21.寝起き
――翌朝。
コンコンコンコン。
「姉様、起きてください。時間ですよ」
「……」
私は日が昇り始めた頃に、姉様の部屋の扉を叩いていました。
「はぁ。……姉様、起きてください」
「……」
「入りますよ」
「……」
左右を見て、周りに人がいないことを確認します。
「……」
ガチャリ。
これって見つかったら殺されますよね。冗談抜きで。
私生児ごときが嫡出児の部屋に忍び込むとか……。見つかった時のことを考えただけでも寒気がします。
「ほら、姉様、起きてください」
「……」
するりと扉の隙間に滑り込み、音を立てずに閉めた扉の鍵を掛けます。
とても幸せそうな寝顔で毛布にくるまっている姉様を軽く揺すったり、頬を叩いたりしてみましたが、一向に起きる気配がありません。
「それにしても……」
汚い部屋ですね。
昨晩訪れた時は綺麗だったのですが……あれは私が入ってくる前に片付けをしていたからだったのでしょうか。
服はベッドの上に脱ぎ散らかされて、机の上にはインクの飛び跳ねた紙が乱雑に置かれ、クシャクシャに丸められた紙玉と羽ペンが放置されています。さらにインク壺の蓋は口のところに置いてあるだけで、閉められていません。
「こんな所で暮らしていたら、とても健康体ではいられないでしょうに」
壁には剣が立てかけられています。
おそらく丁寧に手入れをしていないのでしょう。赤黒い血がこびり付いています。昨日はありませんでしたし、一体いつ使ったのでしょうか。
仕方ありません。
姉様が起きるまで、剣の手入れでもしていますか。
この部屋に研ぎ石が見つからないので、一旦部屋に戻って取ってくると、姉様は既に起きていました。
「おはようございます」
そっと扉を開けたからか、姉様は私に気が付かなかったので取り敢えず声を掛けました。
「うえぇ? カ、カッド? 何でここに?」
「おはようございます」
「お、おはよう」
挨拶は大切ですからね。
「何度呼びかけても姉様が起きないので勝手に入らせて頂きました。鍵くらい掛けてはいかがですか?」
「そ、それは……」
「それは?」
「カッドが起こしに来てくれるかなって」
「あ、そうですか」
結局のところどこまでいっても人任せなのですね。
まあ、今の姉様は可愛らしかったので許しますけど。
「で、カッド。今日はどこに行くの?」
「街を散策するだけですよ? あ、でも、姉様とは途中で別れます」
「え? カッド、どっか行っちゃうの?」
「はい、今日は少し用事がありまして」
「私もついて行っちゃ駄目?」
「駄目です。宿を取ってあるので、姉様は宿から一歩も出ないでください」
「宿……」
宿の何が琴線に触れたのか知りませんが、姉様は少し頬を赤らめて恥じらった様子を見せました。




