露呈、そして
人は真実を知りたがる。ほんの少しの不安要素は黙認できるがあるボーダーを超えてしまうと不安はストレスとなって発露する。あるいは自分が知っている事こそが真実だと肯定する。そうして自己陶酔させ安寧を得る。
つまり、真実それ自体は自分のことが一番で二の次なのだ。自分は正しい、相手は間違っている、自分は頭がいい、相手は自分より馬鹿である、など人とという生き物は確認したがる。そういうふうに出来ている。
ダンジョン
ついに民衆にその存在が露呈した。政府が隠していた存在がバレた。大々的に。
その頃僕達は2人で移動販売式の八百屋軒雑貨屋を営んでいた。
「今日の売り上げも順調ねムサシ君。」
「そうだな、姉さん。元手がほぼゼロだから定価を安くしても純利は多くなるから実質ボロ儲けだよ。まあ僕の食費は必要ないから更に浮く分儲けは出るね。」
「仙人ってホント便利な体してるわねぇ。羨ましいわぁ。」
「はははっ、まぁ便利だね。でも日本に帰れて危うく解脱しそうになった時は焦ったけどね。」
「仙人にとって自然界に解脱して帰すというのは矜持だけれど今あなたに解脱されても私が困るわよ。全く。」
「あはは、ごめんごめん。ともかく今は大丈夫だから。」
「はぁ。それよりも今は例の件ね。どう思う?」
「うーん。みんながどう適応するかだね。僕がいた頃から二百年以上経った今でも異世界物の小説や漫画は流行っているみたいだから順応するのは早いんじゃないかな。後はモンスターに武器を持ったこともない人間が対抗出来るかって問題がある。」
そう、ニュースではダンジョンが出現したことによる日本にとっての利益をつらつらと報道しているが、いざ一般市民にもダンジョンを開放するという段階になっても死体の山が増えるだけだろう。
メディアにとっては政府に対していい攻撃材料になるが市民にとってはそうではない。それに、殆どの子供たちはダンジョンといえばスタンピードがある。
実際に自衛隊が潜っている最中にその兆候が確認されていたらしい。ダンジョンの外にモンスターが溢れ出す。
それによってもたらされるのは何か、想像にするにやすいというものだ。
それから季節は流れ春になり、新しい法案が可決され今日から施行されることになった。
ダンジョン及びスタンピード並びにダンジョン資源に関する法
通称、ダンジョン対策法と呼ばれるものが施行された。簡潔に言えば、ダンジョンに潜る人々は探索者と呼び、道程で得た資源は原則売却する。また、スタンピードが発生した場合規定のランク以上の探索は必ずこれに対処すること、というものだ。
新しい時代の幕開けだ。