2日目
「お二人とも大丈夫ですか~?」
倒したケイブベアを尻目にフィリアが2人の元に駆け寄って来る。
「お~、オレは問題あらへんで
モウマンタイや!」
「あぁ、私も大丈夫だ
それにしてもフィリアの魔術は凄いな…
ここまでとは…驚いたよ」
えへへ、と照れくさそうに笑うフィリア
労いの言葉も早々にジェイドはグレートケイブベアを調べだす
「妙やな・・・
グレートケイブベアゆうたら、普段は山奥とか森の中に洞窟掘って生活しとる連中や…
それに繁殖期以外に自分から人襲うなんて考えられへん…
説明つかへんな……」
「近くに、お気に入りの餌場でもあるんでしょうか?
でも、見渡す限り平原ですし…
それらしい場所は見当たりませんね」
ジェイド達のような傭兵は魔物を倒すことが全てではない。
魔物の生態や取り巻く環境などのあらゆる知識を用いて対処をする。
適切な知識を持って適切な対処をする。
これが、この世界で長生きするため必要不可欠な要素だ。
うーんと頭を捻りながら考えるも、結局答えを見つけることができず、諦めて前に進むのであった。
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そんな4人を遠くから見つめる男が1人
単眼オオカミにまたがり
肩にはカラスが留まっている
手の甲には黒い蠍の刺青があった
「ふぅん、グレートケイブベアごときでは相手にならんか…
まぁいい、魔物はまたどこかで調達してこよう。
ラウムよ
お前は引き続き、奴らを見張れ
見失うなよ」
肩に留まるラウムと呼ばれたカラスが一声鳴いて
空高くに舞い上がっていく
ゴウと吹いた風と共に男は姿を眩ますのであった。
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ルナ達一向はグレートケイブベアを倒した後は比較的順調に進み
日が傾きかけた頃には安寧の森が見える所までたどり着くことができた。
森から流れてくる小川の側で野営を張り
明日、朝から森に入るための準備を整えるのだった。
寝る前にルナがアッシュに声を掛けると、少しだけ目を覚まし水を飲む
顔は赤く、汗ばんでいて
やはりまだ傷が痛む様子だがなるべく心配をかけまいとして、無理矢理明るく振る舞っている。
「アッシュ、隠れ里の近くまで来たよ
もう少しだけ頑張ってくれ」
「あぁ、とりあえず落ち着いて身を隠せる所に着いたらこの、情けない腕と脚をなんとかしないとな…
このままだと、あの鎖鎌を持った陰気な野郎に仕返しできなくて困ったもんだよ」
「情けないだなんて!
そんなこと言わないでくれ!
本当にすまない、私のせいで………こんな………
君がいてくれなかったら私はあの場で死んでしまっていただろう……
謝って済むことでは無いが・・・本当にすまない
埋め合わせは必ず・・・」
「よせやい
ルナはなんにも悪くないだろ?
襲ってきた鎖鎌野郎の顔はハッキリと覚えた
とにかく、手掛かりが無いわけじゃ無い。
きっちり落とし前はつけてやるさ。
奴らの狙いがなんだったのか?
俺達が狙われている理由も奴らを追って行けばその内解るだろう」
「あぁ、それにお父様やお姉様も事も気になる
アドニス様もはぐれてしまったと言っていたし…
2人は無事だろうか・・・」
「________ッ!」
アッシュは迷ってしまった…
オーウェンの死をまだルナに伝えていないのだ
目を覚ましてから息つく暇無くここまで来てしまい
話す時間が無かった事は事実
それでも、家を失い
家族がバラバラになり、未だに命を狙われている可能性のあるルナに
この状況下でオーウェンの死を伝えるのは、あまりにも負担が大きすぎると感じてしまい話す事をためらってしまったのである。
「____?
アッシュ?どうしたの?
傷が痛む?」
額に汗が浮かび
頭の整理がつかないまま口をあけるアッシュ…
「や・・・
ち、違うんだルナ・・・
オーウェン______」
「__________敵や!!!
囲まれとんで!」
話の途中でジェイドの叫ぶ声がし
直後に回りからキィキィと叫ぶような声がした。
「どうなっとるんや!
魔物避けの香は焚いたはずやで!
とにかく逃げるで!
分が悪いわ!!」
皆荷物はその場に放置し、武器だけ担いで馬に飛び乗る。
ルナはシルフの補助を受けながら馬上から手を伸ばし
無理やりアッシュを引き上げる。
「隊列なんかどうでもええ!
さっさと森に向かうんや!」
目的地を間近にして命掛けの追いかけっこが始まる。




