16.ゴブリン(終わり)
ギルドへ戻ると、優男さんがソワソワしながら待っていました。犬に『待て』を教え込む時は、このような気分なのでしょうか。
「おや、優男さん、上手く町へ帰れたようですね」
「き、君か。大丈夫だったか?かなり強そうに見えたが」
少し慌てた様子の彼に、思わずクスリと笑ってしまいます。
本当、何も知らないって幸せですね。すぐにこの町の中も安全とは言えなくなるのに。
「ええ、あのゴブリンとは話を付けてきたので大丈夫ですよ」
「は、話って、通じるのか?」
「普通は通じないはずなんですけどね」
ゴブリンの方と取引した後は、数匹ゴブリンを狩って終了にしました。
これが今のステータスです。
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名前:ケイデン・ベネット
性別:男(?)
種族:人間
年齢:16
レベル:1→2
カルマ値:3《中立》→-8
クラス:短剣使い
SP:0→1
ステータス欄
HP:130/130
MP:240/240
STR:113→121
AGI:580→584
DEF:507→514
MAG:436→440
ENT:258→259
HAN:26→28
スキル欄
『呪術Lv.13』『歩行Lv.24』『看破Lv.3』『鑑定Lv.10』『火属性魔術Lv.15』『水属性魔術Lv.14』『風属性魔術Lv.17』『土属性魔術Lv.14』『光属性魔術Lv.18』『闇属性魔術Lv.12』『剣術Lv.15』『体術Lv.15』『短剣術Lv.20』『不意打ちLv.19』『回避Lv.19』『跳躍Lv.18』『錬金術Lv.10』『氷雪魔術Lv.2』『雷電魔術Lv.2』『偽装Lv.2』『模倣Lv.1』
称号欄
男の娘:女の子のようにかわいらしい男の子。効果:女と間違えられる確率上昇《極大》、変声期が来ない。
神を恨むもの:一定期間神を恨むと取得。善に属するものと対峙した時、相手のカルマ値が高ければ高いほど、恐怖耐性上昇、魅了耐性上昇、混乱耐性、与ダメージ上昇、被ダメージ減少。
シュタイン辺境伯爵長子(妾):爵位継承権は持っているものの、妾腹のため、爵位は継承できない。有事の際には旗印として祭り上げられる可能性《極大》。
速度の鬼:めちゃくちゃ速い。
裏切り者:何で裏切ったの!?道を踏み外さないで!
耐性欄:
『状態異常耐性』『火炎耐性』『流水耐性』『疾風耐性』『土壌耐性』『氷雪耐性』『雷電耐性』
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レベルが一つ上がり、スキルポイントを一つ入手しましたが、もう何に使うかは決まっています。
《SP1を消費してスキル『言語学』を獲得しますか?》
……はい。
《SP1を消費してスキル『言語学』を獲得しました》
これのスキルレベルが上がることで、魔物や亜人などの知性のある敵対種族の言葉がわかるというのです。
本当はもっと欲しいスキルなどがあるのですが、これが今必要なスキルなので取得しておきました。
「優男さん、依頼は達成しておいたので、私はこれで」
「……その、優男さんって言うのはやめてくれないか」
「……はぁ」
「僕の名前はリョウスケだ」
「そうですか。でも、これでもう会うことはないんですし、いいじゃないではありませんか」
「そんな悲しいこと言うなよ」
「ふふっ。冗談ですよ」
「なんだ、びっくりした」
あながち冗談ではなくなるかもしれませんけどね。
「では、これより所用があるので」
そう言ってギルドの扉に手をかけると、優男さん改めリョウスケさんが心底不思議そうに聞いてきました。
「どこ行くんだ?」
「これからその用事を済ませてこようと思いまして」
「ここで落ちればいいじゃないか」
落ちる?渡り人の言葉でしょうか。
おそらく彼は私が渡り人だと思っているはず。ならば、用事とは渡り人の世界の話と捉えられているはずです。ということは、『落ちる』とは、渡り人の方達の世界に帰る言葉でしょうか。
「その前に、さっきの戦いで武器を駄目にしてしまったので、買い換えようかと」
「ああ、そう言うことか」
真実の欠片もない真っ赤な嘘を信じた彼は、納得してしまいました。
その『所用』も真っ赤な嘘なのですが。
……もう帰ります。