大宴会
夜も更け、貴族街が静まり返ったころ…
ボールドウィン家の盛り上がりは最高潮に達していた。
笑い声ばかりがけたたましく鳴り響き、酒瓶が飛び交っている。
一番盛り上がっているアドニスに至っては顔を真っ赤にして服装も乱れ、両肩まではだけて昔話に華を咲かせていた。
オーウェンは飲み過ぎてソファに倒れて寝てしまっている。
「いやぁ、若い時の北方戦線ほどヤバイと思ったことは無かったんだぞ、アッシュ!
お前の親父さんのビルとオーウェンが灰狼騎士団にいなかったらオルビア国はルジェ・ド帝国にやられていただろうな!
いつだってビルが戦ってる姿は本当に格好良かったものさ!
さすがのアタシもあん時ばかりはあいつに惚れかけたもんな
誘われてたらコロッと抱かれてただろう」
だいぶ酔っているみたいだ。
「だから、やめてくれって!
親父の話もだしアドニスのそんな話はもっと聞きたくねぇよ」
「そんな事言うなよ~、せめてお前が自分の家名に誇りが持てるようにって思って話しているのに
はぁ、ビルの野郎にステイシアがいなければ
今頃、アッシュはアタシの息子だったのにな~」
クネクネと体を揺らしながらアッシュの方を見ている。
「………そんなワケないだろ?
それにあいにく、ブランシスタの姓は捨てたんでね
ボールドウィン家が良くしてくれるから未練も無いさ」
「ムー…アタシの気遣いがわからんとは……
成人したとはいえ…まだまだ生意気なガキンチョだな」
「なんだと?
アドニスこそ、余計なおせっかいばかりだといつまでも結婚できないぞ?」
「うるさい!
アタシは、自分より強い男じゃないと興味が湧かないんだ!」
「自分の部下に、一人くらいいるだろ?
街の話、成人式でもウワサになってたぞ?」
「アドニス様、私もそのお話を詳しく聞きたいのです
傭兵の街を建設されたと聞いていますが、本当なのですか?」
「あん?
あぁ、ジョー・ドルイドの事か?
本当だ、良いところだぞ~
何なら今度遊びに来いよ 招待するぞ!
まぁ、まだ出来立ての街だし職業柄 荒っぽい連中もいるから
女だけで出歩くのはまだあんまりオススメできないんだけど、オマエラなら大丈夫だろう」
ジョー・ドルイドは最近、南部に出来た新しい街だ。
魔物の多かった土地を、アドニス率いる傭兵団が開拓し
かなり大きな街を建設中という話は以前よりあったが
最近とうとう完成した、と
他国からも多くの傭兵達が訪れ、相当な実力者揃いらしいがまだあまり情報が出回っていないのである。
そんな街を辺境伯自ら先頭に立って建設したのだ。
人は見かけによらないものである。
「街が出来ても、ホントに課題だらけなんだよなぁ~
傭兵なんてやっぱり危険な仕事だろ?
街に住んでる奴らがほとんど現役の傭兵だ
そのせいか、街に子供が一人もいないんだよ~
これじゃあ、ジョー・ドルイドが発展する未来はなくなっちまう…
なぁ、ソフィ!ルナ!
オマエラ、アタシの街に引っ越してきて結婚する気ないか?」
またメチャクチャな事を言い出している。
「あら~お誘いありがとうございます~。
しかし私は、まだまだやるべきことがありますし
焦って結婚する気はございませんので~」
「わ 私も……
その・・・結婚はまだ考えては・・・」
「なぁんでだよ~
イケメンの稼ぎの良いやつ紹介するぞ~」
「いや~」
「わ 私も・・・」
「わかった!
オマエラ2人ともまだ考えてないとかいって、良い人いるんだろ?
余裕ある感じするもんなぁ!
教えろ!!!アタシも恋バナしたい!
まずはソフィからだ~~~~~」
ターゲットに絞られたソフィは教会での奉仕活動中の出来事を根掘り葉掘り聞かれていた。
最初ははぐらかしていたが、どうやらかなりの人数に声を掛けられているらしく、優しい性格もあってか断るのに相当苦労しているみたいだ。
アドニスのターゲットがソフィに向いている間に、こっそりとルナが部屋を抜け出す。
しばらくたってから、アッシュがその事に気が付いて探しに行くのであった。
灰狼騎士団
オルビア国の更に北
オリンピア山脈を挟んだ向こう側の大国
ルジェ・ド帝国との国境を守る為に設立された騎士団
オリンピア山脈は世界でも屈指の豪雪地帯で
標高も高く年中雪に覆われており
豊富な資源 特に特殊な金属の鉱脈を狙って
常にルジェ・ド帝国の脅威に晒されている非常に危険な戦闘地域である。
騎士団員達は雪深い地での戦いを想定された特殊な戦闘型
灰狼剣術を使い、対人や防衛戦に関してはオルビア国内でも名高い。
アッシュの父 ビル
オーウェン アドニス は灰狼騎士団 設立時のメンバーであり騎士団の礎を築いた。




