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勇者、剣と邂逅

 宮殿内にあるオープンテラス。


 レンガ造りの家が並び、地面が石で整備されている町。

 山、川があり、水を引き、農業を行っている畑。

 美しい街並み。

 

 ルイス達そんな、景色の見渡せる場所で、

 昼食を待っていた。

 

 少しすると、ピンク髪ロングツインテールの女の子が、

 食事を持ってきた。

 小さく切られているパンの上に、野菜が乗せられている。

 話しながら食べられるよう工夫がされた食事のようだ。


 食事を軽く摘まみながら、渡は話をする、

 自分が暮らしていた世界が安全で、

 食料や娯楽が整っていたこと。

 何も不自由なく暮らしていたこと。


 ルイスの姉と思われる老女と、どんな話をしたか、

 顔色はどうだったか、元気そうか、

 どんな場所にいたのか、そんな話をした。


 ルイス達は、興味深そうに聞いている。


 一通り話し終わると、ルイスが口を開いた。


 「渡様が居られた世界は、素晴らしい世界ですね」

 

 「争いなどは、無いに等しいですから、

 王女さんのお姉ちゃんは、満喫していたはずですよ」


 ルイスを安心させる為の言葉だ、家族と離れるのは辛いだろうからな。

 まあ俺も同じ境遇だけどな。


 「渡様にそう言って頂けて、少し安心できました」

 ルイスの瞳は、少し涙ぐんで見えた。


 バリトと、ミーティーは黙っている。

 笑顔ではなく、少し悲しそうな顔だ。


 バリトは、食事をほとんど取っていない、 

 渋い表情だ。

 表情と動作が一致している。


 ミーティーは、悲しそうなのに、

 紫の髪を揺らし、パクパクご飯を食べている。

 表情と体が、全然違う。


 渡は自分の疑問に思っていたことを聞くことにした。


 「僕は故郷にいつ、帰られるんですか」


 「渡様魔王を倒さないと、故郷に帰ることは出来ません」

 

 渡は怒りを感じた、自分の尊厳が害されていると感じた。

 自分で行動選択すら出来ない自分勝手な奴らだ。

 キレそうになったが踏みとどまる。

 

 「そうですか、魔王は強いんですよね」


 「渡様は剣を安全な瞬間に振るだけで大丈夫です、私たちが全力で敵を倒し、

 渡様には止めだけ刺してもらいたいのです」


 「魔王を倒せるまでに、どれくらいかかるんですか?」

 

 「渡様、私たちは嘘をつくことも出来ますが、

 真摯な気持ちで正直に答えます。

 最短で十年かかります」

 

 十年!! 二十六歳になってしまうじゃないか、

 戻ったところで仕事も出来ないだろう。

 人生の終わりだ。


 「若返って、僕の故郷には帰ることが出来るのですか?

 転送された瞬間の時間軸に戻ることが出来るのですか?」


 「もちろんです」


 胡散臭いくらい都合のいい話だな、

 本当か確かめる必要がある。

 

 「なぜ、魔王を倒さないと戻れないのですか?」

 

 「それは、魔王の持っている転送の鏡が渡様を故郷に送れる、

 魔道具だからです」



 「僕は、これからどうなるんでしょうか」


 「渡様には、これから勇者として修業して頂きたいのです」


 「修行、剣を振るだけで良いのに?

 それに、前提として僕に勇者は無理ですよ、

 ゆとり世代ですし、修行なんて無理ですよ、

 キツイこと嫌いなんですよ」


 「渡様には、勇者の剣に適性があるのです、

 渡様以外は、勇者にはなれないのです。

 お願いします、どうか国民を救ってください」


 ルイスは渡の手を握って、瞼を閉じ、頭を下げて懇願した。

 手の感触は柔らかく、良い匂いがする。


 ――勇者の剣に適性、その剣を扱えるのが俺だけってことか、

 それが本当なら俺には相当希少価値があるな。


 「本当に僕に適性があるのですか?

 間違いだと思いますよ。

 僕みたいな性格の奴は、

 勇者みたいなヒーロにはなれないと思いますよ」


 「必ずあるはずです、

 姉様がこちらの世界に転送された、方なのだから」


 「では、僕に本当に適性があるか試しましょう」


 「私達もそれは、試しておきたいことです、

 渡様が剣を抜かれる瞬間は、貴重な瞬間なので、

 見学者が増えても大丈夫でしょうか?」


 「人が多いのは、あまり好まないのですが」


 「関係のある、少人数だけでもダメでしょうか?」


 「わかりました」

 渡はしぶしぶ了解した。


 ――勇者の剣か、どんな物か気になるし、確かめよう。

 本当に適性があっても、こいつらの思い通り、動かないけどな。



********************




 渡達は宮殿から外に出て、勇者の剣があるという、

 祠に向かっていた。


 ――誰も話をしない。


 自分が芝の上を歩く足音すら聞こえる程の静寂。

 

 ミーティーはバリトに抱えられながら移動している。

 渡は疑問を晴らすことにした。


 「ミーティーさんは、なんで自分で歩かないのですか?」


 「んー、めんどくさいからよ」


 なんだそれ、もっと深刻な奴かと思っていた。


 「えっと……バリトさんは、なんで抱えてあげているんですか?」


 「はっはっは、癖だな」


 「癖? よくわかりませんが、仲がいいんですね」


 めんどくさいな、理由をふわっとさせるなよ、ちゃんと答えんかい、もういいや。


 渡は聞くこと考えることをやめた。


 

 渡達は、祠の前に着いた。 

 岩が積み重なって一つの建物になっている

 非常に雰囲気のある建物だ。

 

 ドクン……ドクン


 ――うっ、なんだ、心臓が跳ねる。


 渡は、自分の心臓の不整脈を感じた、

 しかし、いやな気分ではない。

 引き寄せられるように、渡は祠に入っていく。


 ルイスたちは、渡の足取りに疑問を感じながらも、

 やる気が出ていることは悪いことではないので、

 特に気にせず、渡の後を付いて行く。



 洞窟のような、薄暗く狭い道を進んだ先には、

 ドーム状の広い空間があった。

 少し肌寒く感じる空間だ。


 壁に飾ってある、暖色系の石が淡く光って、

 幻想的に見える。




 この空間の中心には魔法陣があり、

 魔方陣の中心には、銀色の美しい剣が刺さっていた。

 渡は、引き寄せられるように剣に近づく。


 「渡様、大丈夫ですか?」


 ルイスが渡の肩を触る。


 この瞬間、渡は自分が剣ばかり見つめていたことを自覚した。


 ――うわー、ビックリするほど、夢中になったわ、

 今の時点で、剣が慣れ親しんでいる感じがするもんな、

 これが適正って、やつなのか。


 渡が回りを見渡すと、人間の人数が増えていることに気づく。


 金髪のルイス、

 無精髭を生やした黒髪のバリト、

 紫髪のミーティー、

 新しく、青空のような髪色の男と

 火のような髪色の女、

 ピンク髪のメイド服を着た少女、

 人数は渡合わせて四人から、七人に増えていた。


 ――髪の色カラフル過ぎるだろ、こいつらの髪は、保護色って言葉を知らなかったんだな。


 ルイスはボーッとしていた渡に話しかける。


 「渡様、どうかされましたか?」


 「ああ、すみません、考え事をしていました」


 「少し心配になって止めましたが、

 大丈夫そうですね」


 渡は、新しく増えた人間の方を向いて、


 「いつの間にか人が増えていますね。

 いつから居たのですか?」



 「私達より前に、祠の中に居られたのです。

 渡様が気づかなかっただけですよ

 ここにいる全員が渡様と旅をする予定の仲間です」


 「そうなんですか」


 「軽く紹介しますと、赤い髪の女の子はフレイ

 水色の髪色はケルト、ピンク髪の女の子はマチル

 みな優秀な人間ですよ」


 「そうですか、皆さん、よろしくお願いします」


 ケルトと呼ばれた水色髪が、さわやかな笑顔で

 「渡君よろしくね」


 赤髪のフレイが、少し不愛想に

 「えっと、よろしく」


 ピンク髪のマチルが、たどたどしく

 「よろしく、お願いします」


 ルイスが剣の方向を手で促し、


 「では、渡様、勇者の剣を、抜いてください」


 「はい、わかりました」


 渡は魔方陣の中に入る。

 

 その時、渡の脳裏に悪戯心が芽生えた。


 ――剣を抜けるのは確実だろう、抜かなくてもわかる。

 ここでもし、僕が剣を抜けなかったら、皆どんな反応をするかな?

 

 渡は力を入れる振りをする。

 顔を真っ赤にして踏ん張る振りをする。


 「んーんー、あのー抜けないんですけど」


 ピンク髪が驚いた表情で聞き返してきた。

 その表情は、仲の良かった(かなで)に似ている気がする。

 「えっ、本当ですか」


 渡は平然と

 「はい、抜けないですね」


 ピンク色の髪の子は、愕然として

 地面に手をつき、涙目になりながら、

 「もう、終わりです」

 と言ったのだった。


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