崩落 3
いったい何が起こったのだろう?
突然の爆発に火災
アッシュは屋敷に走って行ってしまい
裏庭に残されたルナは1人不安に駆られていた。
(リチャード王子の遣いだろうか?
いや……さすがに乱暴すぎるしこんなやり方はおかしい
だとしたらなんだ?
父上やソフィは無事だろうか?
アッシュが無事に屋敷からでてきたら……
えーっと…えーっと………)
色々な事が頭に浮かぶが、今はそんな事を考えてる場合ではないとすぐに割り切り
ルナは今の自分にできることをやると決めた
(とりあえず、助けを呼びに行くのと屋敷の火をなんとかしないと…
もし怪我人がいた時の為に治療薬を…)
ルナも屋敷の正門に向かって駆け出す。
(屋敷の中はアッシュに任せたのだ、ボーッと待っている事なんてできない。
私は私で出来ることをしないと…)
真っ暗闇を屋敷の火が照らす中
正門に到達するとそこで待っていたのは驚くべき光景だった
「あ・・・これは・・・」
正門の前には汚ならしい格好の賊が並んで、人が出入りできないように固めている…
更には、魔術を使える物も何人かいるのであろう
屋敷にどんどんと火の玉を投げつけている連中までいるではないか。
止めさせようとおもったのも束の間
「いたぞ!」と声がして賊に見つかってしまい、屋敷に向かって飛んでいる火の玉が標的を変え
ルナに向かって飛んでくる。
(正面突破は……)
咄嗟の判断で、脚にシルフの風を纏わせスピードを上げ火の玉をかいくぐり前進を試みるルナだったが、
______ブゥン!
と音がして目の前に大きな鎖鎌が飛んでくる
ルナの行く手を阻むような形で飛んできたため出鼻を挫かれ、脚の止まった所に火の玉と矢の追撃が来たため、後退するしか無くなってしまった。
「クソ
一体何者だ?
何が目的でこんなことを……」
ルナは裏庭の噴水の影に隠れながら、様子を伺う
「フフフ……
逃げてもムダだぜぇ?
お嬢ちゃんよぉ?」
先程、鎖鎌を投げつけて来た男がゆっくりと裏庭に歩いてくる。
不健康そうな青白い顔色に痩せこけた頬
長身やせ形だが猫背で背中が丸まっているように見え
黒い衣服に両腕と胸や腰回りに鎖を巻き付け
両手には先程も使用した、大降りな鎖鎌が2本握られている。
武器を持ったその手の甲には黒い蠍の刺青が入っていた。
「久々の殺しだからなぁ…
やっぱり、血まみれで逃げ回る所を仕留めるくらいの刺激がないとなぁ
楽しませてくれよっ」
と言って、ルナが隠れている噴水に鎖鎌を投げつけてきた
「___ッ!
バレてるのか」
シルフの力を借りて噴水の影から飛び出し鎖鎌を避ける。
「おぉ、すばしっこい奴だなぁ
だがぁ、アビス様の鎌からいつまで逃げれるかぁ
見物だなぁ」
2撃 3撃と飛んでくる鎖鎌を避けながら裏庭の生け垣の影に逃げ込む。
・・・ハァ…ハァ…______ふぅ…
(武器も何もない今、少しでも敵の情報を掴むしかやれる事が無い………せめて、アッシュが戻ってきてくれれば…)
少しでも、情報を得ようと
息を殺して追手の様子を伺うルナ
「なんだぁ、かくれんぼかぁ?
面倒だなぁ
オレはシンプルな狩が好きなんだけどなぁ
お前を殺した証明が無いと、信用してもらえないんだからなぁ」
「ちょっとアビスっ!
なにチンタラやってんのよっ!!」
「ヴァニラは黙ってろよぅ
お前のようなガキに俺様の邪魔はされたくねぇんだよぉ」
アビスと名乗った鎖鎌の男に加え、ヴァニラと呼ばれる幼い女性の声
生け垣の陰になってしまって、姿は確認できない…
「わ.た.し.は!!
アンタのお遊戯に付き合って失敗したくなんかないの!
御頭に怒られたいのならアンタ1人で怒られなさいよ!
いつもダラダラと引き伸ばして、めんどくさいわね
さっさと炙り出しちゃえば良いじゃないの!」
そう言って、魔法の呪文詠唱を始める
(______ッ! マズい…)
そう思って、ルナは生け垣から飛び出した。
____ドォォォォン____
ルナが飛び出すと同時に辺りは炎に包まれ
身を隠していた生け垣が一瞬で灰になる。
(クッ…最初の爆発はこいつの仕業か…)
「おいヴァニラァァァ!!
これ以上は邪魔すんじゃねぇぞぉぉぉ!
アイツは俺がやるんだからなぁ!!」
生け垣を飛び出し、炎に焼かれずに済んだものの
身を隠す場所を失ったルナは、とうとう裏庭の端の開けたベンチの所まで追い詰められてしまった。
ボロボロになり、肩で息をするルナ
辺りには炎が広がって、正面には鎖鎌の男
背中には崖と絶体絶命の状況だと思われた。
「フフフ………
すばしっこい嬢ちゃんだったなぁ
だが、追いかけっこもおしまいだぜぇ」
(なんとかする方法を……
クソッ、何も思い浮かばない!)
「お前らは何者だ!
一体なぜこんなことをする!」
「あん?
知ったことかよぉ?
御頭の命令で殺せって言われただけだしなぁ
俺は殺しが出来るなら十分だからなぁ!
せいぜい、自分の血を呪うんだなぁ!」
「なっ…」
鎖鎌の男はルナに向かって得物を投げつけて来た
ピンと張った鎖が弧を描いて、正確にルナに向かって飛んでくる。
(もう…………ダメか………)
そう思って目をつぶった時、鎌に切り裂かれる感覚よりも先に
ルナは何かがぶつかって来る感触を得た。
一向に訪れない痛みに恐る恐る目を開けるとそこには、ルナを護って敵の攻撃を受けたアッシュの姿があった。
「___諦めるなんて……らしくねぇ
戦闘中は敵から目を離すなって教えただろ?」
ルナを抱きかかえるようにして庇うアッシュ
口の端からは血が滲み左腕は大きく切り裂かれダランとしていた。
身体のあちこちに傷があり、出血の量も夥しい。
「ア………アッシュ
そんな………」
あまりにも酷い怪我をしているアッシュの姿を目の当たりにし絶句するルナ
「話しは…全部後だ……
とりあえず、逃げるぞ」
「そんな…でもどこに…」
「悪いな……
下以外思い付かねぇんだ、黙って付いてきてくれ…」
襲い来る鎖鎌の追撃
灼熱の炎
次々と飛んでくる弓矢から逃げるように
アッシュはルナを抱えて崖から飛び降りる
底が見えない程の暗闇に2人の影は飲み込まれ
姿を消すのであった。




