2話 第4章 午後のおしごと
午後からもそれなりに忙しく、ミアとレイラの休憩は少し落ち着いた頃に取ることになった。暇を見てカミラがミアとおむつのことを話したらしく、二枚ずつ交換することになったらしい。午後はおむつに失敗することはなく、仕事も順調で午前中のミスを取り返すことができたのではないかと個人的には思う。
店を閉める時間の少し前、とあるお客さんがやってくる。
「よっ!さっき以来」
声を聴いて振り向くとそこにはチャーリーがいた。この職場は基本的に女の子向けの服屋だ。男の子が来てどうするのだろうか。
「あ、さっきはどうも・・・」
軽く頭を下げる。ご飯はおいしかった。
するとそこにカミラがやってくる。
「チャーリー?なんでいるの?ここは女の子の服屋さんよ?まさか女装でもするの?」
「んなわけないだろ!顔見に来たんだよ。悪いか」
「別にそういうわけじゃないけど・・・何か理由でもあるのかなと思って。だって始めてきたでしょ」
「り、りゆうなんかねえし。ただ・・・ちょっと顔出そうと思っただけ」
「ふーん。まあゆっくりしてってね。服選んでほしかったら選んであげるから」
「いらないっての!」
金髪をゆらゆらと揺らしながらカミラにかみつくチャーリー。この二人は仲がいいなと思いながらにこやかに眺める。
「サクラさん?だっけ?どう?ここのバイトは」
「もしかして君の店に引き抜こうとかしてないよね?」
「してねえよ!ただの社交辞令だろ?で、どう?」
「仕事ですか?・・・皆さん優しいですし、制服もかわいいですし楽しく働かせてもらっています。今日まだ初日でわからないことも多いですが」
にこっと笑って返す。仕事が楽しいのは事実だった。制服も・・・かわいいなとは思っている。
「そ、そっか。よかったな」
「なにそれ~」
カミラはチャーリーの頭をいじる。この二人はきっとこのような感じなのだろう。友達以上恋人未満とでも言い換えたらいいのだろうか。それとも幼馴染、か。
ふわふわピンクのボブのこんなかわいい子にこれだけ触ってもらえるのは少しうらやましい気もする。元男子として。だが現女子としてさっきは恥ずかしいお世話になってしまったので何とも言えない。
「・・・よかったら店内回りますか?私ついて回るので」
「じゃ、お願いします」
・・・先ほどからチャーリーの自分に対する態度がよそよそしいというかやけに緊張しているような感じに感じる。こっちに来てから初めてかかわる男の子。この世界ではこんな感じなのかもしれない。それとも元の世界でも女の子はこのような対応だったのかもしれない。よくわからない。
カミラと離れ、チャーリーと二人で店内を回る。カミラから遠ざけたのには一つ理由があった。自分にできる些細な応援だが。
「・・・チャーリーさん。よかったら私が選ぶの手伝うのでカミラさんに服でもプレゼントしませんか?きっと喜びますよ?」
「はあ?なんであんな奴のために」
「だって仲いいじゃないですか。私、体格は似てるので代わりに試着もできますし」
「でも・・・なんであんな奴のために・・・」
これだけ言っても渋るチャーリー。どうしても二人を応援したいサクラは最終手段に出る。チャーリーにグイっと近づき、チャーリーの片手を取って両手でぎゅっと握る。急な展開にチャーリーもパニックになっている。
「・・・カミラさんきっと喜びますよ。私頑張るので!」
「・・・・・・今だったらサクラさん着てくれるんだもんなあ・・・」
「?はい。来ますよ」
「・・・だったらほかのかわいい服着てるところも見れるし・・・」
「何か言いました?」
「ううん。何も!じゃあお願いします」
「わかりました。どんなのがいいですか?」
手を放し、再び歩き始める。後ろでチャーリーが離された手を残念そうに眺めていたような気もするが気のせいだろう。自分なんかに手を握られてうれしいはずがない。
「・・・せっかくならかわいいのがいいです。なんかこう・・・フリフリしてるというか・・・スカートとかで」
「そうですね。カミラさん可愛いですし、よく似合うと思います。早速ですけどこんなのはどうですか?」
今日働いている知識を総動員してお客さんがかわいいと言っていたワンピースを手に取る。白を基調としており、ノースリーブのワンピースだ。オムツを穿く人にも考慮されており、スカート部が二重で透けづらく、外側がめくれてもおむつが露わになりにくいようになっている。カミラがおむつなことをチャーリーが知っているかは知らないが、これならカミラも気にせずに穿くことができるだろう。念のためカバーぱんつを穿いたほうがいいがそこから先はチャーリーではなくカミラの問題だろう。
「あ、忘れてました。サイズ確認のために着てみますね」
「は、はい」
チャーリーを連れて更衣室の前へと移動する。チャーリーを外で待たせ、サクラは更衣室の中へ。エプロンを外してから自分でつけられないことを思い出したがもう時すでに遅し。諦めて制服を脱ぎ、選んだワンピースを着る。出勤時に来ていたものよりも生地は分厚く、スカート部をめくってもカバーぱんつが露わにならないのはすごくいいなと我ながら思った。ただノースリーブなので肩から二の腕まで思いっきり露出しているのは少し恥ずかしい。まだ肌がたくさん出るような恰好は慣れない。腰で縛るひももあったため、後ろで縛る。カミラもそうだが細いシルエットが目立ってすごくいいと思った。とにかく可愛い。
おむつとカバーぱんつが見えないことを何度も確認し、カーテンを開けてチャーリーに見せる。
「・・・こんな感じです」
カーテンを開けると足元をより風が抜けていくためスカートがスース―する。丈も膝までしかないので尚更恥ずかしい。
普段は隠れている真っ白な肌も露出している。
「・・・可愛いですね。サイズ一緒で大丈夫ですよね」
「気持ちカミラさんのほうが大きいのでサイズは一つ上げておいたほうがいいかもしれないですけど・・・」
「あー大丈夫です。このサイズでお願いします」
「いいんですか?少し小さいですよ?」
「はい。お願いします」
「・・・とりあえず脱ぐので待っていてください」
カーテンを再び閉め、制服に着替えなおす。エプロンは何んとなくまでは着られるが、後ろで縛るのがどうしてもできない。もう仕舞うところは仕舞っているので大丈夫だろう。カーテンを開け、チャーリーに頼む。
「・・・ごめんなさい。後ろ縛れないのでお願いしてもいいですか?」
「う、うん」
チャーリーに対して後ろを向き、髪の毛を極力前に流す。ゆっくりとチャーリーがエプロンに手を伸ばし、程よい強さで縛ってくれる。
「・・・これで大丈夫だと思います」
「ありがとうございます。この服もう会計しちゃいますか?」
「お願いします」
そのままレジへと向かい、レイラに『カミラには秘密で』と伝えてラッピングまでしてもらい、カミラを待つまでレジで保管することになった。
(サプライズプレゼント成功するといいな)
サクラはいいことをしたという気持ちでいっぱいだった。
♢
閉店時間になり、特別にチャーリーを店の裏へと連れていき、閉店業務を行う。基本的にレジ閉めや入口の施錠がメインのためすることは意外と少ない。掃除は開店業務でやるためしなくてもいい。
仕事が終わり、チャーリーを裏に置いたまま更衣室へと向かい、全員で着替えをする。
当然みんな女子(表向き)ということもあって何ら躊躇なく服を脱いでいく。当然ブラやショーツなどが露わになる。カミラとサクラはおむつだが、上は普通にキャミソールとカミラはブラだ。
意識して目をそらし、自分の着替えに集中する。他に意識がいかないようにしながら。
「サクラちゃん。おむつ大丈夫?」
ミアに話しかけられる。午後はおむつを濡らした記憶も意識もない。当然「大丈夫」と声をかける。
「えーでも一応見ておいたほうがいいよ。意識してなくてもちょっと出ちゃったりしてたりもするから」
不安になり、カバーぱんつを下ろす。露わになるピンクのおむつ。自分から見たら何も変わりがないように思える。
「ほら大丈夫――」
「色変わってるよ」
「え?」
慌てて下を向く。だが見える範囲のお知らせサインは黄色のままだ。だがミアが嘘をつくことはありえないだろう。
「・・・自分からは見えないと思うけど、下がちょっと青色になっちゃってるよ。かぶれちゃうと困るし、ここでおむつ替えたら?」 手を下に回す。確かに少し膨らんでいるような気がした。仕事に集中していたせいで気づかなかったのだろうか。だからといってここでおむつを替えるのはみんなに見られるため嫌だった。だがもう制服を脱ぎ、下着姿になっている。トイレへと向かうための部屋には今チャーリーがいる。下着姿は絶対に見られたくなかった。特におむつだけは秘密にしておきたい。
「・・・トイレ行けないもんね・・・いいですか?ここでしても」
「うん。女の子しかいないし誰も気にしないよ。ちゃちゃっと替えちゃったら?私たちだって見ないし」
「はい」
そこまで濡れていないため、普通におむつを下ろす。おしりふきを使ってきれいにした後、せっかくなのでカミラと交換したおむつを穿く。こちらは同じピンク色でもお知らせサインがついていないタイプ。そのほかにも若干肌触りが違い、普段のおむつよりも若干薄型に感じられた。あと普段のよりも少し硬い気がする。
おむつを丸め、家で処分するため袋に入れてカバンに入れる。カバーぱんつを穿きなおし、着てきたワンピースに着替える。制服に比べて生地が薄く、中が見えないための工夫などがないため若干不安が残る。
他の人も着替えが終わり、更衣室を出る。チャーリーが待ちくたびれた顔で待っていた。
「遅い」
「仕方ないでしょ?女の子は着替えに時間がかかるんだから。あと女の子の着替えはせかしたらダメ」
「・・・ごめん」
「なんかやけに素直だね。助かるけど」
チャーリーも含めて裏口から店を出る。外はもう暗くなりかけていた。なんだかんだで一日働いていたことになる。店を出た瞬間、急に疲れが吹き出してくる。
「じゃあお疲れ」
「お疲れ様です」
「せっかくだしさ、ミアの家でみんなでサクラちゃんの歓迎会しない?お泊りで」
「いいね!いいよ。家自由に使って。布団が足りないのはごめんね」
「仕方ないって。じゃあこのまま直行!」
レイラの提案で今から家で歓迎会が開かれることになった。お泊りといってもこのメンバーだ。おねしょをしてもいろいろ安心だろう。だが一つだけ不安材料がある。
「・・・あの・・・僕はどうすればいい?」
「あ、カミラ。チャーリーくんはどうする?せっかくだし連れてく?」
「ミアがいいなら。別に男の子だけど変なことするタイプじゃないし」
「どうミア」
「んー別に顔見知りだし、カミラちゃんが大丈夫だと思ってるなら大丈夫。風呂とかはタイミングずらせばいいだけだし、このタイミングで一人返すわけにもいかないから」
「えええええ??いいんですか?」
チャーリーもさすがに許可が下りるとは思っていなかったらしい。驚きと喜びが顔からあふれている。
「ただし絶対変なことはしないこと。いいね?」
「もちろん。誓って」
「じゃあよし!行こうか」
「うん!」
「まあまずは夜ご飯の買い出しだね」
「そうだね」
全員の進路を商店街へと戻し、とりあえず夜ご飯の調達をすることになった。歓迎会を開いてもらえるという感謝の気持ちと疲労と仲間に入れてもらえたといううれしさがいろいろと混ざっている。だが当然不安材料もある。
もちろんそれはおむつのこと。自分もサクラもカミラもおむつをしている。レイラさんはどうかは知らない。軽く聞ける内容ではない。誰にせよ、知られているのかはわからないが、もし知られていなければ知られるわけにもいかないだろう。ぱんぱんなおむつ姿を見せるようなことにならなければいいのだが・・・
いろいろな感情がごちゃ混ぜになりながら今日の主役として真ん中を歩いていく――
Fin




