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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
ヴァーヌ・ユ・タラコット・リヴァルヴューヌの巻
17/44

記録の16 さらば露麗魂また会う日まで


 結果から言うと圧勝だったわ

 幼女ブーストのかかった露麗魂相手にゴーレムさんはこれ以上ないってくらいに粉々に砕かれた


 そもそもリッツ@幼女の笑顔は世界を救うが最初の一撃でトドメ刺したんだけどね。ってかハリセンで岩石砕くってどんだけ馬鹿力よ信じらんない


 あとは目も当てられないくらいにボッコボコ。リンチという言葉すら生温いと思ったわ


 勝手に住処を荒らされた上に奇妙な集団によって命を奪われたゴーレムさんには同情するわ


 けどリッツを正気に戻す為にはそれしか無かったの。お互いに運が悪かったってことで納得してちょうだい


 勝利の雄叫びを上げながら露麗魂の百鬼夜行はヴァーヌ・ユ・タラコット・リヴァルヴューヌに帰るまで続いた


 格好を統一してよく分からない言語を話しながら街中を闊歩かっぽする集団だもの


 周りからの視線が痛いほど突き刺さっていたのは言うまでもないわよね?


「お待たせして申し訳なかったヒリカ殿! こちらがご所望のチョリソーでございます!」


「ふわぁ……チョリソーだあ……」


 差し出されたチョリソーにヒリカちゃんは目を輝かせている。よっぽどこのぬいぐるみが気に入ってたのね


「……ではリッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿。ヒリカ殿へ渡してくだされ」


「なっ、何を仰るか変態紳士@幼女見守り隊殿! お主がそのまま手渡せば良かろう!」


 ……あら? またなんか茶番が始まる予感。いいからとっとと済ませなさいよ。あんたらのやり取り見るのもそろそろお腹いっぱいで吐きそうだわ


「いいや、今回のMVPはお主だ。その手柄を横取りしようなど我は思わぬよ。皆もそうだろう?」


「そうだそうだ!」

「リッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿に敬礼!」

「敬礼!」


「うっ……うぅ……お主らぁ……我は本当に良き仲間に巡り会えた……この出会いは一生忘れぬですぞぉ……」


 一時は仲間割れするかと思ったけど雨降って地固まるってやつかしらね

 出来れば固まることのないままグッショグショの泥水で終わって欲しかったけど


「リッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿。泣くにはまだ早いでござるぞ! まずはチョリソーをヒリカ殿へーー」


「……うむ、……うむ! ではヒリカ殿、チョリソーでござる!」


「えっへへ……ありがとう! おにいしゃん!」


「グッハァ!!!」


 あーあー。ヒリカちゃんの笑顔見たら全員鼻血出してぶっ倒れたじゃない。ちゃんと店内掃除してから帰りなさいよ


 まぁなにはともあれこれでリッツも目を覚ますことでしょう

 本当に人生で一度あるかないかレベルの気持ち悪さだったわ


「では皆の衆! これより我らの勝利を祝って乾杯と行こうではないか!」


 …………はぁ? ちょっと待って変態紳士@幼女見守り隊。まだ何かやらかすつもり?

 そんなことされたら私の身が持たないわよ? 流石にこれは避けなければならないわ


「……リッツ? 私達は旅を続けなきゃだし忙しいわよね?」


 淡い期待を胸にリッツに尋ねる。もしリッツが正気に戻ってたら今すぐにここから去ってくれるはず


 しかしそんな上手いこといかないのも人生


「何を言うかスイ殿。勝利の後に宴は付き物! たまには休息も必要でござるぞ!」


「そ、そんなぁぁぁぁ!!」


 そこからは本当に地獄ーーいや、地獄の方がまだ優しかったでしょうね

 酒の入った露麗魂は本当に質が悪かったわ


「いやーっ! リッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿もすっかり我らの仲間として成長しましたなぁ!」


「こんな素晴らしい世界を教えてくれた皆には本当に感謝しかーーーーううっ!」


「ハッハッハ! リッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿ぉ? ビタミンNが溢れてるでござるぞぉ?」


「こ、これはビタミンNではなくてビタミンAでござる!」


「嘘をつくのが下手ですなぁ! それはどう見てもビタミンNでござるよぉ!」


「おりょりょおぉ!? これは1本取られましたなぁ!」


「「「ウワッハッハァ!!」」」


 何笑ってんのよ


 そもそもAとかNとか意味わかんないしどっちでもいいわよそんなの。ってかなんの違いがあるのよ


 そんな感じで宴は朝まで続いた。私はというとジュースを飲みながらただ黙って時が過ぎるのを待ったわ


「ではリッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿。我らは次の幼女を守る活動に出るでござる」


「そうでござるか……。短い間だったがお世話になりましたな」


 ……やったわ。どんな地獄にもひたすら耐え続け、ついにこの時が来たのね

 この長い長い戦いを乗り越えた私は誰にも気づかれることなく片腕を天高く掲げた


 露麗魂との別れの時。リッツはなんか泣きそうな顔してるけど私は笑顔とか達成感を思いっきり吐き出したくてしょうがないわ


「……また」


 リッツ。これ以上余計なこと言わないで


「ん? 何か言いましたかな?」


 ほら聞こえちゃったじゃない。変態紳士@幼女見守り隊が振り返っちゃったじゃない


「……また、我らはどこかで会えるだろうか……」


「……心配する必要はない。我ら同じこころざしを持つ者同士、次に出会う場所など決まっておろう」


「幼女 るところに!」


「露麗魂在り!」


 ……アホくさ。カッコよさげに言ってるけどあんたらは精々街灯に群がる虫よ

 やっと終わりかと思ったら最後に強烈なの貰ったわね


 時間にすれば1日にも満たない短さだけど濃さはダントツ。この先こんなことはないでしょうね


 ないことを願うわ


 露麗魂達と別れた後のリッツはと言うと……


「むっ? 私は一体何を……? なんだか長い夢を見ていた気がするのだが……」


「おはようリッツ。そしておかえりなさい」


「おかえり……? スイ、なんだかやつれているようだが何があったんだ?」


「色々あったのよ……色々ね」


 出来ることなら思い出したくない。それに今までのことをリッツに話したら間違いなくブチ切れるに決まってるわ


 世の中には知らなくていいこともあるのよ


「そうだリッツ。さっき道でこんなのを拾ったのよ」


 本当はゴーレムを倒した時に出てきたんだけどね

 それは土色に光る小さな宝石だった


 なんか珍しそうなものだったしついでに拾っておいたのよ


「これは宝石か? 持ってても意味は無さそうだがせっかくだ、持っておくとしよう」


 宝石を受け取ったリッツは腰の巾着袋に仕舞った


 やっと正気に戻ったリッツと私の旅はまだまだ続く

 どうかこれからはもっと平和な旅になりますように


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