65.乱入
「さて、今度こそ死にましたかね。《爆発》」
お気に入りの短剣をそのままに爆発させるのは心苦しいですが、こちらも命が懸かっています。お気に入りと言うだけの短剣一本で安全が買えるのなら、誰だってこうするでしょう。
「アレクセイは魔術よりも物理のほうが効くのですよね。では」
MPポーションを飲み干し、試験管のようなポーション瓶を投擲します。
『狙い撃ち』スキルのアシストか、綺麗な放物線を描いてポーション瓶はアレクセイに当たって砕けました。
「それから、多数展開《土の弾丸》、一斉掃射」
属性魔術にも、物理攻撃にカウントされる魔術は多数存在します。『土属性』魔術はその傾向が強く、拘束系統でなければ、殆どは物理攻撃になります。勿論、《土の弾丸》も物理攻撃です。そうでもないと、この場面で放つ意味はありませんからね。
「さて、アレクセイ。あなたには徹底的に死んで頂きますよ。連続展開《氷の剣》」
詠唱破棄したために短剣くらいまで小さくなった《氷の剣》を手元に出現させ続け、それをアレクセイに向けて投擲し続けます。正直かなり辛く退屈な作業ですが、自分の手で投げれば『狙い撃ち』スキルのアシストがつくので、わざわざ自分の手で投げる意味もあるというものです。
「に、さん……俺は……ま、だ」
「やはりまだ息がありましたか。でも、あなたはここで終わりです。あなたの事情なんてどうでも良いので、私のために死んでください」
そのとき、私の後方、つまり扉のほうから足音が聞こえてきました。
「……最悪です。この足音、騎士団と魔術師団のものですか。どちらも帰ってきていたとは。『統率者』の方がしっかりと働いてくれなかったのでしょうか」
本気を出した騎士団長よりかは強いと思っていましたが、期待外れでしたか。もしくは、あまりにも『統率者』の方が強すぎて魔術師団諸共逃げ帰ってきたというせんも考えられますが、それなら『統率者』の方が追ってこない理由がありませんからね。
魔力の供給を絶ち、《氷の剣》の連続展開をやめてから彼らを待ちます。
「若さま!」
扉が開け放たれ、騎士団長が大声を出しました。
視界の隅にはそんな騎士団長を意に介せず、戦い続けているゴブリンの方と騎士擬き。彼らも色々な意味で凄いですね。
「何でしょうか、団長」
私はアレクセイに注意を残しながらも団長へ向き直って話をします。
おお、騎士団と魔術師団が並ぶと壮大ですね。
「これは一体何事ですか!」
オーバーリアクションで私に尋ねる騎士団長。
「何事?見たとおりとしか言いようがありませんが」
「なぜ!なぜ若さまがアレクセイ様と戦っておられるのですか」
「……それ本気で言っていますか?騎士団長、あなたもそちら側なのですか?」
彼は味方だと思っていたのですが……。見誤りましたか。
仕方がありません。敵には回したくなかったのですがね。
「取り敢えず、戦いを終わりにしてください!」
「それは無理ですね」
私が刃を納めたとしてもアレクセイが暴れるでしょうから。
いや、もう短剣はないのですが。
「団長。一度始まった戦いを終わらせるというのは、難しいのですよ」
どちらかがもう片方を殺し尽くさない限り、ですね。
今はそれをやっているところです。
「若さま!」
「何ですか?」
「……この事が王宮へと伝われば、この家は潰されてしまいます!」
「いいじゃないですか。勝手に潰れれば」
寧ろこんな王国の膿、一愛国者としてこの機会に出しておいた方がいいと愚考しますけどねぇ。




