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オルビア国物語  作者: バルカン
第1章
2/72

数十年後

オルビア国 首都 ミッドガルズ 王宮内



____コツコツコツコツ____

____コツコツコツコツ____


広い廊下に複数の足音が鳴り響く。

数人の護衛と執事を従えて歩くのはオルビア国王


ギデオン・フランドリア・ミッドウィン


きらびやかで、荘厳な王宮にふさわしく、背筋はピンと伸び、広い肩幅と締まった肉体は年齢を感じさせない迫力があった。



ギデオン王は朝の支度を整え寝殿から、本殿へ向かう途中である。


「おい、ロディール、今日の予定はどうなっている?」


「はい、本日は朝食後に王国軍の訓練の視察と訓練兵への激励のスピーチ、


午後は来月に迫った、国王主催のリチャード王子の成人の記念パーティの打ち合わせ、


夜はランツベル辺境伯との会食となっております」

とロディールと呼ばれた執事の老紳士がこたえる。



「フム、ドゥーム西部の町の暴動のほうはどうなった?」


「はい、昨夜までで暴徒の4割を鎮圧、残りの暴徒も追加の派兵による鎮圧で今日中には決着がつくとの報告があがっております。詳細は軍視察の際に軍団長から報告を…」


「そうか………全く、烏合の衆に時間を掛けすぎなのだ。兵士への激励よりも軍上層の連中に灸を据えてやったほうが良いかもしれんな」


「必要であれば原稿を書き直しますが………」


「いや、いい。余が直々に思ったことを直接連中に言ったほうが気が引き締まるであろう」


「引き締まるですか、縮こまるの間違いでは?」

ロディールは冗談交じりににやっとした表情で問う。



「あまりからかうでない、上に立つものとしての威厳は必要であろう?

・・・朝食の前に宝物庫に寄るぞ」



「___承知しました」



近頃、ギデオン王は宝物庫に入り浸りだ。

中には、オルビア国中から集めた価値の高い宝が納められており、宝物庫専門の少数精鋭の衛兵が常に入り口を固めている。




廊下を曲がって中庭を抜け、地下へ降りる。

いつもは人の気配の無い通路の先に重厚な鉄格子と扉が見えて来るはずだったのだが、この日は少し様子が違った。


鉄格子の前に数名の衛兵と召し使いがなにやらあわてふためいている。



「何事だ!!」

ギデオン王が怒気を含んだ声で衛兵に問いかける。


_______ハッ

その場にいた衛兵が国王に気がつき、全員がその場に頭を垂れ、膝をつく。



「そんなことはよい!

何事かと聞いておるのだ!貴様答えよ!!」



指を差された衛兵が小刻みに震え、青い顔をして答える。

「はっ、さ 先ほど、夜の見張りの者と交代の時間になったので宝物庫に参じたのでありますが、深夜勤務の2名とも宝物庫内で自害しておりましたのを発見した次第であります」



「なんだと!またか!!

えぇい、忌々しい!そこを退け!」


頭に血が上った様子で、衛兵を押し退けギデオン王は宝物庫の中に入る。

そこには、いつも通り綺麗に清掃の行き届いた宝物庫と床には2体の衛兵であったであろう血みどろの死体が倒れていた。


(なんてことだ! これではゆっくり王冠を眺められんではないか!!忌々しい!)



そう、ギデオン王の目的は王冠であった。

初代オルビアの王であるバルログが打ち倒したという、闇を纏った、双子の魔物。


フギンとムニン


その2体の魔物の体の中から発見された三日月のような形状をした骨を加工して作られた、漆黒の王冠。


今や、当時の戦を知るものは皆、死に絶え

文献や語り部が語る英雄譚のなかにしか登場しないこの王冠こそが、オルビア国で最も重要な宝物なのである。



歴代オルビアの王達は国王の座を頂く

戴冠式の時のみ、この王冠を着用し、それ以外はこうして厳重に保管しているのである。



「ロディール!」


「はい」


「衛兵どもに伝えておけ!

夜にもう一度ここに来る、それまでに宝物庫内の点検と遺失物の調査、遺体は綺麗に片付けて早急に兵の補充をせよ、と 原因究明の報告も急がせるのだ! 今年に入って何度めだ と付け加えておけ!!」



「承知致しました。

さ、そろそろ朝食のお時間です。

参りましょう」






以前より、良くない噂はあった。

あの王冠は呪われていると。


ごくたまに、王国軍や衛兵隊のなかでも自殺者はでる。

だが、それは一般の市民や貴族達にも言えること、自殺事態が極端に珍しいかといえばそうではなかったが、宝物庫の衛兵達にとっては話が変わってくる。



原因不明の自殺者があまりに多いのだ。



任務中に多くの自殺者がでることは歴代のオルビア王や衛兵隊の皆を悩ませてきた問題であり、過去様々な対応策が取られてきた。


他の衛兵の倍の給金を支払ったり、休暇も一般の衛兵よりも月に2日程多い。


宝物庫内で1人になるような事は絶対にないように徹底させ、さらには3年間勤務すれば自動的に1階級昇進させ定年まで内勤で過ごすことができるような制度になっている。


初めは、この条件に釣られて多くの者が応募するのだがおおよそ2年に1人のペースで任務中に自害するものがでる上に、長く勤めると、精神的に病んでくる者が大変多い。


加えて、魔物の骨から作られた王冠なんて聞けば、呪いなんて噂がでるのも無理もない。



加えて、ここ最近は特に酷い。

今年に入ってすでに2回目、さらに今回は二人同時にときている。



がギデオン王は呪いの噂など気にする様子もなく、しょっちゅう宝物庫に来ては

しばらく王冠を眺めて満足そうな表情で帰っていくので、衛兵の間では王冠以上にギデオン王が恐れられていたりする。



朝の一件の後、その日のギデオン王の1日は酷いものだった。


視察では訓練兵に対し気合いが足りんと怒鳴り付け

激励スピーチは軍上層部に対し、不甲斐ないと罵る始末、


午後の成人式の打ち合わせや夜の会食も、イライラした雰囲気が溢れだしていた。



ようやく、機嫌が治ってきたのは夜の会食後、

再度宝物庫を訪れ、まるでなにもなかったかのように綺麗に片付けられたのを確認し、

じっくりと王冠を眺めてその美しさを味わった後だった。



宝物庫を去ろうとギデオン王が立ち上がり、背を向けたときかすかに王冠が__ドクン__と脈を打ったような気がしたが、ギデオンは気がつかなかった。

漆黒の王冠


双子の魔物 フギンとムニンの骨から作られた漆黒の王冠

歴代のオルビア王が戴冠式にのみ着用を許された特別な品


国王以外は触れることを許されておらず、式典の準備の際であっても王冠は王自らが手配をするのが習わし。


王冠が作られてから100年近い年数が経過しているが、傷1つなくシンプルながら重厚で荒々しい見た目をしている。

王冠にしては非常に重たいので普段から着用するのには不向きである。


初代の王バルログのみ常に着用していたとの言い伝えが残っているが、真実かどうかは定かではない。


人は何でも大袈裟に言いたがるものだ………



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