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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
ヴァーヌ・ユ・タラコット・リヴァルヴューヌの巻
16/44

記録の15 カラメ洞窟

前回の話でリッツがどうかしてしまったので今回はスイの視点でお送りさせていただきます


 前回の終わりで何が起きたか分からなかった人の為に状況を整理するわ


 私自信、いきなり過ぎて何が起きたか分からなかったしね


 まずヒリカちゃんに手をあげようしたリッツの前に露麗魂という組織が現れてどこかへ消えた


 そして帰ってきたと思ったらヒリカちゃんに対してやけに従順になったリッツだった


 そのまま露麗魂の人達と一緒にカラメ洞窟へ向けて走り去って行った


 ……うん。全然分からないわね


 リッツは一体何されたのかしら

 ってこうしちゃいられない。私も追いかけないと!


 店長さんにカラメ洞窟の場所を聞いてなんとか辿り着く

 最近はリッツがいたから良かったけど1人ってのはやっぱり不安ね


 ここまで結構ビクビクしながら来たわ


 洞窟の中を進んで行くと魔物の数がチラホラ。でも全員気を失っていたわ


 きっとあいつらがなんかしたのね


 まるで踏み荒らされた花壇みたいだったわ


 更に先へ進むと何か雄叫びのようなものが聞こえる

 まぁ正体は分かりきってるけど


「うおおおおッエイ! うおおおおッエイ!」

「ッサア! ッサア! ッサア! ッサア!」


 ……見つけた。でも出来れば見たくなかったわ


 なんか奇妙な掛け声と踊りで暴れ回ってる露麗魂。その中にリッツの姿もあった


「リッツ@幼女の笑顔は世界を救う殿! 完璧ですぞ!」


「ンンッフッ! お任せくだされプリプリ@保父さん志望殿! この程度、我にかかればチョチョイのチョイですぞ!」


 気持ち悪い。これが目の前に広がる光景を率直に表した感想よ


 その@なんとかってのはなんなの? 全員がそんな覚えにくい名前してるの? そんでリッツはいつの間に着替えたの?


 もう見てらんない。早くリッツを正気に戻さないと


「ちょっとリッツ! 何バカみたいなことやってんのよ! 変な格好までして!」


「フォオッフフッ! これはこれはスイ殿。この隊服の良さが分からぬとはお主もまだまだですなぁ!」


 すっごい気持ち悪い笑い方してる。ぶん殴ってやろうかしら


 あぁ……だめだ。ハリセンはリッツが持ってるわ……


「それと我の名はリッツ@幼女の笑顔は世界を救うですぞ! そこのところ勘違いしないでくだされフフッ!」


 いつの間にか変なフレーズくっついてるしもう嫌……。私は諦めて遠目から彼らを見ることにするわ


 その間も露麗魂の百鬼夜行は続いていく。するとメンバーの1人が声を上げた


「ややっ!? あの魔物ぬいぐるみを持ってますな! さてはアレがチョリソーでござらんか!?」


「なにおぅ!? ついに不届き者を発見しましたな!」


「幼女の笑顔を曇らせた罰、重く受け止めてもらうんですな!」


 最後のセリフはリッツーーーーリッツ@幼女の笑顔は世界を救うのセリフよ


 マジで露麗魂に何されたのかしらね


「皆の者! 掛かれぇぇぇぇ!!」


「うおぉぉぉぉぉ!! 粛清! 粛清! 粛清!」


 あんな珍妙な集団にいきなり襲いかかられたらさぞ恐ろしいでしょうね。魔物ながら同情するわ


「んぁ? なんだテメーら? っておわぁぁぁぁ!!」


 あっという間に露麗魂の波に飲まれた魔物。ご愁傷さまね


「やった! 取り返した! 我らの勝利だぁぁぁぁ!!」


 また雄叫び。こいつらテンション上げっぱなしで疲れないのかしら

 何はともあれこれでヒリカちゃんのお願いも無事に達成出来たわね


 そうすればリッツも元に戻るでしょう……多分……

 しかし私の安堵はすぐに打ち砕かれることになった


「まったく……どこのどいつだ。さっきからやかましくて昼寝も出来やしない」


 ズシン、ズシンと地面を揺らすような大きな足音。それだけで相手が大きい奴だとすぐにわかった


 そして洞窟の奥から顔を覗かせたのは5メートルは悠に超えてるであろう大きなゴーレム


 このサイズ、そしてこの百鬼夜行を見ても動じない肝の座りっぷり。間違いない、こいつがこのカラメ洞窟のボスね


 けれど今の私にとってはどんな魔物だろうと恐れる対象にはならなかった


 何故かって? 目の前にもっとヤバイ化物共がいるからよ

 あいつらを散々見たあとに他のものを見ても全部がカワイイ小動物に見えるわ


「なにおぅ!? 元はと言えばお主の魔物がイタズラするからですぞぉ!? 監督不行届でござる!」


 そう言って真っ先にゴーレムに食って掛かったのはリッツ@幼女の笑顔は世界を救う。どれだけ頭がおかしくなってもその根っこは変わらないのね


 ……言葉遣いは気持ち悪いけど


「……なんだ貴様。その気持ち悪い喋り方は」


 ゴーレムさんごもっとも


「なんだとお主ぃ!? このフルマリエ溢れるバリオステッテでカンムマスなトイーツが分からぬと言うのかぁ!?」


 ここに来て知らない単語がポンポン出てきたわ。もう何が起きてるのか私には理解出来ない


 ※「なんだと貴様ぁ!? この気品溢れる軍事的で崇高な言葉が分からぬと言うのかぁ!?」と言っています


「……貴様は一体何を言っているのだ……?」


 重ねて言うわ。ゴーレムさんごもっとも。私も何を言っているのか分からない


「こうなれば話し合いなど無意味! さあ同胞よ! この愚かな岩石巨人に鉄槌を下そうではないか!」


 どうやらリッツは痺れを切らしたようね。沸点が低いのも変わらずだわ


 けど不思議なことに他の露麗魂はさっきから黙ったままね。リッツが飛び出したから見守っているのかしら?


「……いや、結構でござる」


「何故だワルド@時を永遠に止めてしまいたい殿! こいつは敵! 倒すべき相手ですぞ!?」


「だって標的ターゲットであるチョリソーは既に回収したでござるし……これ以上戦う意味はないでござる」


「そんな訳ないでござろう! 他の皆は戦うでござるよなぁ!?」


 あぁ……リッツが慌て始めたわね。露麗魂は固い絆で結ばれた組織だと思ってたけどリッツの性格はそこに合わなかったってことかしら


「めんどくさいですぞ……」

「早く帰ってヒリカ殿の笑顔が見たいでござる」

「来週の柑橘系アイドル、ミカンスプラッシュのライブ楽しみですなぁ……」

「おお! ぽんかん@ゆずゆず推し殿も行くでござるか! 早くビタミンA絞り出したいですな!」


 温度差すげーーーーー!! さっきまで全員目が血走ってたのに今は死んだ魚の目じゃないの!


「そんな……そんな……」


 段々とリッツが孤立していく。可哀想で目も当てられないわ


 けどこのまま消化不良なんてことになったらリッツは元に戻らないかもしれない。それだけは避けたいわ


 ここはこの名女優スイが人肌脱いでやろうかしら


「何を甘えたこと言ってるのこのロリコン共がぁぁぁぁ!!」


「ッ! スイ殿!? どうしたでござるか!?」


 露麗魂達は一斉に私に注目する。あとリッツ、その『スイ殿』ってのやめて本当に気持ち悪い


「お前達の目的はヒリカちゃんの笑顔だけを守ることか!? 違うだろ! 世界中の幼女を守るんだろ! 今ここで奴を倒すことはそれに繋がる! 逃げたい奴は逃げればいい! しかしそんな腰抜けに明日から露麗魂を名乗る資格はない! そんなものはタダのファッションロリコンだ! 違うかぁ!?」


 私の叫びは洞窟内に響き渡る。もしかしたら通路を伝って外にまで聞こえたかもしれないわね。恥ずかしいったらありゃしないけどこれもリッツと私の為よ


 暫く静寂に包まれた後で声を上げたのは変態紳士@幼女見守り隊だった


「あの勇ましい姿……昔、漫画ぶんけんで見たことがある……。あの姿はまさに伝説の名将『水神すいじんの女神』様だ!」


「なぬっ!? あの水神の女神様か!?」

「なんてことだ……まさか実在していたなんて……」

「言われて見ればそっくりですな……」


 露麗魂共がざわめき始める。水神の女神って誰よ。私はそんな奴知らないしもちろん本人でもないわよ


 けど上手くいったことは確かなようね。おかげで露麗魂の目に闘志が宿ったわ


「……話は終わったのか?」


 そっちのけな上に茶番に付き合わせて悪かったわねゴーレムさん


 けどごめんなさいね。何も言わずにやられてちょうだい


「幼女の笑顔は!」

「命のみなもと!」


「幼女の明日は!」

「我らの明日!」


「仇なす者には!」

「粛清を!」


「……どうやらやる気のようだな……。しかし俺は魔王様より選ばれし五闘神のゴーレム。簡単に倒せると思うなよぉぉぉぉぉ!」


 露麗魂VSゴーレム。化物同士の戦いが始まろうとしていた


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