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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
ヴァーヌ・ユ・タラコット・リヴァルヴューヌの巻
15/44

記録の14 ようこそこちら側へ


「む……。ここは……どこだ?」


 記憶の最後に残っているのはあの不気味な露麗魂とかいう集団の恥ずかしいセリフ


 情けないことに奴らの攻撃をくらってしまったということか


 目を覚まし辺りを見回すとそこには有り得ない光景が広がっていた


 私がいるのはピンクの床の上。そびえ立つはお菓子の塔。空に浮かぶは綿菓子のような雲。ユラユラと静かに揺れる液体はカスタードか?


 見ているだけで胃がもたれそうになるほど甘い世界が広がっていた


「目が覚めたでごさるか」


「きっ、貴様! 一体私に何をした!?」


 誰もいなかったはずなのにどこからともなく現れたのは変態紳士とか呼ばれていた奴だった

 なぜだか淡い光を放っていて妙に神々しく見える


「なぁに。別に危害を加えるつもりはないでござる。ここはあまあまプリティーワールド……お主に幼女の素晴らしさを説く世界でござる」


「幼女の素晴らしさだと? ふざけるな! 私の好みはーーーー」


 ムキになって言い返しそうになってしまったがここはグッと堪える


 『私の好みはナイスバディーのお姉さんだ!』なんて会ったばかりの奴に堂々と言い放つことでもないし好みを暴露するなんて恥ずかしい


「お主の好みなど関係ない。ここに来た以上拙者達の仲間になる以外の選択肢はないでござるからな」


 どうやら話し合いという訳にはいかないみたいだ

 しかしもとよりそのつもりもない


「邪魔をするなら斬るまでだ」


 幸い剣は手元にある。他の奴らの姿も見えない

 1対1の勝負ならば天地がひっくり返ってもこの私が負けることは無い


「言ったはずでこざるぞ? 危害を加えるつもりはない、と」


「フンッ。怖気付いたか? 今、この状況を解決するのに戦う以外の選択肢があると思っているのか?」


「……野蛮な男だ。やはり今のお主を幼女に近づける訳にはいかないでござるな。では同士よ! 姿を現すがいい!」


 両手を天高く掲げ変態紳士殿が叫ぶ。すると私と奴しかいなかったはずの空間に1人、また1人と同じ格好をした奴らが現れた


 仲間を呼んだということか。たしか数は10人程度だったはず


「なるほど。確かに『戦い』ではないかもな……」


 1人の獲物を数で圧倒する

 これは『狩り』だ


 次々と出現する仲間を見ていたらいつの間にか囲まれてしまった

 だが甘かったな。たったの10人程度で私に勝てると思うとは片腹痛し


「一瞬で片付けてくれる!」


 剣を抜き目にも留まらぬ速度で駆け出した私は迫り来る露麗魂の連中を次々と倒していく

 奴らは自分が斬られたことをあの世で知るだろう


 剣を仕舞い奴らの死体を確認しようとした時、ある違和感に気がついた


「おかしい……血が出ていないだと……?」


 たしかに剣は奴らを切り裂いた。しかし血の一滴どころか怪我を負った様子も見られない


「あまあまプリティーワールドに於いて争いや血など不要でござる。武器も魔法のステッキしか認められていない」


「なっ!? 貴様! 何故立ち上がれる!」


「答えは簡単。我らを傷つけられるのは幼女のみだからだ」


 全員倒したつもりだったが奴らは何事も無かったかのように立ち上がった


 この私の攻撃が効いていないだと? 有り得ない! そんなことあるはずがーーーー


「……そういうことか」


 ここはあまあまプリティーワールド。すなわち敵の領域テリトリーなのだ


 ここでは奴らがルール。私の常識が通用しないのも十分に頷ける

 ここに連れてこられた時点でまんまと奴らの策にハマってしまったというわけだ


 だがこんなことで心を折られるようならばテッセ王国で最強を名乗る資格などないだろう


「ほほう。まだやる気か」


「この程度で諦めていては最強の名が廃るのでな」


「良かろう。ならばこれでどうだ?」


 変態紳士@幼女見守り隊殿が再び両手を掲げると先程と同じように仲間が現れる


 2人……3人……ちょっと待て。数が馬鹿げているぞ

 10とか100とかそんな次元ではない


 私の周りを取り囲むのはとんでもない数の露麗魂メンバーだった

 その数は恐らくーーーーいや、数えることなど不可能だ


 私の理解が追いつかないうちにあまあまプリティーワールドは奇妙な男達に埋めつくされた


「フッ……フフフフフ。面白い。やってやろうではないか」


 露麗魂などという意味わからん集団に絶対負けるものか

 覚悟を決めて剣を構えた時だった


「捕まえたぁぁぁぁ……」


「んなっ!?」


 背後から掴み掛からてしまった。私の全力をもって振りほどこうにも力は奴の方が上だった


 なす術なく地面に抑えられてしまった私に変態紳士@幼女見守り隊殿が歩み寄ってくる


「クソッ! 離せっ! 何をするつもりだ!?」


「心配ご無用でござる。ただお主は我らと我らが幼女かみの怒りに触れた。幼女に手をあげようなどという危険思想は浄化せねばならぬ」


 そう言って変態紳士@幼女見守り隊殿は懐から何かを取り出す。そしてそれを徐々に私の顔まで近づけてきた


「何をするっ! や、やめろぉぉぉぉぉ!!」


「……ようこそ。こちら側へ」


 そこでまた、私の意識は途切れた


 露麗魂には勝てなかったよ……


「リッツ殿は気づいていたでござろうか。段々と我の名をフルネームで呼ぶようになっていたことを……。その時点で彼には素質があったのだ……」


「力を貸してくれてありがとう同胞よ。では引き続き、世界の幼女の笑顔を守ってくれ」


「うおぉぉぉぉぉ!! 変態紳士@幼女見守り隊殿ぉ!」

「仲間が増えましたな!」

「バンザーイ! バンザーイ!」




「あっ! みんな戻ってきたわ! リッツ大丈夫なの!? ねぇリッツったら! 」


「心配かけて済まなかったな妖精殿。だが危害を加えてはいないので安心してくだされ。さぁヒリカ殿、もう一度リッツ殿にお願いしてくだされ」


「ふえぇ? う、うん。リッツおにいしゃん。ヒリカのチョリソー……­取り返してくだしゃい!­」


「……お任せ下さい神よ。どんな奴が相手だろうとこのリッツの命に変えても取り返してみせましょう」


「よく言ったリッツ殿! では同胞よ! カラメ洞窟へ向かうぞ!」


「おおおおおおおおおッッッ!!」


「ちょっ! どこ行くのよリッツ! リッツぅぅぅぅぅ!?」



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