82.観戦者
――リョウスケ君視点――
秩序を司る神を祀っている神殿は混沌に満ちていた。
「何があった!?」
「あいつは何だよ!」
「何?イベント?早くね!?」
「訳わかんねぇよ!」
「β組は持ち堪えてるらしい」
「マジで!?あれでゴブリンなの!?」
「皆さん!落ち着いてください!落ち着いて!……落ち着けっつてんだろーがぁ!」
神官の喉を犠牲にした怒鳴り声で一瞬視線が彼に集まったものの、すぐに喧噪が戻った。
「あいつの情報は?」
「超強いゴブリン。物理攻撃無効、魔術攻撃無効、状態異常無効、鑑定無効」
「無敵やん」
「……バグ?」
「知らん。解析班の公式情報らしい」
「解析班は運営関係ないし、公式も非公式もないだろ」
「つかどこで手に入れた?その情報」
「あのモンスターのスレが立ってる」
その会話を耳にし、早速スレを漁ろうとすると、こんな会話が耳に飛び込んできた。
「司教閣下、喉飴はいかがですか?」
「貰おう。ったく、なんなんだ、あいつらは……って苦っ!」
「も、申し訳ありません、胃薬でした」
「……」
……可哀想に。
「これは……」
「なにっ!?」
「ひぃっ!」
急に神官達と神殿騎士、それに何人かのプレイヤーが弾かれたように一点を見つめ、臨戦態勢を取った。
神官達は手にした杖を構え、詠唱を始めた。
神殿騎士達は流れるような所作で一斉に抜刀し、全員が一方向へと構えた。
プレイヤー達は殆どが怯えるだけだったが、中には瞬時に臨戦態勢を取った者もいた。
「何が?」
僕の疑問はすぐに解消された。
ドゴォォォオオオオオーーー、と音がし、リスポーン時特有の、浮遊感に包まれたからである。
十秒経って復活すると、辺りの惨状に目を見張った。
何もなかった。
ずっと前からそうあったかのように、民家に囲まれて、一本の道が抉れていた。
小石や塵一つなく、ただ石畳が消え、土気色の道が続いていた。
道の先では、例の巨大ゴブリンと、よく分かんないけどかっこいい服を着た男の人が戦っている。目で追えない。
あれはステータスに物を言わせたゴリ押しでは到底辿り着けない強さだ。
さっきまでの僕のように、ユニークスキルを使ってデスペナを打ち消す攻撃力を手に入れたような戦い方とは違う。
彼らは、先を読みながら、さらにその先を、どこまでも先を見ながら戦っている。
ただ、見ているしかなかった。
鳥肌が立った。




