35.騎士団長の観察
――騎士団長視点――
「急げ!あそこだ!着いたら馬は大して使い物にならん!使い潰すつもりで走れ!」
「「「「「「はい!」」」」」」
部下の力強い返事を聞き、騎馬の速度を上げる。
それから五分位して、ようやく現場に着いた時に見たのは、二メートルを超すであろう巨体のゴブリンと、それを取り囲む数十の冒険者の姿であった。
皆似たような格好をしており、総じてステータスが低い。まるで相手になっていない。
そして、ダメもとで巨大ゴブリンに『鑑定』を掛けると、有り得ないステータスが返ってきた。
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名前:
性別:男
種族:ゴブリン
年齢:23
レベル:31
カルマ値:-220《邪悪》
ファーストクラス:ロード セカンドクラス:ゴブリンキング サードクラス:キングオブザキング
SP:0
ステータス欄
HP:3000/3000
MP:2000/2000
STR:600
AGI:600
DEF:600
MAG:600
ENT:600
HAN:600
スキル欄
『王の覇気Lv.――』『正当なる王Lv.――』『看破Lv.20』『言語学Lv.20』『鑑定Lv.20』
称号欄
ロード:全てのステータスを600にする。
キング:全ての状態異常を無効化する。物理攻撃と魔術攻撃に耐性を付ける。
統率者:ロードの称号を得る。反逆が起き、収められなければこの称号は消える。この称号は、この称号の持ち主を殺した者に引き継がれる。また、この称号の持ち主は殺害以外の原因で死ぬ時、その称号を任意の者に引き継がせることが出来る。
耐性欄
『状態異常無効』『物理攻撃耐性』『魔術攻撃耐性』
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化け物だ。
私よりもレベルが低いのに、ステータスがかなり私に近い。そして称号の『統率者』。五つの砦を完膚無きまでに破壊し、魔の森を魔境へと変えた化け物と同じ称号。
おそらく今までに幾人もの人間が餌食になっているのだと思うが、一つ気になる点がある。
死体が無いのはどういったことだろうか。
「クソ!リョウスケさんがやられた!」
「ふん!口ほどにもない。また戻ってきても我が叩き潰してくれようぞ」
やはり口振りからして誰かが死んだはずだ。
「う、うおおおお!」
「フッ!」
勇気を出して剣を振りかぶった冒険者は、ゴブリンの拳の一撃であっけないほど簡単に腹に穴が開いた。
若さまや我々騎士団ではこのくらいで倒れるなどもってのほかだろうが、そのような訓練を受けていない冒険者ではもう戦えないだろう。痛みでショック死というのもあり得る。
「おぬし等は何者だ?彼らを助けに来たのか?」
巨大ゴブリンは我々のことをかなり前から気付いていたようなので、あえて我々に観察させる時間を与えたのかもしれない。
「我々はツインクラウン騎士団。この町の住民を救うために派遣された。貴殿の名は?」
「はははっ。我に名などない。それくらいはわかっておろうに。それとも――」
一気に『統率者』の声が冷たくなった。
「我を侮辱しておるのか?」
「そう受け取られたならば、謝罪する」
そう言って私は馬を下り、頭を下げた。
「貴殿のような強者に対して侮辱などは有り得ない。しかし、そう取られてしまったようだ。誠に申し訳ない。この通り」
「ふふふ。はははは。ははははははっ!まっこと面白き奴だ。どうだ?おぬし、我の下に加わる気はないか?」
「申し訳ないが、一騎打ちではあなたには勝てないだろうが、人族は集団で戦うものだ」
それに、と続ける。
「私の忠誠は既にある方に捧げている。貴殿も中古品は好まないだろう?」
「はははっ!本気でおぬしが欲しくなってきたぞ?どうしてくれる」
「それで油断してくれるなら、我々の勝利だな」
「ハッ!我に油断など存在せぬわ!」
彼はそう言った後、左半身を前に出し、右拳を腰に溜める、珍妙な構えを取った。
「それならば」
「それでは」
「「いざ尋常に」」




