61.魔剣
待っていないかもしれませんが、お待たせしました。
ものすごく中身のない話ですが、ご容赦を。
「あなたも人のことは言えませんね」
私もそうですから決して卑怯者とは言いません。私が『鑑定』をしていながらも気を抜かなかったのが功を奏しましたね。
「勝てりゃぁいいんだよ、勝てりゃあ」
「そこには賛成ですよ」
中々わかっているではないですか。
「どんな手を使おうと勝った者こそが正義。そこがわかっているならば、恨まないでくださいね」
「チッ。何か仕掛けてんのか」
申し訳ありませんが、出し惜しみなどせずに全力で勝ちに行かせて貰いますよ。
「《落雷》」
「魔剣起動、《反射》」
放った雷が弟の魔剣に当たって跳ね返ってきます。それと同時に騎士擬きが弓を持って矢をつがえるのを見ました。
弓も使えるんですか!?聞いてませんし、見てませんよ!『偽装』でそれだけ隠したと言うことですか?それとも、スキルにはないけれど使えるという奴ですか?
「シッ!ハッ!」
飛んできた矢を腰から引き抜いた短剣で切り払い、跳ね返ってきた雷を上体を反らして避けます。そのまま手をつき、一回転します。
遠距離戦だと勝ち目がありませんね。アレクセイの魔剣には反射技がついていて、さらに私よりも魔法が使える。そして騎士擬きは弓も使える。
「あなた、弓も使えるのでしたか」
「俺は殆どの武器を使えるぞ」
その情報は聞いてませんが、まあいいでしょう。
身を屈めて前傾姿勢を取り、右斜めに飛び出します。射線を取られないようにジグザグに走りながら近づこうと試みますが、アレクセイが私を見ながら慌てず、なにやら魔術の詠唱をしているのを見て急停止します。
「《風爆》」
突如空間に歪みが生じ、そこから同心円状に波紋が伸びてきます。
慌てて石の床に短剣を突き刺し、それにしがみつきながら、風圧に抗っていきます。瞼を薄く開けてアレクセイの方を見ると、彼は魔剣を掲げて悠々と直立していました。
《反射》、でしたか。厄介ですね。
次に騎士擬きを探してみますが、姿が見えません。彼は吹き飛ばされたのでしょうか?
そんなことを考えていると、風ではない音が耳に飛び込んできました。辺りを見回すと、左斜め後ろに人影が見えました。
しまった。騎士擬きですか。
短剣を床から引き抜き、同時に床を思いきり蹴って左に跳びます。そのまま手を精一杯伸ばして体を横にします。騎士擬きへぶつかりながら、『闇属性』魔術を行使します。
「《警笛》」
殆ど聞こえない自分の声と、肉にぶつかった衝撃をかき消すように耳障りな音が周囲一帯に鳴り響きます。
そしてそれに答えるように、微かに扉の開く音が聞こえました。
……この扉、確か内開きでしたよね。一体彼はどういう筋肉しているのでしょうか。




