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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
バンボの村の巻
23/44

記録の22 episode of BANBO ~最終章~

下ネタ注意です


 『SQUARE PILLAR BANBO』の活動が始まって1年が経過した


 あの頃から格段にレベルアップした演奏技術。路上ライブでは客の数も生卵をぶつけられる数も増えた

 調子に乗ってCDの自主制作なんかもしたりした


 そして俺達は更なる高みへ駆け上がるため、ついにオーディションを受けることにしたのだ


「うぇーいおつかれー!」


 オーディションが終わった後、俺たちはとある居酒屋で少し早い打ち上げを行っていた


「いやー、こりゃ間違いねぇよ。合格以外ありえねぇよ」


「あぁ。過去最高の演奏が出来たもんな」


「他のグループもみんなウマかったが、それでも俺達が一番だったよ」


 合否はまだ出ていない。それでも4人全員が確信していた


 大成功。合格間違いなし


 強い絆で結ばれた俺たちはこれからプロの世界へと羽ばたく。そしてこの最高の仲間達と天下を取るのだと――


 今日のことを振り返りながら話は盛り上がり、この後はマスターのとこで二次会なんてことになった


 今夜は長くなりそうだ。けどたまにはこんなのもいいだろう。今日はしこたま飲んでやるんだ


 それから数時間後――


「てめぇ……自分が何やったか分かってんのか……?」


「あ? 別にいいだろこんくらい。チン○ンだけじゃなく器もちぃせぇのかお前は」


「このっ……! ゴメンじゃすまねぇぞゴラァ!」


 目の前で起こっている出来事を、俺は受け入れられずにいた

 なんとイルブンボがオルトナリアの胸ぐらを掴んでいるではないか


 トイレに行ってる間の僅かな時間の中で、楽しい酒の席が修羅場へと変化していたのだ


「ちょっと落ち着け2人とも! なんで喧嘩してんだよ!」


「これが落ち着いてられるか! オルトナリアのやつ、唐揚げにレモンかけたんだぞ!? しかもチン○ンの事まで言いやがった! 許せねぇ!」


 こいつはマズイことになっちまった。イルブンボはアンチ唐揚げレモン。オマケに気にしているチ○チンのことまで言われちまった日にゃあもうブチ切れちまうのも当然


 迂闊だった。イルブンボもオルトナリアも普段は喧嘩なんかしないんだが、盛り上がってたこともあり酒が進みすぎちまったんだ


「ちょっ、店に迷惑かかっからマジでやめろって!」


 まずはお店に迷惑をかけないようにすることが先決。幸いヒートアップしてるのはイルブンボだけだからソボンボが押さえてる内に会計を――


「離せソボンボ! ちょっと顔が良いからって調子に乗りやがって!」


「別に乗ってないだろ!」


 イルブンボのやつあちこちに当たり始めやがった。すまないがもう少しだけ耐えてくれよソボンボ――


「はっ! 見苦しいなぁイルブンボ……。モテない男の嫉妬ってのは――」


「は? 今そんなの関係ねぇだろ」


「お前が好きなハナコちゃん居るだろ? あの子、ソボンボのこと気になってるって言ってたぞ?」


 オルトナリアァァァァ!! 火に油注いでんじゃねぇよ! その情報絶対いま言うことじゃねーだろ!


「え? まじで? 実は俺もハナコちゃんのこといいなと思ってたんだよね……」


 ソボンボテメェェェェ!! なにちょっと嬉しそうな顔してんだよ! 気持ちは分かるけど頼むから今は押さえろよ!


「クッソがぁぁぁぁ!! テメーらなんかもう仲間じゃねぇよ! 絶交だ! 解散だ!」


「イルブンボ! 待てって! せめて金だけは置いて――行っちまった……」


 この件を境に、俺たちの中で何かが狂い始めていった


 なんとなく居心地の悪さを感じた俺とソボンボは街を出ることを決めた


 イルブンボは事件から数日後、俺達2人の所に謝りに来た。俺もソボンボも怒ることはせず、あの日の金だけきっちり請求した後で快く迎え入れた


 しかしオルトナリアだけは未だに音信不通のまま


 彼がどこで何をしているのか。そもそも生きているのか。それを知るのはオルトナリア自身のみ――


 ちなみにオーディションは落ちてた


――――――


「……とまぁその後色々あって私達はこの塔に辿り着き、今に至る訳ですよ」


「はぁ……そうか」


「なんか世界観とかキャラとかおかしくなかった?」


 長々と昔話を聞かされた割には大した感想が出てこない

 強いていえば喧嘩の原因があまりにもくだらなかったくらいか


 まぁチン○ンのことを言うのは良くないな。そういうのは個人差とか色々あるもんだしな。触れてはいかんな、うん


 正直、『その後色々あって』の"色々"の方が気になるがそこは聞かないことにしよう。どうせ聞いても後悔するし明日には忘れるだろうし


「私たち悩んでるんです。昔のように仲良くしたいんですが、何故か些細なことで腹が立ってしまったりで普段も喧嘩が耐えなくて――」


 悩んでると言われても全く伝わってこないな。だって全員同じ顔してるし表情だって眉ひとつピクリとも動かんからな


「……ちょっと待ってください。それ、なんか心当たりあるかもしれません」


 ラビトが久しぶりに発言したな。さっきまでの怯えてた姿はもうなく、私たちの輪に自然に溶け込んでいた


「ラビト、詳しく教えてもらっていい?」


「はい。実はバンボの村には悪霊が住み憑いてるって噂がありまして……」


「悪霊だと?」


 これまた不思議な話だな。この世界に魔王や魔物の存在はあれど、悪霊なんてものは見たことも聞いたこともない


「村人同士が突然険悪な雰囲気になってしまって喧嘩が耐えない時期があったんです。仲が良い人同士だったり、反対に全く会話したこともないような人同士だったり、とにかく争い事が多かったんです。私も何人かブチ殺しそうになったことがありました」


「でも私たちが村に来た時はそんな雰囲気全然感じなかったわよ?」


 待て。話を進めるなスイよ。今ラビトがしれっと物騒なこと言ったぞ

 スライムすら殺せそうにない大人しそうな少女の口から出てはいけない言葉が出たぞ


「ある時を境に村人達のいさかいがピタッと止んだんです。それが守り神様がこの塔にいらっしゃった時期と同じなんですよ」


「つまりこの人達が悪霊とやらから村を守ったってことね?」


「そういうことです」


 なるほど。それなら村人が奴らを神と崇めたくなる気持ちも分かるな


 しかし"守った"と言うのは少々違うようだぞ。奴ら3人からは漏れなく他人事のような雰囲気が出てる。表情が変わらないから分かりにくいが、全員頭の上に?を浮かべてる感じだぞあれは


 これは恐らく何も分かってない。おおかた、悪霊とやらが村から移動してこいつらに取り憑いたってことだろう


「それなら話が早いな。おいウンボバンボ」


「あっ、僕ソボンボバンボです」


「あぁすまない……いや、そんなのもうどうでもいい!」


 悪霊と言うなら悪しき心の塊。つまり斬魔の剣の出番ということだ


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