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勇者の決意

 風呂に入り、飯を食べてから、会議室に入る、中には大きな丸い机があり、円を作るように椅子が配置されている。俺はもうお眠の時間であり、寝たい。

 目を擦りながら適当にマチルの横に座る、適当に座った……本当だ。改めて見回す、メンバー勢ぞろいで頭がカラフルだ。


 神妙な面持ちで、ルイスは口を開いた。

 「渡様が来たから会議を始める、まず現在の状況から説明する。アブソル王国は約十九時零零分に二か所同時攻撃を受けた、一つはマチルと渡が遭遇したリードルテンペス。Aクラスの魔物、数一匹、場所はイミシタン区中央広場付近、もう一つがドラ・モリスとその配下複数の襲撃。光信号によると、北門、結界、共に約百メートル近く破られているらしい。ドラ・モリス遭遇兵士三人が魂炎丸こんえんがんレベル三を使用、撃退に成功するが、百名の国民が生け捕りにされ連れて行かれた」


 緊張した空間……皆顔つきが鋭い、マチルを見つめると、視線が返ってきてニコっと笑いかけてくれた。


 「ルイス王女、結界は復旧出来ているのか?」

 バリトが聞く。


 「復旧作業は終了しているぞ、現在の議題は百名の国民をどうするかだ。助けるか……助けないか?」

 ルイスの表情は苦々しい。渡の方に顔を向け、重苦しく口を開く。


 「渡様……力を貸してくださいませんか」

 

 「えっ俺滅茶苦茶弱いけど、俺が行って何か出来るの?」 と聞くと、ルイスは「ドラ・モリスは神に愛されし夫婦の一人、魂の根源を断ち切れる勇者の剣でしか致命傷を与えられず、愛されしもの特有の回復力で体力負けが目に見えてしまう」と言う。


 「俺は止めだけで良いということ?」


 「はい、そうです。ドラ・モリスは人間が好物、百人という大規模な狩りは、初めてだけど、国の結界外では定期的に人間は狩られている。国民をこれ以上あいつの食料にしたくない。頼む……どうか、力を貸してください」

 

 美しいと思えるほどのお辞儀、ルイスは頭を上げない。答えを聞くまで上げるつもりはないという意思を感じる。

渡はマチルを見た、「渡さん、無理しなくても良いんですよ」と優しく彼女は言う。


 俺はさんざん自分の権利について訴えて来た、今は俺以外の人間の権利が脅かされている。そんなことはあってはならないと思う。

 リードルテンペスという魔物に俺の攻撃は通用していた。もしかしたら、俺でも出来るんじゃないだろうか……

 マチルは口を開かないが、優しい女の子だ、きっと助けてあげてと言う言葉を飲み込んで俺に言わないだけだろう。

 彼女は俺を庇ってくれた、命を張って。ここで嫌だと言えば彼女は軽蔑するだろうか……きっとしないけど、悲しい顔はするだろう。

 彼女見習って、彼女の笑顔がまた見たいから、俺も頑張ろう。


 「ルイスさん、俺の力で良ければ……よろしくお願いします」


 「本当か……ありがとう、渡様の命は私が必ず守るから」

 パッと笑って、ルイスは渡と握手を交わした。


 マチルを見ると、嬉しそうで、心配そうな顔をしていた。その気持ちだけで、嬉しかった。


 「渡様はもう寝ていいぞ、その他の作戦については、話し合って後に伝える、体調を万全にしてきてくれ」

 ルイスは視線を移して、「マチル、渡を部屋まで送ってあげて」と言った。


 

 マチルは廊下で、 

「私は渡さんが、ドラ・モリスを倒すことを手伝ってくれることに対して、すっごく喜ぶことは出来ません、心配です……渡さんは良かったんですか?」と聞いた。


「きっと良かったんだよ、これで……。俺はマチルが庇ってくれなかったら死んでたんだから、生まれ変わったつもりで、行くことにするよ」


 「そんな、私こそ渡さんがいなかったら、死んでましたよ、お互い様です」


 「確かに」と渡どや顔。


 お互い笑いあって、挨拶を交わして、部屋に戻った。


 ――きっと俺にも出来る、きっと……

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