38.取引先はどこ?
――ケイデン君視点に戻る――
「おお、結構派手にやってますねぇ」
「……」
町に入ってからファミリーの方々と別れた私とゴブリンの方は、現在、どこかのファミリーの頭領である、クラウスさんの拠点まで移動しているところです。
彼を殺すのが今の仕事。昼になるまでには済ませないといけませんね。
「終わらせたら少し早い昼食にしますか」
「……」
遠くに魔法の炸裂音や、冒険者の方々の雄叫びを聞きながら呑気な会話を続けます。まあ、彼は町の中では喋れないし、喋ったところで何を言っているかわからないので私が一方的に喋っているだけですけど。
「さて、ここら辺のはずなんですけど……」
一応目的地に着いたのですが、どこだかわかりませんね。やはり案内人が必要でしたか。
「グギャ、グギギ」
ゴブリンの方が私の袖を引いてきました。彼が指差した方向を見ると、普通の白い二階建ての一軒家が……いや、よく見れば普通の家ではありませんね。なんというか、一階部分に窓が少なすぎです。
それにここら一帯は似たような家が多いので気が付きませんでしたが、一応ここはスラムのはずです。一軒家などある訳がありませんね。
「というと、ここら一帯が彼らの拠点ということですか」
「……」
おそらく幹部連中がここに住んでいるのでしょうが、果たしてどこに頭領はいるのでしょうか。
「虱潰しに探す訳にも行きませんし、誰かに聞いてみますか」
「……」
私は『誰か』を探すために、目の前の家の門を開けました。
「すみませーん」
「……」
声を掛けてしばらくすると、奥から人がわらわらと出てきました。門番もいませんし、門を開けた音で一人も出てきませんでした。練度が低いですね。ハズレですか。
そんなことを考えていると、腰に剣を差し、槍を肩に担いだ、下っ端のような方が現れました。
「なんだ!小娘、ここがどこか知っての事か!」
「それを聞きに来たのですが……あなた今、小娘といいましたね?」
「ぁあ?なんだ?殺されてぇのか?」
「黙りなさい、小物。死にたくなければ今すぐにその口を閉じ、すぐにあなたを殺さなかった私に感謝しながらこの屋敷に住んでいる一番偉い者を連れてきなさい」
「あんだと!」
彼は叫ぶと、すぐに槍を構えて突進してきました。
しかし、大変無駄の多い動きです。まず叫ぶ必要性が理解出来ません。叫ばなければ少しでも不意を打てたかもしれないのに。
「そんなに短気だと早死にしますよ」
「うっせぇ!」
はぁ。
言葉遣いが粗野で乱暴的ですね。
「シッ」
取り敢えず槍を潜り抜け、脇腹を短剣の柄で殴りながら背後に回り、背中を蹴り飛ばします。
「ぐふっ」
「……ただのチンピラでしたか。こんな場所にいるのだからさぞ腕の立つ者だと思っていたのですが」
私のわずかな期待は物の見事に裏切られてしまいましたね。
「大丈夫です。殺しはしません。これからここの頭領の方と交渉をしなくてはなりませんからね」
私は彼に聞こえるようにそう言うと、短剣を振りかぶり、兜も被っていない彼の頭に柄を振り下ろしました。




