第98話 〜お兄ちゃんは混乱しているようです〜
「……はぁ?」
見知らぬ子ども二人に囲まれ、俺は困惑する。
それは、目の前の二人も同じなのだろうか? 先程から一切表情が変わらないこの子どもたちに、正直何を考えているのか俺にはサッパリ分からない。
(考えろ、俺……今起こっている状況を……!)
目の前には人形のように整った、灰色がかった白髪と碧眼の、瓜二つの顔の子どもが二人。
二人の大きな違いといえば、髪型と服装だ。
一人はボブヘアーに、膝丈くらいのズボンを履いた執事服の子ども。
もう一人は腰まであるロングヘアーに、ゴシックなメイド服の子どもだ。
パッと見た感じ、この二人は使用人か何かなのだろう。
そんな時だった。子どもの片方が口を開く。
「お客様、お客様。いきなり掴んできたその手を離して欲しい……と、アレンはアレンは思うよ」
「お客様、お客様。その小汚くていやらしい手を離して欲しい……と、リリィはリリィは思うの」
二人に言われた俺はその時初めて、左右の子どもたちの手を掴んでいることに気づいて慌てて手を離す。
「ご、ゴメン……って、え? 今なんって?」
俺が聞き返そうとするのも束の間。二人は足早に俺が寝ていたベッドから遠ざかり、互いに手を繋いで身を寄せあう。
「姉様、姉様。あのお客様……目覚めて早々、姉様の綺麗な手を触ってきたよ」
「兄様、兄様。あのお客様……目覚めて早々、兄様の美しい手を握ってきたわ」
その言葉に「はっ!」とする。
無意識だったとはいえ、初対面の子どもの手を握ったのは俺だ。不審がられても仕方がない。
「い、いや……今のは……!」
「みてみて、姉様。きっと今、姉様の可憐な姿を見て凄く不快な妄想をしてるんだよ」
「みてみて、兄様。きっと今、兄様の華奢な姿を見ていやらしい妄想をしてるんだわ」
「ご、誤解だって!」
俺が訂正をしようにも、二人の会話は止まらない。
「アレがおそらく、『ロリコン』ってやつだよ、姉様」
「そうね、アレが『ショタコン』ってやつだわ、兄様」
「『変態』だね、姉様」
「『変態』だわ、兄様」
「ちょ、ちょっと待てい!」
ちょいちょい不穏且つ、不快なワードが飛び交っていたため、俺は二人の会話を勢いで遮る。
初対面の人間に対して、それは失礼すぎませんか!?
「お客様、お客様。声を荒らげてどうしたの?」
「お客様、お客様。顔を真っ赤にしてどうしたの?」
「いやいや、『どうしたの?』じゃないだろ! 失礼すぎるわ! あと俺は『ロリコン』でも『ショタコン』でもねぇ!!」
俺がそう叫ぶと、二人は少しだけ目を見開きながらヒソヒソと会話を始める。
「……驚いたよ、姉様。お客様は『ロリコン』ってやつじゃないんだって」
「……驚いたわ、兄様。お客様は『ショタコン』ってやつじゃないみたいだわ」
「でも『変態』は否定しなかったよ、姉様」
「でも『変態』は否定しなかったわ、兄様」
「あー言えばこー言う!」
完全に二人のペースに流された俺は、半ばキレ気味に頭を搔く。すると『コンコンコン』と、軽くドアをノックする音が聞こえた。
「……何かと思って、来てみれば……廊下まで、声が響いてるぞ」
「……! お前は!」
「よっ、旦那。寝起き早々、元気そうでなによりだ」
そこには無精髭を生やした、ウサギ耳の男……もとい、ヒイラギさんが立っていた。
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