東人の霞里
「お主ら、無事かの?」
そういってマルクスを倒した女性がこちらを振り返る。
銀色に輝く長い髪
長い睫毛に眠たそうな目
成人式の日にアドニスが着ていたような異国の服装を身に纏い
優しそうな笑顔をこちらに向けている。
「アドニスから話は聞いておる
詳しい話は里に着いてからじゃ
ひとまず、里に案内しよう」
「あ…あの…アッシュやジェイドは…」
「怪我人は里の者が先に回収しておる
ジェイドとやらの毒も、命の危険があるようなものではないようじゃ、その内痺れも取れて動けるようになる
他人の心配も結構じゃが、お主も疲れておろう
馬を用意させておる
ついて参れ」
「ルナさん、大丈夫ですよ
ついていきましょう」
「フィリア…」
それから、2人は馬に揺られること半日弱
進むにつれどんどんと霧が濃くなり視界が悪くなっていった。
「これより先は、景色を見て進んではならんぞ
鈴を鳴らすから音を頼りに進むのじゃ
焦ることは無い、ゆっくりでよいからの」
前方から声が聞こえ、いよいよ視界はほぼ0
自分が乗っている、馬の背中がやっと見える程度になってしまった。
その代わりに
__シャーン__シャーン
と絶え間なく鈴の音が聞こえる
ルナとフィリアは言われた通りに
しばらく音を頼りに進み続けると
「さて、到着じゃぞ」
と声が聞こえ、辺りの霧が突如として晴れた
目の前現れたのは異国のような風景
自然と一体化したような村が樹の上に建てられている
背の高い巨大な樹に張りつくように何軒も家が建てられ切り出した木材でそれら一帯の樹を吊り橋のような形で繋いでいる。
所々、ランタンのような物がぶら下がっており
全体的に薄く霧がかった里を黄色い光がぼんやりと辺りを照していた。
「これは・・・」
「ス、スゴい・・・」
ルナもフィリアも初めて目の当たりにする幻想的な光景に思わず息をのむ。
「'東人の霞里'へよう来たの
といっても、客人なぞ何年ぶりやら
長旅ご苦労であったな、疲れたじゃろう今日の所は休め
明日朝一番に使いを送る。
'かごめ'頼むぞ」
「はい」
ルナ達の後ろから黒髪の女性が前に出る。
「かごめじゃ
お主達の里での滞在の間の身の回りの世話をさせる
何か聞きたいことがあれば、頼ると良い
後は頼むぞ」
「かごめと申します。
よろしくお願いします。
さっそくですが、寝所にご案内します」
かごめと名乗る女性につれられ里を案内されるルナ達
樹の中に螺旋状に掘られた階段を上り
吊り橋を渡って村に入る。
「かごめ殿
アッシュ達は………私達の仲間はどこにいるのでしょうか?
怪我人が2名、先に到着していると思うのだが…」
「怪我人の御二人は薬師の所で治療をしております。
先に到着された方は重症ですので、動けるようになるまでは少し時間がかかりますが、意識はございます。
もうひと方は薬師様の毒抜きが終われば問題なく動けるかと…
面会を御希望でしたら後ほどご案内致しますので御申し付け下さい
こちらが、皆様にお休み頂く寝所となります」
村の奥の長い吊り橋を渡った先に一際大きな大木
その大木に大きな穴が掘られその中に居住スペースが確保してあった。
「本当にスゴいな……こんな………」
「こちらは里で一番の大木のウロを加工して造られた客人用の寝所となっております。
滅多に使用されることはありませんが、生活に必要なものは1通り揃っておりますので快適に御過ごしいただけるかと…
入り口でお履き物だけ脱いで上がるようお願いします。
里にある建物内は全て土足禁止となっておりますのでそちらも同様によろしくお願いします」
「うわぁ…キレイですねぇ
ルナさん、こっちもスゴいですよ!」
初めて見る光景の連続にフィリアもなんだか楽しそうだ
「かごめ殿、案内ありがとうございます
さっそく仲間の元に行きたいのですが…」
「承知致しました
薬師様が治療の途中ですので、その後でしたら
一刻程したらお迎えに上がりますのでそれまでは自由に御過ごしください
御用がある時は寝所の入り口にある紐を引いていただければ私に伝わる様になっておりますのでご活用ください。
それでは」
伝達事項を一息で一気にしゃべるかごめ
機械的だが的確に必要な事を伝え、ルナ達に一礼して寝所を後にする。
「_____ふぅ…」
「…大変でしたね…」
「あぁ、フィリアも…
アッシュの事どうもありがとう」
「いえ、お二人が逃がしてくれたおかげです
ジェイドさんもアッシュさんも命に別状は無いとの事なので、私達も少し休みましょう」
「そうだな…」
靴を脱いで、部屋に入る
中はそれほど広さは無いものの綺麗に掃除が行き届いており
樹木をそのまま削り出して拵えたような机や椅子が並んでいる
やはり疲れていたのだろう、
ルナは椅子に座って一息ついたところで強烈な眠気に襲われ
抗うこと無く目を瞑り、かごめが呼びに来る時間まで眠りこけてしまった。




