記録の36 新しい仲間?
「とにかく、私は貴様なんかに付き合ってる暇はない。悪いが他を当たってくれ」
私がモテようがモテまいがこんな奴と共に行く気は無い。とっとと脱いで宝箱に戻したらこの先の海にでも沈め――
「……脱げないんだが」
おかしい。この鎧、いくら力を入れてもビクともしない。まるで体の一部であるかのようにピッタリとくっついて離れない
「他を当たってくれだなんて……そんな悲しいこと言うなよ。せっかく会えたのも何かの縁だろ? 仲良くしようぜ?」
「貴様……何をした?」
「さぁな。俺様だって取り憑くのは初めてなんだ。なにが起こるかなんて理解してねぇよ」
憎たらしい笑顔と口調で答える鎧。お前のせいで苦労しているというのに当の本人は知らん顔
腹が立つ。なんとかしてこいつの顔を苦痛に歪ませてやる方法はないものだろうか
「これは……呪いの装備ってやつね」
そう思ったのも束の間、スイがボソッと呟いたのを私は聞き逃さなかった
「呪いの装備? なんだそれは」
「装備した者に良くない効果をもたらす装備のことよ。装備したら最後、簡単には外せないらしいわ」
呪いの装備。初めて聞くが良いものではないことくらいは簡単に想像がつく
しかし今のところ脱げない以外に変化は見られない
とは言え厄介な代物であることに変わりはない。私の身に何かが起こる前にこいつを外さなければ
「簡単には外せない……ということは外す手段はあるんだな?」
「ええ。噂だとどこかの国に呪いを浄化してくれる施設があるらしいわ。どこにあるかまでは分からないけど……」
手段はある。しかし手掛かりとなる施設はどこにあるかも分からないときた
「おいおい。まさか呪いを解こうってのか? 俺様を捨てようなんてとんでもない奴だな」
「貴様は黙っていろ。すぐにあの世に送ってやるからな」
「ヒュー、怖いねぇ。まっ、やれるもんならやってみなって感じ。浄化だろうがなんだろーが根性で耐えてやるよ!」
怠け者の根性無しが根性を口にするとは片腹痛い。つくづく口の減らない奴だ
ただその施設とやらを見つけるまでこのやかましいのと一緒と考えるだけで頭が痛くなってくる
「そうか。では貴様の根性とやら、試させてもらおうか」
呪いとはつまり、人の怨念や悪意によってもたらされるものだろう。そして私はその悪意に対して最も有効な武器を持っている
「ちょっとリッツ!? なに考えてるの!?」
「へっ! 剣で無理矢理斬ろうってか? そんなことしたらお前もどうなるか分からないぜ?」
「心配するなスイ。この剣が私を斬ることはない」
斬魔の剣。呪いだかなんだか知らないが、私はこの剣で悪霊だって斬っているのだ
「呪い程度、斬れないはずがないだろう!!」
斬魔の剣を自身の腹部へ力いっぱい突き立てた
「ぐぅぅぅぅおぉぉぉ!! なんじゃこりゃぁぁぁぁ!?」
切っ先が触れた瞬間、悲鳴を上げる鎧。やはり思った通りだ。斬魔の剣は呪いにだって効果を発揮する
「いでぇぇぇぇよぉぉぉ!! ぐるじいよぉぉぉぉ!!」
やっとこの生意気な奴に一泡吹かせてやれた。あとはこのまま剣を当てておけば浄化出来るだろう
「アアアアアア!! だずげでぐれぇぇぇぇ!!」
しかしなんとも耳障りで情けない悲鳴だ。先程まで口にしてた根性とやらは欠片も持ってないではないか
「ギニャアァァァア!! もうやべでよぉぉぉぉ!!」
……なかなか粘るな。だが苦しみ方からしてそろそろ限界だろう。さっさと観念した方が楽になれるぞ
「ずびばぜんずびばぜん!! もう勘弁じでぐだざいぃぃぃぃ!!」
「いやしつこいな!!」
流石に長すぎるだろ。散々苦しんでいる割に浄化される気配が全くなかったぞ
斬魔の剣が効かなかったなんてことは無い。現にこいつは剣から離れた今でも息を切らして死にそうだ
「はぁ……はぁ……はぁ……。あーマジヨユーだったわ。こんなの痛くも痒くもねーわー。まぁちょーどいいマッサージくらいにはなったかなーうん」
「この状態で強がり言えるの凄くない?」
まったくもってスイの言う通りだな。あれだけ醜態晒しておいてまだそんな口が聞けるのだから大したもんだ
「どれ、もう1回やってみるか」
「あああもうやめて!! 謝るから!! チョーシこいてすみませんでした!!」
斬魔の剣をチラつかせると態度が急変した。この様子を見るに相当堪えたのだろう
ひとまず鎧を従わせる手段は見つけたが、浄化させるにはやはりその施設とやらに行くしかなさそうだ
ならば進むしか道はないか。不本意だがこいつも連れていかざるを得ない
「おい貴様。名前はなんだ?」
「んなもん忘れたよ。好きに呼べ」
「そうか。じゃあゴミクズだな」
「ヘヘッ……じょ、冗談ですよー……。よろしければ『ロイ』とお呼びくだせぇ……ヘヘッ」
偉そうな口聞いたと思えば斬魔の剣を見た瞬間にこの変わり様。面白いくらい情けないなこいつ
『呪いの鎧のロイが仲間? になった』




