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復活してもいいですか?

ぼくはゾンビから復活した。

肌は本来の色に完全に戻り、食事もできるようになった。

家族には驚かれたけれど、刺されてからずっと入院していたのでぼくがゾンビになったことを知らない人も多かった。


とはいえ、しばらく寝込んでいた影響は否定できない。

ぼくの足腰は弱くなっていて、リハビリにはそれなりの時間を要する。まずは体を動かずところから始めないといけない。


とりあえず、自宅周辺の散歩から始めることにした。

芹沢さんも協力してくれて、放課後や休日に隣でぼくの歩行をサポートしてくれた。

そのおかげもあってぼくは確実に回復の道を進んでいた。


「体のほうはだいぶ戻ってるみたいね。そろそろ学校にも戻れるんじゃない?」


体のほうはほとんど問題なくなっている。

自宅周辺の散歩もリハビリというより芹沢さんとのご近所デートみたいになっていた。

それでも、学校に通う気にらないのは、自分の体に別の不安があるからだった。


「ぼくがいつ吸血鬼に目覚めるのかはわからないから」


いまのところ、ぼくの体に異常はない。

誰かを殺したいとか、誰かの血を吸いたいとか、そういう衝動は一切感じていない。


この日もそう。放課後の時間帯に近所を散策していて、何人かの人ともすれ違ってはいるのだけれど、襲いたいなんて発想は浮かばなかった。

「じゃあ、普通の人間に戻ったということね。人間からゾンビになり、ゾンビから人間になった。吸血鬼になる寸前で止まったのよ」


そんな都合の良いことがあるのだろうか。

そうであってほしいとは思う。でも、ゾンビとは言え、その血を体に取り入れたことによって瀕死の状態から復活したということはおそらく、普通の人間に戻ったとはいえないはず。


「そんなに気になるならあの人に聞いてみたら?」

「あの人?」

「病院でわたしに吸血鬼のこととか教えてくれた人」


神谷先輩、か。確かにいまの状態を知るには一番いい方法かもしれない。


「そうだね。明日にでも神谷先輩に話を聞いて」

「その必要はありません」


ふいに背後から聞こえた声。

振り向くと、そこには神谷先輩が立っていた。


「お久しぶりですね、高木くん。お元気そうでなによりです」


神谷先輩がこちらに向かって歩いてくる。

ぼくの視線はその手元に吸い寄せられた。

手には死神らしい、神谷先輩の身長を超えるほどの大きな鎌を持っていたから。湾曲した刃が夕日に照らされて鈍く光っている。


「神谷先輩?」


女子高生が持つにしてはあまりにも大きい鎌。

いや、それ以前に鎌そのものを持っていることのほうがおかしい。死神という情報を先に聞いていなかったら、ぼくはまったくこの状況を理解できていなかっただろう。


「覚えてますか、わたしの仕事」

「死神、ですよね」

「そうです。そしてその死神の役目は?」

「吸血鬼を殺すこと」


よろしい、と神谷先輩は笑顔でうなずく。


「では問題です。高木くんはいま、どのような状態でしょうか?」

「……」

「この前までゾンビだった高木くんが、いまは普通にこうして歩いている。それはなぜでしょうか」

「それは」

「血を、吸いましたね」


だらり、と鎌を持った腕が垂れる。

刃物の部分が床に落ちて甲高い音を立てた。


「吸血鬼は退治しなければなりません。例えそれが心を通わせた相手でも」


神谷先輩が鎌を両手で持ち、高く掲げた。


そして、こちらへと向かって突進してくる……。

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