94.対価
「では、今から言う材料を用意して頂きましょうか」
「早くして頂戴」
「……はぁ」
カッドのためならなんだって用意出来る。どんな物でもドンと来い、よ。
「ならば奇眼鳥の嘴三キログラム、猛禽獣の爪二十グラム、飛竜の逆鱗五十グラム、玄武の甲羅二十キログラム、ゴブリンの膵臓百キログラムを用意して頂きたい」
「は、はぁ!? あんた、何言ってんの?」
「いえ、ふふっ。必要な物を提示しただけですよ。」
「そんな物、普通は用意出来ないわよ!」
「ならば諦めて頂くしかありませんねぇ」
「くっ!」
歯噛みする私を見て、ゴブリンが一言。
「だからやめておけと言ったろうに」
上げて落とすなんて、なんて性格の悪い。
一年もあれば全て集められるだろうけど、制限時間は後三、四十分。
「仕方ないわ。今回は強化は諦める。蘇生だけお願いするわ」
「わかりました。では、蘇生だけ、やっておきますね」
「ええ。構わないわ」
そしてカッドを預ける。
「おや、これは! 主、どう致しますか?」
「問題ない。少し待っておれ」
何か問題でもあったのだろうか。
「小娘。席を外せ」
「……カッドの蘇生、よろしくね」
「勿論だ」
その力強い言葉を取り敢えずは信用することにして、私は部屋を出た。カッドが蘇生するならばそれでいい。
「む! 貴様、何者だ!」
「私?」
目の前を通りかかった豚人が私に槍を向けて威嚇する。
「そうだ。白肌、ここは貴様等などが入って良い場所ではない!」
「私は『統率者』の客人としてきたものよ。弟が彼と知り合いなのよ」
「白肌が王の客人だと? 笑止。吐くのならばもう少しマシな嘘を吐くのだな」
「そう言われてもねぇ」
どうしよう。困った。
これだけ警戒心が強いことは本来褒められてしかるべきなんだろうけど、警戒されなくても良いはずなのに警戒される側としては鬱陶しいことこの上ないわ。
私とゴブリンが一緒にいたところを見ていたのとかはいないのかしら。
「何か証明出来る物でもあれば良いのだけれど」
「あるのか?」
「ある訳ないじゃない」
敢えて仮定形で言っても通じないなんて。
「はっ! それこそ貴様が王の客人などでは無いと言うことの証左。そのような戯れ言が通じるとでも思っていたのか!」
「単に忘れていたという可能性もあるわよ?」
「王がそのようなことを為される訳があるまい」
「そうかしら?」
たかがゴブリンにそこまでの知性を求めるのは間違っていると思うのだけれど。
「で、貴方は私に何を求めるの?」
「死ね」
「いきなり!?」
「ああ、死ね。大いに死ね。この地に足を踏み入れた罰をその両肩に背負い、今すぐこの場で死ね」
「色々と聞かなくてはならないこともあるのではないの? 侵入経路とか。全く。そういうところが行き届いていないわね」
「そんなもの『死霊属性』で食屍鬼にして使役すればいくらでも分かるわ。これだから白肌は」
「なんですって?」
「なんだと?」
私が掴み掛かろうとした時、後ろから声がした。
「何をやっておるのだ、お主等は」




