死刑執行人勇者◆
「ルイスさん、最後までドラ・モリスさんの言葉が聞きたいです、話してからでも遅くないでしょう」
渡がそういうなら、しょうがないとルイスは諦めた。
「人間の青年よ、妻は、本当に優しい女性なのだ、花をめでるのが好きで、子供も動物も好きで、世界を愛している。
私は人間を食べていたが、妻は……一口でも食べたことはない。
さらった人間の大人は食べてしまったが、子供は食べていない、妻が反対したからだ、返す予定で、寝かせてある。
そんな優しい妻に免じて、私の命だけで、すましてはくれないだろうか。……頼む」
「渡様、口ではどうとでも言えるとわかってるだろうな」
「ルイス……でもこの人は嘘をついてないよ」
「人間……夫と話させてください」
ドラ・カリムがボルトに抑えられていた手を振りほどいて懇願する。
「最後にそのくらい良いでしょう、渡君もそう思いますよね」
キシロは渡に同意を求める。
「あっ、はい、良いと思います」
ルイスは、はぁとため息をついた。
ドラ・カリムの顔から大粒の水滴が流れて、地面を濡らしていた。
「あなた、ごめんなさい、私のせいでこんなことになって」
「カリム、君は何も悪くないよ、大丈夫だから泣かないで」
「でも……あなた……」
「カリム、私はもうすぐこの世から消えるだろう、最後に君の笑った顔を見してくれないだろうか?」
カリムは笑顔を作ろうとしているが、涙が溢れて、現状が悲しすぎて上手く笑うことが出来ない。
「消えるなんて……あなた、私を置いて行くの? あなたのいない世界で私に生きろと言うの? 無理よ……あなたが死ぬのなら、私も死ぬわ」
カリムは銀色の髪を振り乱して、
「人間の青年、私達も、子供たちも一生人間には手を出さない、食べたりもしないから、お願い助けて、その剣で夫を切るのはやめて、その剣は魂を切り裂いてしまう。
もうこの世に、生を受けることすら、永遠に出来なくなる。それがどんなに残酷なことかあなたは、わかっているの?」
「えっと……」
「渡様、耳を貸す必要はない。これは人間とドラ族との生存競争、こちらがが殺らねば、死ぬのは私達、渡様も理解している、そうだろう。
さあ、もうおしゃべりは良いだろう、渡様お願いします」
俺はこの人たちを殺すのか、本当にそれで合ってるのか? 話し合えば何とかなるんじゃないだろうか。
「ルイスさん、もう食べない戦わないって言ってるんだから、殺さなくてもいいんじゃないでしょうか」
「はぁ、渡様よう、もしここで、こいつらを見逃したとしよう、時間が経ってこいつらが、また人間を食べたら、あなたは、どう責任を取るつもりなんだ」
「責任って、そんなこと言われても取れないけど、でも人は誰でもミスをするし、チャンスをあげるのが優しさってもんじゃないのか?」
「まず一つ目、こいつらは人類じゃない、敵対種族だ。
二つ目、渡の国では三人殺したら死刑なんだろ、こいつ等は何倍も人を殺している、あなたの国の法律でも死刑は決定だろう。
三つめ、責任も取れないような男が、群れの選択に口出しをするな」
言葉は冷たく刃物のようだ。
「私たちは渡様にお願いしている立場だ、だけどなぁ、ここでお前がやらないと、死ぬのは私達なんだよ、頼むから、剣を振ってくれよ」
渡の胸倉をつかんでルイスは縋るような声をだす。
「ルイス、わかった、俺は君たちを手伝うと約束した……約束は守る」
ルイスの手を優しくつかんで、解いて、剣を取り出した。
「ドラ・モリスさん最後に一言ずつ話してください、そしたら……切ります」
モリスはフッと笑い、
「すまないな、先に行かしてもらう、私のいない第二の人生を君は……生きてくれ、それが私の最後の願いだ。嘘でもわかったと言ってくれ」
「そんな……わかった……」
カリムは言いたいことを飲み込むように、かすれた声で返事をした。
「なにカリムが生き残る前提で話をしてるんだ、殺すっつってんだろ。
渡様、よろしくお願いします」
「カリム先に行かしてもらうよ……青年私から切ってくれ」
喉がカラカラだ、なんと言葉を出して良いかもわからない、俺はこの人たちを今から切る、
たぶんかける言葉なんて一生探しても見つからないのだろう。
天国で幸せに生きてください。そう願いながら、渡は剣を振るった。
初めて感じる人を切る感触、骨の所でガツンと手ごたえを感じてたが、移動中少し練習した成果が出たようで、バリトに教えて貰った通り刃を立てて切り裂くことが出来た。
バリ・モリスの血が足元ににじみ出る。彼が再生することはなかった。
渡はモリスの死体からオーラの様なものがプカプカと浮かんでいるのが見えた。黄緑色のオーラは渡の勇者の剣が吸い込むように吸収していく。
カリムは「ああ……あなた、ああ……あなた」とひたすら呟いていた。
渡は剣をカリムに向かって振りかぶる。
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