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サクラのかくしごと  作者: 華点
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2話 第1章 あたらしい居場所

 誰かに呼ばれているような気がした。ゆっくりと耳を澄ましていく。聞き覚えのある声。女の子の声。自分の――。

「サクラ、朝だよ。起きて。今日からお仕事だよ」

 ゆっくりと目を開ける。眩しい。もう朝なのだろう。そして目の前にあるのはミアの顔。ミアはここで出会った少女ですべてにおいて彼女に救われ、今も彼女のおかげで生活をすることができ、こうやって安心して眠ることができている。

「・・・おはよ」

 自分の新しい声にも慣れた。小さい体にも慣れた。だがどうしても慣れない、どちらかというと慣れたくないものもある。それは当然下半身の冷たさ、重さ。

「サクラもおねしょしちゃった?私もだから気にしないで。シャワー浴びにいこうよ」

 感触で分かっていながらも実際見るまではわずかな希望がないこともないのだが――ミアという少女はそんなことなど気にせず事実を告げてくれる。体を起こし、ピンク色のズボンを下に向かってずらすとピンク色の不織布でできたパンツ上のものが大きく膨らみ、線も青く染まっていた。正確には寝るときはテープタイプのおむつだが。

 ため息もつきたくなるがつくわけにはいかない。これが事実。これが現実だった。いかにも落ち込んでいるサクラを見たミアは自分のパジャマのズボンも大きく下げる。

「ほら、私もだから!」

 そこにあったのは自分と同じおむつが自分と同じように大きく膨らんでいる光景だった。理解してくれる、同じ仲間がいると思うだけで気が楽になった。

「ありがと。じゃあシャワー浴びにいこうか」

「うん!洗いっこね!」

「ミアは嬉しそうにズボンを上げ、膨らんだおしりを揺らしながら風呂場へと向かっていった。ついて行くために立ち上がり、自分のズボンも上げる。やっぱりミアよりも膨らんでいるような気がした。支えていないとずり落ちてくるおむつを引っ張り上げながらゆっくりと風呂場へと向かっていく。

 風呂場につくとパジャマを脱ぐ。パジャマも若干湿っぽくなっていたが特に漏れたという感じではなく、長時間おむつに接していたのが原因に見える。洗濯籠へと放り込み、おむつとシャツだけの状態になる。そのままキャミ―ソールも脱ぎ、おむつだけ纏った状態になる。相変わらず大きく膨らんだおむつ。小さくため息をつく。

 ミアの方を見るとミアは何ら躊躇なくおむつを外しているところだった。わずかな足の隙間から黄色に染まった吸収体が見える。恥ずかしいのか、中が見られないように手元でまとめられてしまう。何となく自分もそうしないといけないように感じてしまうがマジックテープになっているテープおむつを片手で支えながら片手でテープを外すのは慣れてないと意外と大変なもので、テープを外すのに苦戦しうっかりおむつを支えていた手が離れ、おむつが地面へと落下する。

 音に驚いたのかミアがこちらを向き、下に落ちたおむつを当然見られてしまう。しかもしっかりと中まで。

「あ」

 おもわず声が漏れてしまう。慌てて拾い上げる。ミアよりもしっかりと中は真っ黄色に染まっている。ミアに倣って丸め、隣に並べるがやっぱり自分のおむつの方が一回り大きい。

「なんか隣に並べると恥ずかしいね」

「シャワー浴びるまでだから。寒いし早く温まろう」

「うん」

 風呂場に入り、お湯の蛇口をひねり、温かくなってから交互にかけあいっこをする。漏れてはいなかったので洗うのは体だけだ。軽く濡れていた部分を中心に石けんで洗い、お湯を止めて体も二人で拭きあいっこをする。まだ自分の体もミアの体も直視する自信がないので目を背けながらだが。

 体を拭きあがると脱衣所に戻り、着替えを出す。パンツタイプのピンクのおむつに足を通し、ちゃんとフィットしているかを確認する。今日から仕事だ。大丈夫だと願いたいが仕事中にもし漏れてしまってもちゃんと受け止めてもらわなくてはならない。ギャザーが立っていることを確認してからシャツを着て白色のワンピースに着替える。光が通るくらい薄いがおむつの上からカバーパンツを履くので柄がすけるということだけは避けられるだろう。それにしてもこんな服を着ている世の中の女の子はすごいと思った。

「あ、サクラちゃんの制服も出さないとね。今日から仕事だし」

 サクラの分のカバーパンツと一緒に持ってきたのはメイド服のような水色の服。今日から働くお店の制服だ。ミアと仲間ということで二着用意されている。サイズも服と同様、しばらくはミアと仲間だろう。それをミアに貸してもらったカバンに入れる。そして一番の課題が。

「そういえばおむつ何枚持っていく?三枚くらいで足りるかな?」

「んーどうかな?二人だったらもう少し多めに持って行った方がいいと思う。最初だし、何かあると嫌だから・・・・・・」

 服をつかんでもじもじしてしまう。人生で初めての仕事。お客さんや職場の先輩の前で絶対に恥ずかしい思いだけはしたくなかった。その思いはミアに言わなくても伝わっていたようだった。

「・・・・・・そうだね。じゃあ私のも含めて八枚くらい持って行こうか。ほら、余ったら置いてきてもいいし、持ってきてもいいから。あとはータオルとウエットティッシュも多めに持って行っておこうかな」

「ありがと」

「・・・・・・ん」

 ミアの顔が少し赤くなったような気もしたが気のせいだろうか。そこまで時間も残されていないので絵制服の準備などはサクラが、朝ご飯の準備をミアが担当し、慌てて残りの支度を終わらせる。


 ♢


 その後食器の片付けはあとにして職場へと向かう。初回のあいさつのために早めに向かうはずだったのだが、なんだかんだで時間がかかってしまった。少し早歩きで職場へと向かう。カバーパンツを履いているおかげでおむつが見えてしまう事故がないので極端に意識して歩く必要がないのが楽だ。気持ちおむつよりも丈があるのですーすーする範囲も少し減っていいことだらけだ。

 昨日面接に来た職場の裏口から入り、ロッカースペースへとむかう。昨日のミアしかいなかった状況とは異なり、一人着替えている人がいた。慌てて目を背ける。ピンク色の何かが見えたような気がするが見えなかったことにしておいた方がいいのだろうか。それとも慣れておくべきなのだろうか。

 その少女はサクラの存在に気づき、話しかけてくる。

「おはよ~その子が新人のミアの妹さん?可愛いね」

「ありがと、ちょっとシャイな子だからまた仕事の仕方とか教えてあげてほしいんだけどいい?あ、サクラ、自己紹介して」

 ミアに言われて慌てて前に出る。

「は、はじめまして、ミアの妹で今日からお世話になるサクラです。よろしくお願いします!」

 頭を下げる。ミアに頭をなでられて「うん。完璧」と小さくささやかれる。その一言だけで安心感が段違いだ。

「はじめまして。私はカミラ。ミアよりも一つ上の先輩。何かあったら聞いてね」

 カミラと名乗る少女はボブカットのピンクヘアー。服装はもう制服なので特段特徴などはないが、ふわふわとした印象の女の子だった。身長はミアよりも少し高く、そこは一歳年上という感じだ。だからといって年上という圧などは全くない。

「よろしくお願いします」

 改めて頭を下げる。

「まあ本格的な自己紹介は朝礼の時にするし、とりあえず着替えて表行くね」

「うん。じゃあ私先に行ってるね」

 そういうともうすでに着替えを終えていたカミラはぴょこぴょこと歩いてロッカールームを出て行った。小さく息を吐き、制服に着替える。見ているだけでは分からなかったがスカート部分は中にも複数の布の層があり、それであのスカートのふくらみを出しているようだった。確かにストレートで下に下りているよりも広がっていた方が可愛い。着方は普通のワンピースと同じなので困らなかったがエプロンだけはミアにつけてもらう。一方ミアは慣れた手つきですぐに着替えてしまう。自分が手間取っているのが少し寂しくなる。

「大丈夫。すぐに慣れるから」

 それすらもミアはお見通しなようだった。最後に人生で初めて髪の毛をまとめてもらい、ハーフアップで水色のシュシュで止めてもらう。制服と一体感があって可愛さが割り増しになっているような気がする。ワンピースを自分のロッカー(ミアの隣)にしまい、フロアへと向かう。


 フロアには先ほどロッカールームを出て行ったカミラと店長であるレイラがいた。今日はこのメンバーということだった。始業前にカウンターの隣で円になり、改めて自己紹介をする。といっても先ほどカミラに済ませた以外はもう知っている顔なので非常に軽く済ませる。

 そして軽く業務連絡が行われ、サクラの教育係としてミアが。ミアが手を離せなかったときのバックアップとしてレイラが配置される。初日なのでとりあえず業務を覚えることを優先にするということだった。文字が読めない問題も、ゆっくりと解決していくことになった。

「・・・・・・あとおむつの話なんだけどしても大丈夫?」

「え?」

「何かあった時に誰でも対応できるようにしておいた方がいいでしょ?大丈夫。みんな理解あるし、なんなら私だってお世話になってたから気にしなくても大丈夫だよ」

 レイラにそういわれるとそうするしかないように感じる。それにもし何かあったときに誰にでも頼ることができる環境は恥ずかしさよりもありがたさの方が大きい。レイラの方を向きゆっくりとうなづく。

「・・・・・・二人にとっては久しぶりって感じかもしれないけどミアちゃんまだトイレに間に合わないことがあるみたいだからもし困ってるみたいだったら二人とも助けてあげてね」

「はい」

「あ、レイラさん・・・・・・そういえば私も今念のためまた・・・・・・」

「そうなの?まあみんなで助け合うということでよろしくお願いします。じゃあ今日も一日頑張りましょう!」

『はい』

 朝礼が終わり、ミアとカミラは店のドアを開け、レイラはレジらしき場所に立ち、どこに行けばいいのか分からなくなっているとミアに呼ばれ、店の戸の開け方を習う。商品の配置などは追々だ。

 そしてサクラにとってはじめての仕事が幕を開ける――

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