朝の一幕
温かい日差しが部屋に差し込み目が覚める。
紅茶の良い香りがして
小鳥のさえずりが耳に心地よい。
昨日は夜遅くまで、本を読んでいたため少しだけ頭がぼんやりする。
(あぁ、もう少し寝たいんだけどなぁ)
「ルナお嬢様、朝食の時間ですよ」
「ぁぁ、おはよう リン」
ミッドガルズの王宮の西側にある貴族街
その貴族街の更に一番西側の端にある一際大きな屋敷の1室でルナはいかにも貴族らしい朝を迎えた。
「お嬢様、また夜更かしなされたんですか?
成人式が近いのに、目の下にクマなんて作って参加したら、美しいお顔が台無しですわよ。」
この女性はリン
ボールドウィン家の屋敷でメイドをしている。
ルナとは同い年で付き合いも長く信頼のおける良いメイドだ。
「ご忠告ありがとう、しかし昨夜はどうしても途中で読書をやめることができなくてね、区切りの良いところまでと思っていたら、夜遅くなってしまった」
ルナはリンの淹れてくれた紅茶を飲みながら答える。
「何をお読みになっていたんですか?」
リンが机の上に広げたままの本を見に行く…
――古代文明とブゥードゥー遺跡――
「んもぅ!お嬢様ったら、年頃の女の子が考古学の本で夜更かしなんかしないでくださいよー!
もっとこう、淑女のたしなみのススメとか男性に追いかけてもらう方法とか読むべきものがあるでしょう??」
「あ、あぁ…その手の読み物はどうしても苦手でね…
それより、お腹が減っちゃった!朝食食べに行こうっと」
誤魔化すように話題をそらし、そそくさとリンが淹れてくれた紅茶を飲みほして着替えをし、身だしなみを整えて部屋からでた。
「おはようアッシュ。」
と部屋をでたところで、専属の護衛騎士に声をかける。
おや??
返事がない。おかしいな?
いつもだったら私が部屋を出る時間には扉の外で待っているのに……
「アッシュ様なら、さっきメイド長に引っ張られていくの見ましたよ」
後ろでリンが扉を閉めながら答える。
「メイド長が?何でだろう??」
「アッシュ様は、きっとメイド長に明日の成人式での挨拶の方法や、貴族の護衛にふさわしい立ち振舞いを叩き込まれてるんでしょう。
普段からアッシュ様はお嬢様に砕けた態度で接してるのをメイド長によく注意されていましたから」
「そんな………堅苦しい接し方がイヤだと言ってるのは私の我が儘なのに………」
「お屋敷で働いてる人なら皆さん言わなくても、分かってるとは思うんですけどね、
アッシュ様は口も態度も良くはありませんけど、護衛騎士としての仕事は立派にこなしてらっしゃいます、
しかし、成人式等の公の場にでるとなるとやはり、もう少しこう…貴族らしさというかなんというか……」
「あぁ、まぁ、リンの言いたいことはよく分かるよ、メイド長が私やボールドウィン家を心配してくれる気持ちもね
それじゃあ、私は先に下に降りてるから、リンは、私は先に食堂に行く とアッシュに伝えてもらえるかい?」
「承知いたしました。お嬢様」
「ありがとう。それじゃあ」
ルナは意気揚々と階段を下り、食堂に向かう。
1段1段降りるごとにパンの焼けた良い香りや紅茶の香りが強くなり、ルナを出迎えてくれるようだ。
階段を下りた先の大広間のすぐ真横が我が家の食堂だ!
ご機嫌に扉を開け放った先には、いつもと変わらぬ父の姿があった。




