7.姉様
扉の下を確認し、ノックをすることにします。部屋を出るときに明かりを消し忘れていたとは可能性もありますが……。
コンコンコンコン。
確かトイレでは二回、部屋に入る時は四回でしたよね。
「はーい」
「!?」
そんなことを考えながら自室をノックしてみると、中から返答がありました。
慌てて扉を開けます。死んだ母様が返事をするとは思えません。
「カッドぉ~。お帰りなさぁい」
「はぁ。姉様でしたか。驚きましたよ」
「うふふっ。カッドったら自分の部屋に入る時もノックしてる。かわいい~」
部屋の中にいたのは私の姉、キャトリン・シュタインでした。
姉弟なのに名字が違っている理由は単純に、母親が違うからです。
ここら辺の私生児は皆ベネットと名字が付けられます。他にもヒートだとか、インテンスだとか様々な種類があり、地方によって違ってきます。
「いつも私の部屋に勝手に忍び込まないでくださいと言っているでしょう?姉様はもう少し淑女らしく振る舞うべきです。私は男ですよ?」
「でも、カッドは紳士だから私には手を出さないよね」
「当たり前でしょう。そもそも身分が違いすぎます。最悪、斬り殺されますよ、私が」
カッドというのは私の愛称です。この『王国』と敵対している『帝国』の言葉でケイデンは、Cadenと書くそうなのです。そこからとってカッドと呼ぶのですが、母様と姉様以外で私のことをそう呼んでいる方を見たことがありません。
「全く!身分身分って、あなたまでそんなことを言うようになっちゃったの?」
「事実ですから。姉さんはシュタイン、私はベネット。これは誰がなんと言おうと、覆すことの出来ないことですよ」
「うっ……」
はっきり言って、それがどうしたなんですけどね。
ですが、今は我慢です。少なくとも明日、出来れば一月ほど後になってから。そのときになったら父や弟を見下して笑ってやりましょう。
「ふふふふふっ」
「カッド、どうしたの?」
「いえ、何でもありません。姉さんと話をしていると楽しくなってきてしまいまして」
「へぇ!カッドはお姉ちゃんが好きなんだね」
「はいはい。私は姉様が大好きですよ」
「え?大好き……?えへへ、へへへっ!」
全く。姉様はチョロすぎです。いつか悪い男に騙されるんじゃないかと心配になります。
「はぁ。何をしていたのかは知りませんが、私は今日は早く寝るつもりなので自分の部屋へ戻ってください。あ、それと、出来れば料理長に今日は外食してきたので、夕飯はいりませんと伝えておいてくれませんか?」
「えぇ~。せっかくカッドの大好きなお姉ちゃんが部屋に遊びに来てあげたのに」
「それとこれとは話が別です。部屋に戻ってください」
話している内に、何故姉様が私の部屋にいたのかが気になってきました。
「……姉様は何をしていたのですか?」
「……え、えーと、その、読書を、ね?」
「……」
「……」
『看破』を使うまでもありません。
目が泳いでますよ、姉様。
「ね?じゃありませんよ。何をしていたのか、無理には聞き出しませんから早く自分の部屋に戻ってください」
「は、はーい」
「伝言の件、頼みましたよ」
「はい、頼まれました!」
はぁ。一気に疲れましたね。
今日はただでさえ疲れていたというのに。
これでは、明日が思いやられます。渡り人の方達が来訪してくる、大切な日だというのに。
渡り人は他の世界から来ると言われています。そこはどのような世界なのでしょうか。果たして渡り神から下されたという信託はどのようなものなのでしょうか。彼らはこの世界で何を感じ、何を考えるのでしょうか。
非常に楽しみです。
「一応確認だけしておきますか」
誰へとも無く呟き、引き出しを下段から順に開けていきます。
おそらくこの呟きは、私のことを信頼している姉様の信頼を裏切る事への罪悪感の表れ。そんなことをしても意味は無いと知りながらも、それでもやってしまうのは己の弱さ故。
「……」
引き出しを調べ終えると、次は机の上。
本棚、衣装棚、ベッドの上。
「まあ、知っていましたけれど」
何かが無くなった様子はありませんでした。
ベッドに腰掛けた私は全身から力を抜き、溜め息を吐きます。
「はぁぁぁぁぁーーー」
今日はようやく一つレベルが上がりました。
あの三人組の最後の方――ラウトさんと言いましたか?――が事切れ、『必要経験値』というものが貯まったのです。
各スキルのレベルが全て1ずつ上がりました。16年かけてここまであげてきたのに、一つレベルが上がっただけでこんなにも簡単にスキルのレベルが上がるとは。
……ズルいですね。
ちなみに今のステータスを見てみると。
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名前:ケイデン・ベネット
性別:男(?)
種族:人間
年齢:16
レベル:0→1
カルマ値:0《中立》→3
クラス:私生児
SP:0→1
ステータス欄
HP:120/120
MP:235/235
STR:112→113
AGI:572→580
DEF:507→507
MAG:431→436
ENT:250→258
HAN:25→26
スキル欄
『呪術Lv.12』『歩行Lv.21』『看破Lv.3』『鑑定Lv.9』『火属性魔術Lv.15』『水属性魔術Lv.14』『風属性魔術Lv.17』『土属性魔術Lv.14』『光属性魔術Lv.18』『闇属性魔術Lv.11』『剣術Lv.15』『体術Lv.13』『短剣術Lv.20』『不意打ちLv.17』『回避Lv.18』『跳躍Lv.17』『跳躍Lv.13』『錬金術Lv.10』『氷雪魔法Lv.1』(NEW)『雷電魔法Lv.1』(NEW)
称号欄
男の娘:女の子のようにかわいらしい男の子。効果:女と間違えられる確率上昇《極大》、変声期で声があまり変わらない。
神を恨むもの:一定期間神を恨むと取得。善に属するものと対峙した時、相手のカルマ値が高ければ高いほど、恐怖耐性上昇、魅了耐性上昇、混乱耐性、与ダメージ上昇、被ダメージ減少。《大》。
ベネット辺境伯爵長子(妾):当主の血を引いているものの、妾腹のため、爵位は継承できない。有事の際には旗印として祭り上げられる可能性《極大》。
異常な速度:むちゃくちゃ速い
耐性欄:
『状態異常耐性』『火炎耐性』『流水耐性』『疾風耐性』『土壌耐性』『氷雪耐性』『雷電耐性』
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小悪党を三人殺して上がったカルマ値が3。
最低でもカルマ値がマイナス30をこえていた彼らは、一体どんな悪事を積み重ねてきたのでしょうか。
一つレベルが上がれば、最低でもステータスは一つ上がるようですね。もはやAGIが人外の域に入ってきました。レベル1でこれは、異常ですね。魔女裁判にでもかけられそうです。
それと『称号』、『男の娘』。
これはもう、神が私に喧嘩を売っているとしか思えません。神殿内での喧嘩は御法度ですが、神に属し、神殿を住居とするような者達が《善》ならば、私は喜んで《悪》の道に進むつもりです。
それと、初めて自分の手で獲得したSPは、もう何に使うか決めてあります。
《SP1を消費してスキル『偽装』を獲得しますか?》
――勿論!
《SP1を消費してスキル『偽装』を獲得しました》
頭の中に声が響き渡ります。人はこれを神の声と呼びますが、こんな無機質な声が神の声ならば、それは虚無を司っているでしょう。やはり神なんて碌な者ではありませんね。
ほんとは一日一本投稿したいのですけれど、時間と余裕がないためできません。
…頑張ります。




