91.希望への距離
――引き続き姉様視点――
「|ボヴォブウボォヴォウヴォボ《偉大なりし王の砦だ》」
「ここが……」
巨大な砦には、走って五分もかからなかった。
意外と近いじゃない。
「ヴォウヴォボヴォ。|ブヴォブヴォヴォウヴォブッブヴォ《普通に走って数十分はかかるのに》……」
「なに?」
「ブゥモ」
「そう。なら、早く案内して頂戴」
「……ブゥ」
オークは砦の口を固めていたゴブリン十匹の内の一匹と中に入っていった。
入場手続きかな?意外としっかりしている。
私は背負っていたカッドを下ろし、傷が付いていないことを確認してから前で抱えた。
ここらには殆ど木も無いし、枝でカッドが傷付くことはないでしょう。
カッドに傷なんて付いたら大変。その時は私が責任を取って養ってあげるけど。
「|グギグギャギャギ《王がお会いになられるそうだ》。グギャギャググ」
お会いになられる。
かつて東大陸で使われていたとか言う、二重尊敬を使っているのね。
「ありがとう。それじゃあお邪魔するわ」
私はカッドを抱えてゴブリン共の中を突き抜けて砦へと入った。
さっき私に話しかけてきたゴブリンが行く手を遮った。
「なに?」
「グギャギグギャグ」
「そう、ならすぐに王のところに連れてって貰える?」
「グギャグ」
どうでもいいから早くして欲しい。
「グギ」
「わかったわ」
歩幅の小さいゴブリンを後ろから追い立てるように歩く。
――姉様
その時、カッドの声が聞こえた気がした。




