剣術と仙術
「ん?どうした?気分でも悪いのか?それとも答えたくないのか?その場合は無理やり口を割らさねばならんが。」
「ハッ…いえ!答えます!答えますから殺さないで!」
先の一件からか恐怖心で少年に対して土下座して命乞をしていた。
それから僕は少年にこれまでの経緯を全て包み隠さず説明した。
「なるほどな。ごく稀にこの世界に異界からの住民が迷い込んでくるという噂話を昔聞いた事が有ったが本当だったとはな。
仕事を探していたら山の中にいて賊に襲われそうになったところをワシが助けたということか。ふむふむ。
他にも聞きたいことが山ほどあるが、そうさな、今のお主を街の近くまで送ってもすぐに殺されるか研究材料にされるであろうな。
そこでお主に提案じゃ。ワシの弟子になれ。さすればお主は身を守れるようになるであろう。それにお主には仙気がある。魔力の方は別の者に頼んでみるとして、仙気はワシの領分じゃ。お主を立派な仙人にしてやろう。」
「仙人」それは僕が知っている知識と同じものをさすものだった。
「仙人たるもの霞を食っていれば生きていける。」
浮世離れしている存在のことである。
「これを持て。まずは何も考えずに振ってみろ。」
何の変哲も無い木刀を渡された。修学旅行で見た木刀の様だった。自然、その時の記憶を思い出しながらも木刀を振った。
「結論から言えばお主には凡人に少し毛が生えた程度の才がある。少しだ。たかが数年修行した程度ではすぐに死ぬであろうな。」
「そ、そんな。どうすれば。」
「カカッ。そう俯くな。お主には仙気がある。殺されない限りは死にせん。時間は無限にあるのだ。ワシについて来れば問題ない。まぁお主が修行について来れるかは別としてな。」
始めのうちは地獄だった。
渡された木刀を朝から晩まで一振り一振り集中しながらただずっと素振りした。素振りが終われば寝る。早朝起きて直ぐに素振り。端的に言えばこれの繰り返しだった。
1ヶ月も経てば食欲も性欲も感じなくなっていた。
1年経てば剣だこが硬くなり素振りのペースも速くなった。
そして300年経った頃に仙術を一通り学んだ。
さらに時は流れに流れ1000年経っていた。