73.傷跡
「何をくだらないことを言っているのですか。私たちは先を急いでいるので、もう行きますよ」
「いや、ちょっとお待ちください。本当なんですってば」
その何時になく、と言えるほど深い付き合いではありませんが、必死な様子に『看破』スキルを発動して確認します。
「あのボロ……小さ……。……あの質素な本拠地が消し飛んだというのは本当ですか?」
「それは事実なんですけど、その、ボロいとか小さいとか言わないで頂けますか?」
泣きそうな顔で言っていますが、嘘は言っていませんね。
そんなに本拠地をボロいと言われるのが嫌なのですか。それは申し訳ないことを……ではなく。
「一体何があったのですか?」
「それは全くわからんのですが、気付いたら何も無くなっていて、地面が抉れていました」
「はい?なんですか、それは?」
ますます訳がわかりません。
放出系の魔術でしょうか。それとも武技?多少表現が誇張だったとしても、一般のそれにしては威力が高すぎます。
「ですから、それがオレらにもわからないんですよ」
「はあ。では、どうしようもないではないですか。下手人がわかったならばそれを追い詰めれば良いものの、何が起きたかわからないなど、それ以前の問題ですよ。といっても、下手人がわかったところで家を消し飛ばすような人間です。何をどこまで出来るか。少なくとも、今の私はあまり力になれませんよ」
「いえ、家を消し飛ばすのではなく、辺り一帯が、全て消し飛んでいたのです。壁を越えて街の外まで」
「はい?なんですか、それは?」
街壁を越えて街の外まで一本の跡を作るなど、そんな技、聞いたこともありません。
「そんな技がある訳ありませんよ。この世界の勢力図が書き換えられてしまいます」
「いえ、ですが実際にそうなっているのですから、そうとしか言えませんよ」
「ふぅむ。一体どんな力なのでしょうか」
普通そのレベルの技を扱える者がいれば国の最終兵器並みの厳重管理がなされると思うのですが。
「あ、あの、若さま」
「なんですか?」
今は割と真剣な話をしているので急に口を挟まないで頂きたいのですが。
「それ、私がやりました」
「……なんですって?」




