黒いマントの女の子
具実10歳、蜜柑10歳。
二人の学校は夏休み。久しぶりに祖母のお手伝い。祖母手作りの海苔や干物や梅干し、畑のトウモロコシや枝豆。何でも作れる不思議な手。
「私はお前達の婆ちゃんなのに言うのもなんだが、親や年寄りの話は聞ける時は聞いた方がいい。大事な事が沢山あるから。」
「お婆ちゃんの名前は何でトキなの?漢字で書くの?」具実に聞かれた祖母は砂浜に自分の名を漢字で書いた。
「私は年寄りだけど、江戸時代に生まれたわけではないよ。」
小さい子供にとっては何でも知っている祖母は、坂本龍馬と知り合いでも不思議だとは思えない存在だった。
トキ…朱鷺の赤ん坊の頃はファンタジーな物語の主人公の様な名前をつけられる子供が一時的に多かった。
「この島しか居なかった鳥の名前なんだけど、お転婆さんが海を越えて飛んでいって友達を探しに行ったのさ。結局見つからなくてまたこの島に帰ってきて、島の友達とどんどん仲間を増やしていったのと普段の姿が羽根が桃色で、女の子の名前にしようと親がつけてくれたって。」
蜜柑はこの島がだんだん暖かくなって、蜜柑がとれるようになって、出荷出来る様になったのと、やっぱり可愛らしいから親が考えてつけた。
具実の実は元は美しいの美だったんだけれど、蜜柑にあやかって果物の実に変えた。
婆ちゃんが意見したから婆ちゃんが名付け親。学校でもお婆ちゃんにつけてもらったと言いなさい。お婆ちゃんが具実の一番の味方だとみんながわかるから。」
お婆ちゃんの話は長くてよくわからないけれど、二人とも大きな愛情に包まれていると感じていた。
具実の名前の漢字を変えた事は、祖母と母の配慮だった。苗字も、戸籍も。蜜柑の両親の養子になっていた事も。
具実の母は実は祖母の孫。つまり曽祖母である。