記録の20 なんだ貴様等はってか?
スイによる回復が終了し、守り神とやらは口を聞けるほどには元気になった
とりあえず全員正座させて話を聞くことにしよう
「で? 何を揉めていたんだ? 貴様等の頭がイカれてるせいで村人達が混乱しているらしいぞ?」
「ちょっと待ってよリッツ。話聞く前にツッコむべきとこあるでしょ?」
「ない」
話の腰を折るなスイよ。私の力が守り神より上だということが証明された以上、こいつらと無駄話をするつもりはない
とっとと片付けて先へ進むのだ
「いやあるでしょ!? アンタこいつら見てなんとも思わないの!?」
そこまで言うのならこいつらの容姿を簡単に整理してみよう
まず服を着ていない。全員真っ白なパンツだけは履いている
体型は様々で引き締まった肉体、贅肉まみれのだらしない肉体、筋肉も贅肉もない至って普通の肉体とバラバラ
次に顔は馬面――というかまんま馬だ。なんか肌の質感にゴムっぽさを感じるがそれは些細な問題だろう
バンボの村にいた獣人達は皆、私みたいな普通の人間とは違った特徴を持っていた。顔面がゴム質な奴がいたっておかしくない
それらのことを全て踏まえて再び考えてみよう。こいつらにツッコミどころは――
「……ない」
「アンタの目は節穴か! ラビトを見てみなさいよ!」
私の目は節穴ではない。あらゆる攻撃を見切り、どんな隙も見逃さない究極の目だ
この目をもってすれば私に敵など存在しない。言わば完全無欠最強無敵
どれどれ、この究極の目でラビトを見てやるとするか。奴だってなんの疑問も持たずにその辺の石ころでも眺めてるに違いない
「へ、変態です……」
……どういうことだ? ラビトは入口から1歩も動いておらず、身を縮こまらせて震えているではないか
「ドン引きしてるな」
「それが普通の反応なのよ」
まるで私が普通じゃないような言い方をしおって。まぁ守り神を一瞬で蹴散らした私の実力が普通ではないことは確かだな
「もっと褒めていいぞ」
「どう解釈したらその言葉が出てくるの? もうめんどくさいから話進めて」
自分勝手な奴め。しかし私としてもこんな所からは早いとこおさらばしたい
若干不服ではあるが、スイの言う通りそろそろ本題に入るとしよう
「待たせて悪かったな。もう一度聞くが、貴様等は何を揉めていたんだ?」
「なんだ貴様等はってか? そうです、私たちが――」
ちょっと待て。その件は既に済んでる。私が聞いてるのは誰かじゃなくて何でなのかで――
「ウンボバンボ!」
「ソボンボバンボ!」
「イルブンボバンボ!」
こいつら聞いちゃいない。ここぞとばかりに自己紹介を始めたぞ
「我等! バンボの塔を守る四本柱あああぁぁぁぁっ!!」
「うおっ! な、なんだ!?」
声高らかに名乗っていったと思いきや、突然悲鳴を上げて三人とも倒れていった
私は何もしてない。ちょっとイラッとしたのでハリセンで引っぱたいてやろうとは思ったがまだ何もしてない
それどころか不意を突かれたもので、私ともあろう者が少しばかり驚いてしまった
地面に突っ伏す三人の中の一人。ウソンボ……イルボ……ソンボンボ……なんだったか忘れてしまったがとにかく一人が震える声で言った
「す、すいません……ずっと正座してたもんで……足が……」
…………ダメだこりゃ




