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サクラのかくしごと  作者: 華点
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1話 第2章 ふたり暮らしの始まり。彼女の秘密。

 そのあとは二人で生活するために最低限の準備をするために必要なものを書き出したり、ルールを決めたりする。服はお金がかかるので当面は二人で使うことなど。

 それに加えてランプの扱い方や料理の仕方なども教えてもらう。そうしているとあっという間に夜になる。この間何回か尿意を催したが、ちゃんとトイレに間に合った。

「じゃ、そろそろご飯にしようよ。ここの食べ物とかわからないでしょ?私に任せて」

「うん」

 先ほど教えてもらったのだが、ここの世界では家電などがない分、魔法を利用した調理器具があるのだという。石板に丸や記号が書かれた板はかまど代わりになり、冷蔵庫のようなものもある。電気がなくても意外と何とでもなるのだと思った。

 暗くなってきたのでランプを点け、調理を開始する。料理に関しては全くと言っていいほどできないので完全に作ってもらうことにした。申し訳ないので手伝いたいのは山々だが、それで逆に迷惑をかけるわけにはいかなかった。

 時計というものもないので正確にはわからないが数十分で料理が完成する。料理はパンに野菜やハムなどが挟まれたサンドウィッチだった。ちなみにスマホの時間は九十九時九十九分と表示され、正確な時間を見ることはできない。この板は充電がなくなり次第使い物にならなくなるだろう。それにこの世界では必要ない気がする。

「いただきます」

 大きなサンドウィッチをほおばる。髪の毛が邪魔で食べにくいと伝えるとミアが結ってくれた。普通に後ろで一つ縛り、低めでだ。

「おいしい」

「そう?よかった。明日は二人で暮らすために必要なものを探さないとね。あと街の紹介とか」

「うん。おねがい」

「もちろん。お姉ちゃんに何でも頼っていいからね?」

「うん」

 この姿ではミアのほうがお姉ちゃんなのでミアがお姉ちゃんだ。何より「サクラ可愛すぎ」と喜んでくれるので言う方も嬉しい。

 話しながらサンドウィッチを食べ、食べ終わると皿をミアが洗う。

「・・・風呂さ、一緒に入る?」

 ミアが言った。一緒に入りたいという顔をしている。やはりこの年で一人暮らしは寂しいのかもしれない。

「いいよ。ミアこそいいの?」

「もちろん。サクラちゃんみたいな可愛い女の子と入れるんだったら喜んで」

 ということで笑顔で風呂掃除をしに行ったミア。ちなみにお湯も魔法の力で沸かしているらしく、昔ながらの五右衛門風呂に薪をくべる必要はないのだとか。

 お湯が沸き、一緒に脱衣所へと向かう。まったく意味はないが扉も閉めておく。扉を閉めてミアの方向を向くと何も気にしていないように服を脱ぎ始めた。

「ちょっ!」

 慌てて目をそらす。女の子になってしまったとはいえ女の子の体を直視できるようになったわけではない。だがミアからしたら元男だと告げられても女の姿になってから出会っているので女の子と同じ扱いなのだろう。体も女の子になってしまっているので今更男の子扱いも困るような気がしたが。

「気にしてたらこのあと一緒に過ごせないでしょ。ほら、サクラも脱いで」

 完全に服も下着も脱ぎ終えたミアが駆け寄ってくる。大切なところも一切隠さずに。そして何の躊躇もなくサクラの着ている服のズボンに手をかけ一気に下げた。

「じ、自分で脱げるからぁ・・・」

「そう?まだ女の子の体も慣れてないだろうし、脱がせてあげようと思ったんだけど」

「そんな気遣いはいらないから!自分で脱げるから!」

 そういうと少し残念そうにしていたがミアはサクラの服から手を離し、先に浴槽に浸かりに行った。とりあえず一安心で、小さくため息をついたあと、再び服を脱ぎ始める。やはりまだ女の子の服は慣れない。この体も・・・違和感しかない。

 一応タオルが用意されていたのでしっかり胸から隠して風呂場の扉を開ける。すぐ目の前の浴槽にはミアが浸かっていた。なんとなく予想で来ていた事態だが、お湯は透明なようだ。極力ミアの体を見ないようにしながらサクラも浴槽に浸かる。二人とも体が小さいので何とか隣り合う形で入ることができた。向かい合って入ればもう少しゆとりがあるのかもしれないがお湯が透明な状態でサクラと向き合う自信がなかった。

「どう?熱くない?」

「うん、大丈夫」

 それどころではなく、もうお湯の温度も分からない。

「ねえ、何でこっち向いてくれないの?」

「・・・だって恥ずかしいもん」

「え?だってもう今は女の子同士でしょ?何も恥ずかしがることはないのに」

「そうだけど・・・」

 こればかりは鳴れるまでにかなりの時間がかかるような気がした。というよりも慣れる日は来るのだろうか。正直微妙な気がする。

 さすがに今のままではだめだと思い、一瞬慣れるためにミアの方を向く。するとミアはこちらに向かって微笑んでくれる。慌てて目線を逸らす。

「こっち見てくれて嬉しかったよ」

「・・・ごめん、まだやっぱり・・・その・・・裸だと恥ずかしい・・・」

「まあ、私もこればかりは今すぐになれてとは言えないからさ。じゃ、せっかくだし慣れるためにも体洗いっこしようか」

「え?」

 何やらとても嫌な予感がした――


 †


 風呂から上がって女の子の体になった自分の体を見るのも少しためらいながら体を拭く。そして体洗いっこの記憶がよみがえる。思い出すだけで恥ずかしくてしょうがない。ミアに体の隅まで洗われてしまい、自分でも想像できないような声が出てしまっていたような気がする。これが下手をすると毎日になるのかと思うとどうにかしないといけないような気がしてきた。さすがに自分の体は自分で洗いたいし、人の体を触るのは苦手だ。

 体を拭き終えてもなぜかミアは新しい下着とパジャマを出してはくれていなかった。なぜだろうか。先ほどの服を着ろということなのだろうか。たった数時間しか着ていないわけだし、そんな気がしてくる。先ほど脱いだ服を拾い、再び袖を通そうとする。

「え?なんでパンツ穿こうとしてるの?」

「え?」

 一瞬耳を疑いたくなるような台詞だった。では何を着ればいいのだろうか。女の子は夜だけ着るものが違うのだろうか。女の子として夜を過ごすのは初めてなので何もわからない。普通は今自分の行動で正しいはずだが。

「・・・だって、この歳でおむつが外れてるなんてことないでしょ?」

「え?」

「え?まさかサクラちゃんおねしょしない子なの?」

 男子として生きていた時、していなかったので大丈夫だろう。ということで首を縦に振る。

「えーでも・・・さっきおもらししちゃってたし・・・念のためサクラちゃんもおむつしない?」

「えー」

 気が向かないのは当たり前だった。数年ぶりにおむつという名前を聞いた気がする。女の子の格好ですら恥ずかしいのにさらにおむつはさすがに恥ずかしすぎる。正直拒否したいと言えば拒否したいのだが数時間前に漏らしてしまった前科もある。だからこそ強くは断れなかった。

「・・・念のためだよ?大丈夫だとは思うけど」

「よかったーわたしだけおむつとか恥ずかしいもん」

 そういうと多少のプライドの表れなのか律義に見えないよう引き出しにしまわれていたおむつを出してくる。ピンク色でザ・女の子用という感じだ。股のところにはおしりまで半周するように黄色のラインがついている。これを自分が穿くのだと思うとなぜか鼓動が早くなる。

 ミアにそれを悟られないようにしながらミアからおむつを受け取る。広げて穿こうとしたとき、このままでは穿くことができないことに気が付く。

「・・・まさかこれって」

「だってテープタイプの方が安いしたくさん入ってるし漏れにくいんだもん・・・」

 さすがにテープタイプは自分でつけることができないことくらいなんとなくわかっていた。テープなのは人につけてもらうためだからだ。

「つけてあげるから、ここに横になって」

 ミアが床にタオルを敷き、その上に広げたテープ式のおむつを置く。その上に横になり、慣れた手つきのミアにテープタイプのおむつをつけてもらう。最後に股の部分をぽんぽんと軽くたたかれる。

「じゃあ次は私の番ね」

 そういうとサクラの持っていたおむつを取り、広げてその上にミアが寝転がる。

「・・・どうやればいいの?」

「あーそっか、おむつ卒業してたらわかんないよね。私が言ったとおりにやってみて」

 気が向かないがミアの言うとおりにおむつを股の部分に当て、テープで留めていく。はじめての作業でうまくできた気はしないが最後にミアが「自分で貼りなおせるから大丈夫」と言っていたので大丈夫だろう。普段一人暮らしでテープ式のおむつをつけているということはミアは一人でつけられるはずだ。ではなぜつけてほしいと言ってきたのだろうか。

「じゃ、寝ようか。布団は一組しかないから一緒に入ろうね」

 ミアから改めてパジャマとキャミ―ソールを受け取って着る。そのままミアに引かれて布団に入る。

 普段とは違う股の感覚。おむつってこんなにもこもこしていただろうか。もしあの時のように漏らしてしまっても大丈夫だと思うと心の突っかかりが一つ外れたような気がした。

 ミアと手をつなぎながら眠りにつく。変な一日だったがミアのおかげで何とか乗り切ることができた。とりあえずは明日の朝、おねしょをしないようにしようと心に誓いながらゆっくりと夢の世界へと落ちていった――

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