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ニートの後悔と交戦 ◆

 マチルは咄嗟にしゃがみ、地面に手をつく、「セルフアース」地面が隆起して細長い棟がそびえ立つ。


 遠くの方で炎の魔法だろうか、火柱が上がっていた。


 「何故リードルテンペスがこの国の中に……渡さん逃げて、奴の好物は人間、遠くに走って、早く」

 黒い化け物から渡を庇うように身構える。地面に手を付き、隆起した土がマチルの腕と足を覆い、光沢を持った。


 ゆっくりと周りを観察していた、リードルテンペスは、魔導を使ったマチルに標準を合わせ翼をはためかせる。


 渡にも見える速度で、マチルに向かって飛ぶ。

 動けない、逃げられない、足が震える。


 リードルテンペスの回転、長い尻尾でアウトレンジからマチルを切り裂きにかかり、腕の土でガードした彼女は吹き飛ばされ壁に激突した。頭を打ち付け、血へどを吐く。


 尻尾は半分ほど彼女の腕に食い込んでいたらしく、血が流れていた。

 リードルテンペスは、自分の尻尾の血を舐めとる。ゆっくりとマチルに近づいていく。

 

 

 「渡さん早く、逃げて……」

 倒れこんだ彼女と目が合う、奏とまたしてもダブって見える。

 マチルの首がカクンと落ちた。


 また俺は逃げるのか、良いのか逃げて、もう後悔はしたくない。あの時奏を助けなかったら自分があんなにも後悔するなんて知らなかった……今は知っている。マチルを助けるため動かないと絶対に後悔する。結果は関係ない、動くことが大切なんだ。俺はここで逃げたら、一生逃げるだけの人生で終わる。動け、俺の体、動け、俺の足、動け、俺の腕、動け、動け、動け、動け。


 歯を食い縛る、食い縛りすぎて歯が割れた、痛みで恐怖から解放される。


 ポケットに入れていた勇者の剣をリードルテンペスに向ける。長さの調整をする訓練は地味にしていた、出来るはずだ。

 先端を相手に向けて伸ばすだけで初見の相手には勝てるとバリトは言っていた。


 手が震える……標準が合わせられない、リードルテンペスは、もうマチルのすぐそこだ、止まれ俺の腕。止まらないと合わせられない。くそが。

 目に涙がたまる、不甲斐ない自分に腹が立つ。

 震えて剣を落とした、慌てて拾う瞬間に、レンガが目にはいる。


近くに落ちていたレンガで剣を支え、震えを抑え、標準を合わせた。

 剣を伸ばす、光のような早さでリードルテンペスの胸に突き刺さった。


 「グェーー、グエ」

 大きな黒い頭をこちらに向けて、渡を見ている。

 剣が刺さったまま、こちらに歩いてくる。

 赤黒い血を滴らせながら、こちらに歩いてくる。

 足取りはゆっくりだが、こちらに歩いてくる。

 腰が抜けて足が動かない。

 今度は力が入り過ぎて剣から手が離せない。

 


 渡との距離目算、三十メートル……二十メートル……十メートル……五メートル、尻尾で渡を切り裂きにかかった瞬間――


 ――目の前で尻尾が切り飛ばされた。顔面に血飛沫がかかる。


 「良くやった渡、お前はやれる男だ」


 バリトは、リードルテンペスの首をはね飛ばし、マチルに駆け寄っていく。

 マチルを抱え、走って何処かに行ってしまった。


 少し遅れてフレイがやって来た。ハアハアと息を吐き渡に駆け寄る。「怪我はない?」と渡に聞いた。首を縦に動かす。


 血で染まった両手で剣を握りしめる渡を見て、血がつくのも気にせず、フレイは渡の手を握って暖かな言葉をかける。


 「もう大丈夫よ、安心して……ほら力を抜いて、ゆっくり、ゆっくりと……ゆっくり、ゆっくりで良いから」

 親指、人差し指、中指、薬指、小指、一つ一つ、固まった指をほどいていく、剣を離した頃には体の震えは収まっていた。


 「私の友達を助けてくれてありがとう、喧嘩別れになったら悲しくて泣いちゃってたわ、本当にありがとう」

 

 「まだ……助かっ……たか……わから、ない」

 片言になってしまった。


 「大丈夫、バリトが姫様の所に届けてくれる、姫様なら治してくれる。大丈夫よ」

 国の軍隊と思われる兵士たちがやって来た、周りの住民に事情聴取と、事態を収めるために働いている。大勢の人間が来たことで安心感が増した。


 「歩ける?」

 起き上がろうとしたが、うまく力が入らない。

 「おんぶしてあげようか?」

 笑いながら挑発するようにフレイは言う。

 この日常では感じられないフレイの優しさ、劇場版ジャイ〇ンのそれである。


 「歩ける……怪我もしていないし、俺は大丈夫だ」


 「そう、それは、良かったわ宮殿に戻りましょう」

 

◆◆◆


 宮殿に戻ると、ルイスとマチルが庭で待っていた。

 「渡さん、生きてますか」

 マチルがこちらに駆け寄ってきて渡の周りをくるくる回る。


 「いや、見てわかんない?ゾンビに見えるの?」


 「あちゃー、ゾンビですね目元とか」


 「うぉい」


 「嘘です、嘘です、無事でよかった」


 「マチルさんは、大丈夫なのか?」


 「はい、元気いっぱいです」

 手をあげて元気アピール、ぶりっ子も相変わらずである。


 「渡様、手を貸して」

 無理やり手を握られる、ポワポワと暖かい光が身体中にめぐっている気がする。

 「歯が欠けているようだが、大丈夫そうだな」


 ルイスの喋り方は、荒いものに固定されつつある、三ヶ月の間に皆に周知させたようだ。


 「帰って来てすぐで申し訳ないけど、話がある、会議室に集まってくれ」


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