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勇者と導きの英傑達

ヒトラーは、責任感のある男だった。

人は責任を押し付けあう。

選択とは、責任をともなうものだ。

 叶えた夢の世界の心は、枯れ果てていた。


 ◆◆◆


 夢を見る。

 剣を握っている夢だ。

 羽のように軽い剣を振っている。


 洞窟、森、火山、氷河、隠れ家、城、砂漠、様々(さまざま)に美しく(いろど)られる景色の中で、仲間と共に戦う。


 人魚、妖精、ドラゴン、雪男、魔女、兵士、大蛇、ドラキュラ、敵を切り裂き、赤い返り血を浴びた。


 仲間がまた一人いなくなった。


 そんな夢も、目覚ましの音と共に、(はかな)く消え失せていく。

 

 ◆◆◆

 

 朝食を食べて登校する。

 青年の学校は、現在いじめ問題の真最中である。

 青年は、見て見ぬ振りを決め込んでいた。

 

 正しくないなんてわかってる。

 正す労力をかけたくない。

 それだけだ。

 

 

 下校中、見たことの無い骨董屋を見つけた。

 妙に気になり入ることにした。

 


 「はい、いらっしゃい」


 店員は、老女だ。

 机に肘を付き、指でくるくる髪を(もてあそ)んでいる。小綺麗で、印象が良い。金髪に白髪が、混じっていて、昔は綺麗な髪、そんな想像が容易に浮かぶ。


 この人が若い時に会っていたら、エロい目で見てしまったに違いない。(確信)

 


 「お前さん、まさか……」

 老女は慌てた声をだし、いきなり手を捕み青年の手を水晶玉に当てた瞬間――


 ――輝きを放った。


 光は白く神々しく感じる。


 「水晶玉が、反応しておる。やっと見つけた……やっとだ……やりました……お父様」



 老女の目から涙がこぼれる。

 一粒、また一粒、「やった、やったぞ」と何度も繰り返す。


 青年は身を引いた。

 えっ、いきなり泣き始めたんだけど。


 老女も俺をエロい目見ているな。若い時会いたかったという後悔の涙か……(妄言)


 青年は恐る恐る口を開く。


 「あのー怖いのですが、どうされたんですか?」


 「すまないねえ……年を取って涙もろくなっただけだよ」

 老女は涙を袖で拭き取った。


 その理屈はおかしいだろう。

 さては……俺のことを馬鹿と思っているな?

 許さんぞ。


 「その玉は何なのですか?」


 「これはね、勇者になる資質が見られる玉だよ」


 「……」

 ヤバイ人に会ってしまった。


 ――俺と同じ妄想族発見、同族嫌悪、早めに退散するか。



 「へーそうなんですね、僕勇者なんだ、えへへー」

 青年は、(ひたい)に手を当て、


 「勇者は勇気を持ってこの場所を退散しまーす」

 この場所を離れようとするが――


 ――片手は老女に固く握られており、逃げ出すことが出来ない。


 老女は青年のポケットに何かを入れた。

 青年は気づいていない。


 「まあ、悪い話だけじゃないんだよ。この婆さんの話を少しだけ聞いてくれないかい?」


 老女は青年を凝視する。

 青年は戦慄した。



 ――このばあさんの強すぎる瞳の力は何だ。



 その瞳に、覚悟、焦燥、使命、悲哀、希望、の感情を感じ取った。

 青年は、何故瞳を見ただけで相手の感情を理解したような気持ちになったのかわからないまま、


 「わかりました、話だけ聞きます」


 瞳の圧力に負けていた。










 「その絵を見てごらん」


 老女は壁に飾ってある、ファンタジー感が溢れて、日常に魔法が溶け込んでいるのに現実的で、人々が暮らしている空間を切り取ったと思えるほど精密で、臨場感溢れ、愉快な気持ちにさせてくれる絵を指差す。


 「綺麗な絵ですね」


 絵の近くに行き、じっくりと眺める。

 青年は、不思議な違和感があった。

 ――何か、変な感じがするな。


 「そうだろう、それは私の故郷でね」


 「へーそれは凄いですねー」


 絵の中を故郷と言い始めるとは、俺よりハードな妄想家だ。もう、叫びながら走って逃げようかな……しないけど。

 

 「隣にも絵があるだろう、それを見てどう思う?」


 そこには、楽しそうに暮らしていた人々が、虐殺され、泣き叫び、悲痛に耐えている絵があった。


 「えっと……あんまりいい気分にはならない絵ですね」


 「もしこの絵の中の人達を助けることが出来るとしたら、君はどうする?」


 青年は、この質問の意図が良くわからなかったが、

 老女の求めている答えは、察していた。


 そして青年も鬼ではないので、少しの助力で悲惨な光景から、ファンシーな絵の人々を助けられるのなら、力を貸すのもやぶさかでないと思い。更に、老女への警戒心もあいまって、この場をやり過ごす為だと思い、


 安易に言葉を発してしまった。



 「助けますね」



 「言ったね、助けると」



 老女は、大層嬉しそうな顔をして――


 ――指をパチンと、鳴らした――


 ――突然、青年の足元に幾何学で、魔方陣のような模様が現れる。

 それは薄緑色の光を強烈に放っていた。




 青年は、動揺する。


 何だこれは、どんなトリックだ?



 魔方陣の中から垂直に延びている薄緑の光を叩くが、光が壁のようになって、外に出ることは出来ない。



 


 老女は、膝と手を地面につき顔をあげ、

 青年に願いを込めて、一方的に語る。




 「あんたは今……助けると言った。何も考えず発言したのかもしれないが、言葉というのは不思議なもので、想像できないこと、完全に有り得ないことは発しない物だ。

 私のことは、恨んでもらっても構わない。だけど、王国の人達のことは恨まずに、助けてください」


 ――願いの言葉を述べ終わり、地面に頭を付け土下座をした。


 老女の言っていることが、整理出来ていないにも関わらず、青年の体は光の粒となり、空間に溶け込んで見えなくなった。



**************




――アブソル王国――


 


 この国には、血染めの占い師という、人類にとっての脅威を的確に予知するものがいる。


 占い師は国王に、告げる。


 「人間が、滅びる未来が見える。二十年後には、人間は絶滅する」


 「お前が言うならば、本当なのだな、占い師よ」


 国王は、鋭い眼差しを向けた。


 「ああ、本当だとも、直接見せてやろうじゃないか」



 占い師は、国王の頭に手を当て、直接映像を見せる。



 王国内の人間が泣き叫び、逃げ惑い、それでも破滅への道筋は微塵もぶれず、魔物に食い散らかされ、イタズラになぶられ殺される。


 そんな映像だった。


 あまりにもおぞましい光景に吐き気を覚えるが、国王は強い意思を持って、頭を回す。

 何故このような状況になってしまったのか、把握するために。


 人間はこの世界で、脆弱ないきものだ。

 にも拘らず、何故絶滅することがないのか……魔導による強力な結界が国を守っていること。

 他の種族たちより繁殖力が高く、戦闘時の球数が多いこと。

 それらが、生き残ることが出来ている理由に繋がっている。


 だからこそ、兵士を育む為の拠点を侵略されては、話にならない。


 ――結界内に……我が国の結界内に、何故魔物が出現しているのかを、探らなければならない。



 「その疑問、答えてあげようじゃないかい」



 占い師の声が聞こえ、映像が移り変わる。


 そこには、大きな鏡を通り抜けていく、数々の魔物達の光景が。


 なるほど……鏡の魔道具により、魔物が侵入できているのか。


 占い師は手をかざし終わり、話しかける。


 「どうだい、把握したかい?」

 

 国王は、少し頭を抱えながら、



 「ああ……迅速に対策を考えよう」




************




 国王は優秀な人材を集め、謁見(えっけん)の間にて、発言をする。

 皆のやる気を出させねばならない。

 国王は自分に気合を入れた。


 「皆に集まってもらったのは他でもない、このアブソル王国が、未曾有の危機にさらされているからである。

 百聞は一見に勝てないものだ、占い師、全員に見してやれ」



 占い師はトボトボ歩きながら、

 「人使いが荒いねぇ、結構疲れるんだよ、

 さあ、全員順番にこっちに来な」



 並べられた椅子に座っている、総勢約二十名が、占い師の前に並び、直接脳に映像を送られる。



 映像後に、膝をつく者、呆然とする者、目付きが厳しくなる者、悲しむ者、多種多様な行動を見せる。


 その中でも、一番年若い女の子、マチルは、

 胃の内容物を、全て戻してしまった。

 


 「皆怯むでない、まだ作戦は始まったばかりだ。

 我が解決策のないまま、皆に現実を知らせるはずないだろうが!!」


 立ち上がり、通る声で発言。



 皆の瞳に、覚悟と、希望の光が宿る。



 「まず最初に、この魔物の侵略は、魔王キリステルによるものだと判明した。

 やつは鏡の魔道具を使い、魔大陸に存在している魔物を、我が国の結界内に、送りつけてくる。

 つまり、魔王キリステルを殺害、もしくは、鏡の魔道具を破壊することで、この災難は、防ぐことが出来る。


 皆の知ってのとおり魔王キリステルや、紅き光沢を持つ龍ドラゴニクス等の、神に愛されし存在は、魂の力の次元が違うため、人間の力で攻撃をしても、かすり傷程度しか付かず、その傷さえも瞬時に回復してしまう。

 さらに、魔王キリステルは魔道具のありかを隠しており、見つけることが出来ていない」


 王様は、一呼吸置き、高らかに言った。


 「完全に対策出来ないように見えるが、魔王キリステルを倒す方法がある。

 我が国には、魂の根元を断つ魔剣……勇者の剣が存在する。

 勇者の剣によって、魔王を討伐する」



 「国王、発言よろしいか?」


 無精髭を生やした、体格の良い男が声をあげる。


 「許可する」


 「その剣は、我々剣士の中でとても有名な剣だ。

 私も含め、持つことすら叶わない魔剣。

 使えるものに都合がついたと言うことだろうか?」



 「良い質問だ。

 結論から言うと、存在しているのは確かだが、発見できていない。

 皆災難の内容、作戦目的は理解しただろう。

 これから一人一人に、使命を告げる」





 国王は少しだけ、表情を歪めながら声を発する。


 すまない……我が娘よ。一番つらい立場を任せてしまう父を許せとは……口が裂けても言えない。

 我に力があれば、こんなことにならないのに……くそが。



 「我が娘、第一王女……カレミス・レバトニア」

 

 綺麗な長い金髪を指でくるくると弄んでいた女性が声をあげた。

 「はい、お父様」


 カレミスは、国王の前に立つ。


 「カレミスには、この世界と違う世界に、向かってもらうことになる」


 聡明なカレミスは、ここで理解をした。


 「なるほど……別世界でわたくしが勇者の剣に反応する不思議な水晶を使い、勇者を探せばよいのですね」


 さすが我の娘だ。

 国王は大きくうなずき、


 「我が愛しき娘、カレミスしか一人で転送魔法を発動することが出来ない。カレミス……やってくれるか?」


 カレミスは胸に手を当て大きくうなずき、


 「わたくしの命一つで、国民の命が救われるのなら、喜んでお引き受けします。

 ……お父様、一つ質問よろしいですか」


 「何でも聞くが良い」


 「わたくしは、旅だったあと……この国の土地を再び踏みしめることは出来るのでしょうか」



 国王は拳を握りしめながら言った。


 「この国から別世界に転送出来る者は、一人のみ、別世界からこの世界に転送出来る者も、一人のみだ」



 「そのお言葉だけで、十分でございます」


 カレミスは、頭を下げ、後ろに下がっていく。





 「カレミスは、生涯をかけ、勇者を必ず見つけ出すだろう。

 そして勇者がこの国に転移した際の、教育、懐柔(かいじゅう)、及び神に愛されし存在の討伐を、ここに集まった皆でやってもらう」


 国王は、呼吸を整え、






 「我が娘、第二王女、ルイス・レバトニア」



 ルイスは、カレミスより少し短い金髪なびかせて、前に歩く。


 「はい、お父様」


 「ルイスには、勇者が転移した際の身体の状態の確認、王族の瞳をもって、勇者の心理状態の確認、その優れた回復魔法を使い、日々の健康管理。

 そして、勇者にとって心許せる、姉のような存在になり、勇者を懐柔(かいじゅう)するのだ」


 「はい、わかりました」

 ルイスは、頭を下げ後ろに下がる。







 「剣士長、バリト・フェデラー」

 

 恵まれた体格を使い、無駄な動きなく、無精髭を少しさすりながら歩き、膝をつく。


 「はっ、国王」


 「バリトには、勇者の剣術の師匠となり、

 時に厳しく、時に優しい、尊敬できる、

 勇者にとって父のような存在に、なってもらう」


 「了解した」

 バリスは、素早く後ろに下がった。







 「魔導師長、ミーティー・ゴールド」


 紫色のローブを揺らし、

 繊細そうな紫色の髪を解きながら、

 前に進む。


 「はい」


「ミーティーは、魔導の師匠となり、勇者が何でも悩みを話せる母のような存在になってもらいたい」


 「わかりました」

 ミーティーは、ゆっくり返事をして、後ろに下がる。






 「精霊剣士、ケルト・フリーマン」


 「はっ、国王様」

 線の細い体躯、爽やかで青空色の髪を揺らし、前に出る。


 「ケルトには、毎日勇者の昼食を用意してもらい、共に食べてもらう。

 旅の際、勇者の栄養管理、そして、勇者と共に楽しい時間を過ごせる、兄のような存在になってもらいたい」


 「了解しました」

 ケルトは、滑らかに後ろに下がる。





 「剣士見習い、フレイ・バイエアル」


 燃えるような、ふわふわの赤髪を持つ少女が、少し緊張した面持(おもも)ちで、前に歩く。 

 「はい、王様」


 「フレイは、勇者と共にバリトの元で剣の修行をしてもらう。

 人生と言うものは、ライバルの存在が面白くしてくれるものだ。

 勇者の良きライバル、時には友達として、勇者を支えてくれ」


 「わかりました、精進させて頂きます」

 尊敬できる国王からの、始めての言葉に、

 フレイは心を震わせた。

 



 「魔導師長見習い、マチル・エルゾート」


 長いピンクの髪を、ツインテールで結ぶ、顔色の悪い女の子が、声をあげる。

 「はい、私です、王様」


 「マチルには、勇者の側付きをやって貰いながら、ミーティーの元で共に、魔導を学んでもらう。

 男と言うのは、単純なもので、守ってあげたいと思えた瞬間強くなれるものだ。

 マチルは、勇者の妹のような存在になってあげてくれ」


 「上手く出来るかわかりませんが、懸命に励ませてもらいます」


 マチルは、トコトコと、後ろに下がった。





 「勇者と綿密に関わるメンバーは以上となる。

 勇者と接するときの注意点だが、

 勇者は、我々の世界とは、関係ない世界から、連れてこられた被害者である。

 勇者は、我々のことを憎しむ可能性すらある。

 しかし、勇者には身を粉にして戦って貰わなければ、我々に勝機はない、

 ならば、どうすればいいのか?


 この国の者は全て、

 勇者に好かれる努力をしなければならない。

 皆勇者を本気で好きになれ、演技ではなく、本心から。

 本心から、愛し、愛される努力をしろ。

 そして、ここにいる全ての女性人に告げる。

 勇者が体を求めてきた場合、自分の価値を吊り上げるだけ、吊り上げてから、求めに応じるのだ。

 勇者が、一人抱く度に、我々の国の、生存率が十パーセント上がると思え。

 女性人は、手段を選びながら、勇者を籠絡(ろうらく)しろ、

 勇者を自分の虜にするのだ」


 一人の女性が反論の声を上げる。



 「それは、おかしくないですか、人権侵害では?」


 

 「わかった、じゃあ君はやらなくていい、

 これは、我からの願いだ、疑問を持つもの者もいるだろう、しかし、反論に耳を傾けては話が進まなくなる。

 今は一刻を要する。反論があっては、勇者に失礼を行いかねない。

 その一つの歯車の狂いが、国を滅ぼしかねない。疑問を持つものは、出ていって構わない」

 

 「私は失礼します」

 反論した女性は、去っていく。


 国王は深く呼吸をして。


 「それでは、話を続けよう、新たに結成された、調査団についてだが……………




 ****************





 宮殿の庭に、無数の魔導師が集う。

 時は夕暮れ、オレンジの太陽が感傷を誘ってすら感じる。

 地面には大きな石盤、近くには勇者の剣を(まつ)(ほこら)がある。



 第二王女のルイスは、悲しそうに言う。


 「姉様……ついに出発の時が来たな」


 第一王女、カレミスは、長い金髪を弄りながら、


 「ええ、勇者を見つけることなんて、ぱぱっと終わらせるわ。

 余裕があったら、誘惑してメロメロにしてから、この世界の手伝いやってもらうから、

 ルイスは、心配しないで待っていてね」


 「さすが姉様、頼もしいな、

 姉様もこちらの世界の心配はせずに、向こうの世界を楽しんできてくれ」


 「ええ、おおいに楽しむわ、また来世で会いましょう」


 ミリスとカレミスは、包容を交わした。



 国王はカレミスに、声をかける。


 「カレミス……私の子供として、生まれてきてくれて、ありがとう。

 父として、カレミスには幸せになってもらいたい。

 勇者を探しながらも、カレミス自身も、幸せを掴む努力を懸命にしなさい」


 「私も父様が父親で本当に良かったわ、来世も母様と一緒に私を生んでくださいね」


 「ああ、約束しよう」


 国王は、カレミスの頭をゴシゴシと、撫でた。




 カレミスの母親、王妃は号泣している。


 「ああ、カレミス、私の愛しきカレミス、歯磨きは、しっかりしなさいね、三食食べて、しっかり寝るのよ。

 貴方は頑張りすぎる所があるから、体調管理に、十分気を付けてね。

 それと……それと……」


 「お母様、小さな子供じゃないのだから」


 「そうね、じゃあ最後に、幸せに、なりなさいね」


 「はい、必ず」


 カレミスと王妃は、ギュッと抱きあった。


 お父様、お母様、ルイス、今までありがとう。

 故郷に帰ることはもう出来ないのか、悲しいな、悔しいな、つらいな。

 何でわたくし……何故、何故、なぜ、行きたくない。一生皆に会えないなんて嫌だ。本当に嫌だなぁ、あぁ……なんでわたくしなんだろう。


 ダメだわ……わたくしが始まりなのだから。

 カレミスは、瞳にたまってきた涙を、手でゴシゴシ拭いて、魔方陣の上に乗る、


 そして、違和感を覚えた。


 ――何かこの魔方陣の上、変な感じがするわ。


 魔導師達の詠唱が始まり、魔方陣が、薄緑色輝きを放ち始める。

 

 ――必ず勇者を見つけ出す、必ず。



 決意を固めこの世界から、カレミスは旅立ちを果たした。

 彼女が立っていた魔方陣が刻まれた石盤ごと、この世界から転移した。

 

 残った国王家族三人は、涙で頬を濡した。


 太陽はもう見えなくなっていた。

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