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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
バンボの村の巻
20/44

記録の19 バンボの塔の守り神


 守り神に期待を込めて私はバンボの塔を目指す

 道中でいくらか魔物に遭遇したが私にとってはそこら辺に生えている草と何も変わらない。片っ端から切り捨ててやった


「リッツさんはお強いんですね」


「この程度で苦戦していては魔王討伐など夢のまた夢だからな」


 初めて魔物と出会った時、ラビトはギャーギャー喧しく叫びこの世の終わりのような顔をしていた

 しかし私の実力を見るなり安心したのか今ではすっかりと落ち着き堂々としている


「でもラビトの村の人達は大変ね。守り神様にお供えするためには魔物を乗り越えなきゃならないんだから」


「はい。なので村の中でも強い人たちだけが奉納に行くんです。けど最近、魔物が凶暴化してるって話を聞きました。これも守り神様に異変が起きてるのと関係あるかもしれません」


 魔物の凶暴化は恐らく魔王のせいだな。こうしている間にも世界では魔物による被害は増えているはず

 あまりのんびりもしていられん。とっとと神を倒し魔王討伐の旅を再開せねばな


 しかしバンボの村人達はそこまでの苦労を背負ってまで神を崇める必要があるのだろうか。守り神と呼ばれている割には具体的に何を守っているかなど聞いていないし神に対する疑念は膨らむばかりだ


 ーーいや待て。今、聞き捨てならない言葉が聞こえてきたぞ


「守り神に異変が起きているのか?」


 私が尋ねても返事は返ってこない。不審に思ったので二人の方を向くとラビトは目と口をみっともなく開き、スイは体を震わせ何やら怒っている感じだ


「……リッツ? なんで私達がバンボの塔を目指してるか知ってる?」


「知る訳ないだろう? 貴様が理由も話さず無理矢理村から連れ出したのではないか」


 まったく。話さなかった自分の責任を私に押し付けようとはとんでもない奴だ

 そもそも私がここまで来たのだって神と戦えるからで、理由が無ければこんな所まで来るはずがない


「さっきラビトが話してたでしょ? まさか聞いてなかったの?」


 事実を捻じ曲げるのも大概にしてほしい。私はここに来るまでにラビトから聞いたのは神が実在しているということだけでそこから先はーーーー


「……あっ」


 まさか私が神への闘志を燃やしている間にもラビトは話を続けていたというのか?


「おのれラビトめ! 私を嵌めたな!?」


「ええっ!? 私のせいですか!?」


「あなたが自分で仕掛けた罠に勝手にハマっただけでしょ!」


 要約すると守り神に異変が起きているのというのは体調を崩したとかではなく頭の方がイカれてしまってるらしいのだ

 このままではバンボの村にも影響があるのでは、と懸念したので村人達は落ち着きが無かったらしい


 スイに殴られた頬の痛みと引き換えに事情は飲み込めた

 だが私達がバンボの塔を目指す必要はあるのだろうか? だって私には関係ないことだろう?


 スイとの付き合いはまだ短いがこれまでの経験で分かったことがある

 スイは困っている人を見るといちいち首を突っ込んでいくかなりのお人好しだ


 私には魔王討伐の使命があるというのに……このままではいつ使命を果たせるのか分からない

 一刻も早く、スイを私にひざまずかせる必要があるな。その為にも神には私の力を証明する生贄となってもらおう


 そんなことを考えているうちに私達はバンボの塔の前まで辿り着いた


 塔の外に護衛がいる訳でもなく神がいる場所にしては酷く不用心というか……本当にここにいるのは神なのか? 自称神とかではないのか?


 扉を開けて中に入ると大広間が広がっている。テッセ王国の城にある国王の間に引けを取らない程広く、その辺の無駄にスケールがデカいのはまぁ……神らしい気もする


「いつもはあそこの祭壇に食料をお供えしてるんです。そしてその奥の扉の向こうに神の間があってーー」


「守り神とやらがいるということか。確かに怒鳴り声が聞こえるな」


「とりあえずこの扉の奥にいるのは間違いないんでしょ? ならとっとと真相を確かめに行きましょう。ほらリッツ!」


 私の背中を押すな。貴様さっきまで先頭を飛んでいた癖にここぞとばかりに先を譲りおって

 だがまあ悪い気はしない。スイが私の力を頼っているのだからな

 剣を構えて扉を破壊しようとした時、ラビトが引き止めようとした


「待ってください! 守り神様に謁見出来るのは選ばれた人だけでーー」


「知らん」


 ここまで来たのに謁見の許可を得るまで待てというのか? そんなもん待っていられるか。無視して私が剣を振るうと当然、扉は粉々に砕け散り私の前には新たな景色が広がる


「別に壊すまではしなくて良かったんじゃないの?」


 フフフ。驚いたかスイ、そしてラビトよ。だが貴様等だけではないぞ


 私の渾身の一撃はこの扉の向こうにいる神にもしっかりと届いた。その証拠に神は全員恐れおののきーー


「だからさぁ!! 俺がボーカルだっつってんだろ!?」


「ふざけるな! お前にはボーカルなど務まらない! せいぜいタンバリンだろ!」


「そうだ! タンバリンだ!」


 待て待て。その言い方だとタンバリンを馬鹿にしているように聞こえるぞ。確かに異色の存在ではあるがタンバリンにはタンバリンの役割がしっかりあってそれらが噛み合うことによって力を発揮しーーーーってそうじゃない


 無視だ、ガン無視だ。私の渾身の一撃を神は無視して議論に夢中になっているのだ

 人を無視するなんて最低の奴らだ。こうなったら体に直接訴え掛けて2度と無視出来ないようにしてやる必要があるな


「私を無視するなぁぁぁぁぁ!!!」


「……えっ? なんだお前はーーって、ぐあぁぁぁぁ!!」


 少々不意打ち気味ではあるが私は神に斬りかかり、そして倒した。あっという間に私を囲むように血だるまが3つ出来上がる


「フン! 神と聞いたので期待していたが……口程にもない」


「なにカッコつけてんのよバカ! これじゃ話を聞くどころじゃないじゃない!」


「安心しろスイよ。殺してはいない」


「瀕死じゃ同じようなもんでしょ!?」


 急いで回復に向かうスイを私は黙って眺めていた。ラビトはというと終始口を開けっ放しでただただ呆然としていた


 神の間には守り神の断末魔だけが響いている。スイの回復は相変わらず厄介だ


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