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第95話 〜お兄ちゃんは向かうようです〜

「それで? フレイファイア公爵様の使用人であるヒイラギさんが、わざわざココに来た目的は?」


 俺が本題に入ると、少しだけ空気がピリついた気がした。

 何が起きているのか分からない、妹と伊織だけを置いて。


「……本当に、勘がいいと言うか、鋭いというか……話に聞いていた通りだな、アンタは」


 そう言ってヒイラギさんは立ち上がると、お辞儀をする。



「我が主、アンジェリカ・フレイファイアの(めい)により、アナタ方を我が主の屋敷に招待したい」



「なっ……!」

「はぁ……?」


 突然の申し出に呆然とする俺とは反対に、ロキが先に反応する。


「テメー、それは……!」

「もちろん、ロキさまもセージさまも、一緒に帰るんっすよ」

「だけど……」

「それに……――――」


 そう言って、ヒイラギさんはロキに何かを耳打ちする。

 それを聞いたロキは、一瞬驚いた顔をして直ぐに納得したように頷く。


「……わかったよ」

「理解してもらえたみたいで、何よりです」


 ヒイラギさんは軽く笑うと、俺たちを見る。


「アンタらも、ついてきてくれるよな?」


 俺は一瞬どうしようか考える。ロキとセージがいなければ、この世界についてまだまだ分からないことだらけだ。

 だからこそ、答えはひとつ。


「もちろん、よろしく頼む」


 ……つまり、俺たちには選択肢があるようで、実際のところはないのだ。


「それじゃあ俺はセージさまを迎えに行って、移動する準備をしてくる。その間、アンタらは……」

「ま、まって、ヒイラギさん!」


 淡々と準備を進めるヒイラギさんに声を上げたのは、意外にも妹様だった。


「何だい? お嬢ちゃん?」


 人見知りな妹は伊織の後ろに隠れながらも、震えた声で喋る。


「お、お願いが……あり、ます……!」




 俺たちは首を傾げながら、妹の『お願い』を聞くのだった。




 ▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁▷▶︎◀︎◁




「キミ〜ぃ!」

『ガウゥ〜!』


 妹とキミーは、感動の再会とばかりに抱きつき合う。っか、お前ら昨日も会ってたよな?


「へぇー……話には聞いていたが、立派なウッドマンだな」


 ヒイラギさんは感嘆の声をあげる。

 そう、妹の『お願い』は『キミーを一緒に連れていく』ことだった。


 たしかに、キミーは妹の『使い魔』的ポジションだ。

 俺も今回の話が出た瞬間、キミーをどうしようかと悩んだ。

 しかしそんな悩みも嘲笑うかのように、案外とあっさりとOKされたのだった。


「このウッドマンについても、事前に聞いていたからな。もし連れて行きたいと言われたら、承諾するようにお嬢に言われている」

「めちゃくちゃ有能な人なんだな、公爵様って……」

「有能っちゃ有能だが、お嬢の場合はなぁ……」


 何かを言いかけて、ヒイラギさんはまた渋い顔をする。一体どんな人なんだ、フレイファイア公爵とは。


「まぁ、お嬢はスゲーお人だ。それだけは保証する」


 そう言われて俺は、一つだけ心配していることを聞く。


「なぁ、ヒイラギさん……もし失礼なことしたら、首と胴体がサヨナラしたりとか……」

「………………」


 俺の質問に、ヒイラギさんは少しの間を置いて笑う。


「………………気にするな、お嬢は心の広いお人だ。よほどのことがない限り、消し炭になることはない」

「まって、今めちゃくちゃ怖いこと言わなかったか!? ねぇ!?」

「さぁ、この用意した()()()に入ってくれ」


 慌てる俺を無視して、ヒイラギさんは準備を進める。


「『魔法陣』ですか? 馬車とかじゃないんですね」


 俺に変わって、伊織が質問をしている。ほう、『魔法陣』とな?


「馬車を使ったら、ここからひと月くらいかかっちまっう。それならこの魔法陣で移動した方が、時間的にも効率がいい」

「なるほど。安全性はどの程度……」


 伊織がヒイラギさんに、魔法陣で移動した際の安全性について色々聞き始める。

 さすが心配症な伊織、説明書は最初から最後まで読む派だな。


 しかし、この魔法陣……。


「どっかで見たことがあるような……」

「どうされましたか、ヤヒロさん?」


 俺が考えていると、ひょこっとセージが顔を出してきた。


「おぉ、セージ。無事に戻ってきたか」

「はい。ヒイラギ様のおかげで、無事に合流出来ました」


 教会に呼ばれていたセージは、ヒイラギさんが迎えに行ってくれた。セージは帰省本能が皆無だから、誰かが迎えに行かなければ戻って来れないのだ。


「いや、この魔法陣……どこかで見たことある気がしてさ」

「魔法陣は様々なものに使われていて、素人目線だと違いが分かりませんからね。……かという僕も、その一人なのですが……」


 セージは恥ずかしそうに頬をかきながら答える。なるほど、どこかで使われていた魔法陣を、たまたま目にして覚えていだけか。それなら納得だ。


「そうだ、セージ。ヒイラギさんに聞いたけど、俺たちのこと色々と考えてくれてありがとうな」

「い、いえ! 僕がしたくてやったことですから!」

「ロキもありがとうな!」


 俺の突然の礼に驚いロキは、照れくさそうに鼻を鳴らしてそっぽを向く。


「……じゃあ、そこの兄ちゃんも納得してくれたところで。みんな魔法陣の上に乗ってくれ」


 伊織に説明し終えたヒイラギさんが、そう言って魔法陣に乗るように指示する。


「それじゃあ、魔法陣を発動するぞ」


 その時だった。

 小さな光がフヨフヨと飛んできた。


 ――――……なんだ? 昼間なのに、ホタル……?


 小さな光は、そのまま俺の指に止まる。


「……よくわかんねぇけど……お前も一緒に行くか?」




 そう問いかけた時、光は大きく発光した。

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