81.『統率者』の冒険譚
皆さんお久しぶりです。
今日から復活です。
――『統率者』視点――
蟻人共を引き連れて前線基地に戻った。
「へ、陛下ぁ!?」
慌てたように砦の門番は跪き、門は内から開けられる。
我らが門を潜れば、全ての兵士が跪いて道を作り、その先を進んで行くと、慌ただしく馬人が現れた。
「陛下!?今までどちらにいらしていたのですか!?」
「うむ。少し、人の街にいた」
それを聞くと我が軍師は眉を顰めて不満顔になった。
「そろそろ作戦決行の時期になるので不用意に出歩かないように申し上げたはずですが?それに、街までは少しで済ませられる距離ではありませんよ」
「すまんすまん。面白い小僧に会ってな、其奴に言われて少し街で暴れてきてやったのだ」
「全く。仕方ありませんね」
この馬人の軍師は我に甘い。
なんだかんだ言って我のすることは大体許してくれる。そして、頭脳明晰で作戦立案などに物凄く優秀だ。此奴がいるから我は、我らはここまで来れた。
「それで、その面白い小僧というのは?」
「うむ。其奴は領主の息子であったよ」
「なんと!?なのにそれに唆されて町に入ったのですか!?」
「まあ、その話は部屋でゆっくりしようではないか。それよりも、この蟻人共を休ませてやれ。我が無理矢理連れてきてしまった故にな」
「わかりました」
それから此奴は少し考える素振りを見せ、近くにいた兵士へと命じた。
「おい。彼らをB区画の休憩所へと案内しろ」
「はっ!」
「凄いな。おぬし、全ての配置を覚えておるのか」
「いえ、配置を覚えているのではなく、配置を決めた時にどのように決めたかを覚えているのです」
「……つまり?」
「配置は籤引きでやった訳ではありません。敵の侵攻予想ルート、砦の構造上の弱点、種族の特性その他諸々を加味して決めたのです。その思考を今は模倣しただけです」
「……なるほど」
全部覚えた方が早いと思うのだが。
「それは良いのです、陛下。すぐにその街で暴れた件、詳しくお聞かせ願いましょうか」
軍師の目がキラリと光った。
「取り敢えず、部屋に入ろうか」
少しは怒っているようだ。
部屋に入ると、そのすぐ後から軍師が続いた。
我が部屋のソファに腰掛けても軍師は向かいのソファに座ろうとしない。
「良い、座れ」
「失礼いたします」
此奴は、こう言ったところがしっかりしている。
「それでは陛下。詳しくお聞かせ願いますよ」
「我に声を掛けてきた小僧は、領主の息子だった。未だによく分からない概念なのだが、妾腹という奴らしい」
「はぁ」
「其奴を『鑑定』してみるとその称号はなく、代わりに渡り人、という称号があった。数日前に占い師達の予言にあった戦闘狂共のことらしいな」
「なるほど」
「『看破』を併用してみると」
「渡り人が消え、領主の妾腹、のような称号が出てきた、と」
「その通り」
此奴と話をすると早く進むから楽しいな。
「其奴は我に街に入り、彼奴等を攻撃しないか、と誘ってきた」
「彼にとっては彼らが邪魔だったのでしょうか」
「それは知らんが、其奴等は無限に復活した」
「無限に……」
此奴は彼奴等を脅威と認識したらしい。
「彼奴等は諦めなかった。五巡目くらいに達した時、彼の街の騎士団とやらが乱入してきた」
「騎士団、ですか」
「其奴等とほぼ同時に魔術師団とやらが、機械兵共を連れてきた」
「……機械兵」
「だから蟻人共を召喚したのだ」
機械兵共はいつの間にやら壊れていたが、あれは直るのか?
作れるのならば直せるのであろうが。
「で、我がおぬしより教わった魔術で怪物を召喚すると、其奴等の中から最も強い物が怪物を消し飛ばし、そのまま城壁の一部まで傷跡を残していた」
「……陛下。あれは仮にも神に名を連ねる者共の眷属です。軽々しく召喚していると体に負荷がかかりすぎるので、お気を付けくださいと常々口を酸っぱくしているはずですが」
「そう言うな。あのときはあれが最善手だったのだ」
「……そういうことにしておきますよ」
軍師は不承不承といった様子で頷いた。
「それで我は本気を出すことに決めた。で、帰ってきた」
「……そうですか」
軍師は少し考える素振りを見せ、席を立った。
「陛下。これより王位をお返しいたします」
「うむ」
「では失礼して」
此奴は側にあった短刀を手に取り、頸に突き刺した。
それと共に自分の力が抑制されていくのを感じる。
「誰か!治癒師を!」
軍師はあまりの痛みに気絶した。堪え性のない奴だ。
我が部屋の外に叫ぶと、あらかじめこの事態を予期していたのか、高位鬼人治癒師が現れた。
「此奴を治してやれ」
「はっ、直ちに。『欠損補填』、『祝福』」
治癒師の『神聖属性』魔術は軍師の頸の傷を瞬く間に癒やした。
「ご苦労だった」
「恐悦至極に存じます」
しばらくすれば、此奴も意識を取り戻すだろう。




