を開けるとそこには、元気そうなアッシュの姿があった。
「アッシュ!
元気そうで良かった! 儀式は無事終わった?
手足はもう自由に動くの? 」
「おぉ、質問が多いな…
お陰様で、この通りだ! 」
アッシュはルナに手足を動かして見せる。
先日までは、左腕は力無くダランと垂れ下がり
右足は引きずらないと歩けない様子だったが、今は両方しっかりとしてアッシュの意思に従って動いているように見えた。
表面が、鈍い光沢のある金属で覆われてさえいなければ手足として全く違和感がない。
「生身の肉体の時と動きは変わり無いな
痛覚とかはわかんねぇが、手足は思った通りに動く
これなら、護衛騎士を続けることには何も問題ないさ」
「そうか!
本当に良かったよアッシュ! 」
2人は、寝所を出て並んで歩く
岩屋堂内での出来事やジョー・ドルイドをでてからのこと、アッシュが気を失っていた時の出来事やルナが塞ぎこんでいた時の事などをたくさん話した。
「ルナ、明日からはどうするんだ?
俺の手足も動くようになったんだ…
次に何を優先して動くつもりでいるのか聞いておきたくてな… 」
「そうだな…とりあえずは家族の皆を探したいんだ
やっぱり、心配だから…
安全かどうかは確かめたい… 」
「_____・・・」
アッシュは再び迷っていた
ルナはつい先日前を向くと決めたばかり…
オーウェンの訃報を知らせたらどうなってしまうのだろう…
背負い込むタイプだから尚更だ
ほんの少しの沈黙の後、結局勇気がでないまま
オーウェンの死を伝えることが出来なかった…
「……アッシュ??」
___ハッとして顔をあげるアッシュ
ほんの一瞬だけ目を合わせたルナは物悲しそうな顔をしていたがアッシュはそれを見逃してしまった。
「悪い! 考え事してたらボーッとしちまった…
ソフィ達の行方だよな
わかった!
手足だって動くようになったんだ
護衛はドーンと任せてくれて良いからな! 」
「そうだね…… 頼りにしてるよ」
「そうだ! ルナ
いや……お嬢様
こちらを、受け取っては頂けませんか? 」
膝をついて頭を垂れアッシュは短剣をルナに差し出す
アッシュのほうに振り返ったルナは目を見開いて驚いた顔をしていた。
アッシュの手の上にあったのは
契りの短剣
これを受け取ると、正式にアッシュはルナに仕える騎士ということになる。
文字通り、アッシュの人生を預けられるという事だ
のし掛かる責任も大変重いものになる
こうなることは、成人式の日にオーウェンからアッシュの主従権を譲り受けた時からわかってはいたのだが、いざとなるとやはりその重みに手が震えてしまった。
でも、覚悟を決めたのだ!
私はルナ・ボールドウィンとしてアッシュの言葉に応えないといけない。
「汝、我の騎士アッシュよ
貴殿は、我 ルナ・ボールドウィンを主人と認め
命あるかぎり我に仕えると誓うか? 」
「誓おう
汝、我の主人ルナよ
貴殿は、我 アッシュを騎士と認め
その家名と財を持ってして、我の働きに報いることを誓うか? 」
「誓おう
これより、主従の契りは交わされた
死の運命が訪れる時、又は短剣の返納なされる時まで貴殿の働きに期待する
謹んで、短剣を預かろう 」
伝統的な言葉を交わし
儀式は完了する。
アッシュから渡された短剣は彼が自分で彫ったのだろう
ボールドウィン家の家紋であるユリの花と馬の上半身が彫りこまれ、白木の鞘に納められたシンプルながら美しいものだった。
「ありがとう
この先、君には今まで以上に苦労を掛けることになると思う……
だけど私は立ち止まらないと決めたんだ
これからも、よろしく頼むよ… 」
「あぁ、どこまでも一緒に行くよ」
静かな月夜の明かりがぼんやりと2人を照らし
夜は深まっていくのだった……
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―翌朝―
かごめに朝早くから起こされ、4人は集合する
どうやら、玉藻の長が帰ってきたらしい。
準備を整え、かごめに連れられ
4人は長の屋敷に案内された。




