33.勇者
――『統率者』視点――
「こんなものか」
人族の小僧に唆された我は、あえて小僧の思惑に乗って町まで来てやった。
実際に奴らが渡り人と呼んでいる戦闘狂共に興味はあったし、何よりも小僧のステータスが面白かった。
彼奴は人の下に立とうとはしないだろうが、関わっているだけで面白いことになりそうだ。
それにカルマ値はそこまで低くはないが、称号にあった『神を恨むもの』が気になるところだ。神の敵なら、協力して悪いことにはならないだろうしな。
「食らえ!『スラッシュ』!」
「ふんっ」
低級な技で斬りつけてきた剣士の頭を殴り抜き、手に着いた血や脳漿を振り落としながら剣士の死体を観察する。
十秒ほど経つと、光の粒子になって消えた。
「そろそろリョウスケさん達が死に戻ってくるはずだ!それまで持ち堪えるぞ!」
「「「「「「おう!」」」」」」
数が大分減ったにもかかわらず、目の前で武器を構えている人族達の士気は高い。
死んでも生き返るからこその余裕だろうか。
「行け!貫け!『シュート』!」
「弓の武技か」
しかし、この程度の攻撃が我に傷を与えることは不可能だ。たとえ全員が一斉に同じ箇所を攻撃しても、痛くもないだろう。
貫通力が上がったはずの矢は、我の肌に触れ、落ちた。
「なっ!?これでも聞かないの!?強化して貰ったのに」
「幾ら武器を強化したところで、自力が足りんな。武器に頼っている内は二流だ」
我が配下にも弓を扱う者がいたが、扱う者がこうも違うと警戒心が湧き上がらないものなのか。単純に技量が足りていなさすぎる。この程度で不死身の冒険者など、片腹痛いわ。
「みんな、遅れてごめん」
「リョウスケさんが帰ってきたぞ!」
「おお!」
「これで勝てる!」
「……?」
リョウスケが何奴かは知らぬが、先程我に殺された奴らの内の一人だろう?
何故こうも盛り上がれる?
「正義は我の手に!必殺!」
必殺技といったか?
先程、彼我の実力差もわきまえずに、小僧と戦っていた馬鹿が使っていたものだったか。それほど脅威には感じなかったのだがな。
「『断罪の一撃』!」
巨大な剣圧が少し速い速度で迫ってきたので、軽く避ける。
それと同時に我の方向へと向かってきたので、拳を当てて相殺することにした。追尾式の中距離攻撃か。
「何っ!?」
しかし我の拳は空を切り、奴の攻撃は我へと確かに届いた。
しかも我が防御力を突破し、少ないながらもこの戦いで初めて我にダメージを負わせたのだ。
我は認識を改め、『鑑定』でリョウスケと呼ばれている人族のステータスを覗き見る。
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名前:リョウスケ・オオイシ
性別:男
種族:人間
年齢:16
レベル:5
カルマ値:24《善》
ファーストクラス:剣士
SP:0
ステータス欄
HP:170/170
MP:300/300
STR:80
AGI:70
DEF:70
MAG:45
ENT:73
HAN:32
スキル欄
『剣術Lv.2』『光魔術Lv.3』『看破Lv.1』『交友Lv.4』『体術Lv.6』『跳躍Lv.4』『回避Lv.2』『致命の一撃Lv.3』『勇気ある者Lv.――』
称号欄
渡り人:異世界からの訪問者。
光の勇者:勇者。
耐性欄
『物理耐性』『魔術耐性』
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勇者。
人族の中でも我らを特に強く敵視している者達。
しかしその戦闘能力は馬鹿に出来ず、異常なまでに優れた攻撃力を持っている。異世界からの戦闘狂共の中にはそんな者までいたのか。
「勇者よ。人族だけの世界などつまらぬとは思わんか?」
「それでも、お前らのせいで誰かが傷付くのならば、僕は戦う!」
「ほう」
異世界の者共にもここまでこの世界のことを思っている者がおったとは。些かその方向性がズレている気がするが、それでもこの世界の者として、一言言いたい。
「この世界で生まれた訳でもない者が、偉そうな口をきくでない」
その言葉と共に、我は腰に拳を溜めて勇者へと駆け出した。




