氷王
某メーカーのある日。
「氷王ですか?社長・・・」
「そうだ、氷王だ。」
「陸王は、聞いたことがありますけど、氷王って何ですか?」
「陸王は、足袋屋が、ランニングシューズを開発する物語だろ。」
「なるほど、氷王は、速く滑れるスケートシューズのことですね。」
「いや、そうじゃない。」
「え、違うんですか?」
「なにも、速く滑ることが、目的ではない。」
「社長、よくわかりません。」
「つまりだな、氷王は、滑って転んでもケガしないスポーツスーツのことだ。」
「スポーツスーツですか?シューズじゃないんですか?」
「シューズとは限らないだろ。」
「陸王の王は、シューズだと思っていましたが。」
「別に名前なんてどうでもいいんだ。練習中に転んでも、ケガしないボディースーツを新規開発するんだよ。」
「ケガしないボディースーツですか。」
「そうだ、本番前の練習中にスケートリンクでケガしてしまって、チャンスを棒に振ってしまった選手が、大勢いるだろ。」
「確かに!」
「そういう不慮の事故を防ぐことができる商品は、高い評価を得られるはずだ。」
「まさしく。」
「多少の衝撃にも耐えることができて、軽量で、柔軟で、丈夫なボディースースがあれば、選手は、恐れること無く大胆なパフォーマンスを発揮できるはずだ。」
「社長、すごいですね。未来の練習用のボディースーツですね。」
「練習用とは限らない。実戦でケガしないことも商品としては重要だ。」
「なるほど。社長の発想はいつも天才的ですね。」
「衝撃から人体を守り、ケガの防止ができて、軽量で、柔軟なボディースーツを開発するんだ。」
「今までに無い発想ですね。」
「プチプチと同じ技術を使えば、ケガしにくいのではないかと考えたんだ。」
「社長は天才ですね。」
「そうだ、だから大儲けできるんだ。」
「氷王ですね!」
「名前なんて何でもいいんだ。」
「えっ!」