プロローグ ある冒険者視点
一応初投稿です。
NPCが水戸黄門する話です。(嘘です)
とりま読んでみて、つまらなかったら感想でこき下ろしてってかまいません。
嘘です、作者の豆腐メンタルが粉々になるのでやめてください。
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「ヤァッッ!!ハアァ!!」
「フッ!シッ!」
男の振り下ろしを半身になって避け、手首を捻り繰り出してきた逆袈裟懸けには、上体を反らしながら逆手に持つ短剣で剣を滑らせる。
貴族の息子の鍛錬。そう聞いてここに来た俺は、思わず自分の目を疑った。
貴族の息子の鍛錬と言えば、誰も真面目に相手をせず、適度に相手を勝たせて終わりのはずだ。
しかし、これは違った。
誰もが本気で勝ちに行っている。
護衛の、訓練相手の騎士も。
貴族の息子も。
そしてその技量はかなり高かった。
今も騎士団の団長とほぼ互角に渡り合っている。貴族の息子の方がリーチが短い分、騎士団団長の方に分があるが、かなり強い。
このまま順調に育っていけば、英雄と呼ばれる傑物になるのは間違いないだろう強さ。
というか、騎士団団長と戦っているお方がどっからどう見ても少女なのですが。
あれ、ホントに男?
「何者……?」
思わず口からこぼれ落ちた呟きに、隣にいた騎士がこちらを振り向いた。
しまった。さすがに高貴なお方に対して何者はマズかったか。
しかし、俺の予想に反してその騎士は笑って言った。
「だよな、そうなるよな」
「は?」
俺が思わず間の抜けた声を出すと、その騎士は不思議そうな表情で首を傾げていった。
甲冑を被っていて表情なんて見えないが、首を傾げていたから良いんだよ。
「ん?さっきの何者って、若さまのことを言ったんじゃないのか?」
やっぱり若さまなのか。
「いや、そうですけど……」
「じゃあ、どうした?」
「いえ、貴族の跡継ぎに向かって、何者とか言っちゃったから、てっきり殺されるんじゃないかと」
「はっはっは。そんなんで殺してたら、この町の防衛力が致命的になってしまうよ」
「そうですか」
皆似たような反応してるんですね。
「うちの若さまは強いからね。あんまり魔術は使わないけど、魔術もかなり使えるんだぞ?」
「へぇ。そうなんですか。ところで、どうしてあんなに強くなられたんですか?」
「小さい頃から、身分とか関係なくビシバシ鍛えてきたからね。若さまご自身の要望で」
「それは何故ですか?」
「強くなりたかったんだと」
何故そんなに強くなりたかったのだろうか。
「あれでもお二方ともまだ本気出してないんだけどな」
「えぇ!?」
だんだん激しさを増していく戦いを見る。
騎士団長の突きには体を斜め前方に投げ出し、そこからの横薙ぎ、いや、回転斬りは屈んで回避する。
そして脇の鎧の隙間を縫うようにして短剣を突く。
騎士団長は回転斬りの勢いを利用して体を前に倒し、片手で持った両手剣を逆手に持ち替えてさらに切りつける。騎士団長に張り付くようにして避け、そのまま顔に短剣を突きつけるが、騎士団長は頭を振って短剣を避け、そのまま体当たりをして相手を押し出す。
「ハァッ!」
「クッ!」
振り下ろされた袈裟懸けは、剣の腹を右足で蹴り飛ばして軌道をそらし、そして地に着けた右足を軸足にして回転、左、右、とステップを踏んで右手を切り飛ばした。
「グゥッ」
「ハッ!」
そしてそのまま喉に短剣を突きつけた。
「そこまでっ!勝者、ケイデン様」
「よし!」
「いやー。負けた負けた。強くなられましたな、若さま」
地面に突き刺さった大剣と、それを未だ握っている右手首。
それを放置したまま騎士団長は地面に大の字になった。
そしてそれを見て小さくガッツポーズする、美少女にしか見えない、中性的な顔立ちの若さま。
……なんだこれ?