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魔王討伐に近道はない  作者: 縞虎
ヴァーヌ・ユ・タラコット・リヴァルヴューヌの巻
12/44

記録の11 メニュー画面


 自分の住む街の名前すら碌に言えない案内人をスルーして街を歩く私達


 するととある店の前でスイが止まった


「ねえリッツ。ちょっとここ寄っていきましょうよ」


「……武器屋、か? 武器ならあるではないか」


 そこは武器屋だった。ショーウィンドウの中には剣やら斧やら、その他にも見たことのない武器が沢山揃っていて私も少しばかり目を惹かれる


「リッツの武器は恐ろしすぎるの! 毎度毎度回復させられる身にもなってちょうだい」


 回復はスイが勝手にやっているだけではないか

 なんの情もない相手に何故そこまで気をつかってやる必要があるのか私には分からない


「必要ない。私は既に2本の剣を持っているのにこれ以上増えてしまっては戦いに支障が出るではないか」


「なら仕舞えばいいじゃない」


 簡単に言ってくれるな。剣を仕舞う場所なんてどこにも無い。腰に差しておくしかないだろ


「ほう。そんな場所があるなら是非知りたいものだな。それとも貴様が持ってくれるとでも言うのか?」


 若干のイラつきを覚えつつ徴発的な態度でスイに尋ねる


 しかしスイは私の態度など意に介さずーーというか『何をそんなに怒っているの?』とでも言いたげな顔だ


「じゃあまずメニュー画面を開いてちょうだい」


「……メニュー画面ってなんだ?」


「スタートボタンを押すのよ」


「……スタートボタンってなんだ?」


 画面を開く? ボタンを押す? ここは道のど真ん中で開けるような画面が無ければ押せるボタンもない


 というか画面を開くってなんだ? 割るの間違いじゃないのか? それとも何かの暗号か?


 しかしスイがふざけている様子も見られず、むしろ当然といった顔をしている


 何を言っているのか全くもって理解不能だがここで無知を晒すわけにはいかない

 そんなことをすればせっかく築いた上下関係が無駄になってしまう


 ここは意地でもスタートボタンとやらを押してメニュー画面を開くのだ


「うおぉぉぉぉ……メニュー画面よ、開け! 開くのだ!」


「そこまで気合い入れる必要ある!?」


「黙っていろ! 集中が途切れる!」


 私の集中を乱そうったってその手には乗らないからな

 スイがなんと言おうと気にしてはいけない

 今はメニュー画面に全神経を注ぐのだ


「開けぇぇぇぇ!!」


 ポン!


 そんな音が頭の中で鳴ったような気がした。そして私の目の前には縦長の窓が浮かび上がっていて沢山の項目が並んでいる


「なんでそこまで必死になったのか分からないけど……とりあえずメニュー画面が開けたわね」


 ……勝った。私は何も知らない状態から見事メニュー画面を開いて見せた

 己のプライドを賭けたスイとの戦いに勝利してみせたのだ


「フハハハハ!! 見たかスイ! 私の実力を!」


「……初めて見るリッツの笑顔がこんなにも情けない瞬間になるとは思わなかったわよ」


 頭を抱えて落ち込むほど悔しかったとは…………済まなかったな

 しかし厳しい戦いだった。こんなことを皆が自由に行えるとなると……外の世界は恐ろしい


 いや、私が井の中の蛙だっただけの話か。これを機にまた1つ賢くなれたことを誇ろう


「……で? 次はどうすればいいのだ?」


「『道具』って項目があるでしょ? それを開いて」


「これか?」


 スイの言う通り『道具』と書かれている項目に軽く触れてみると画面が切り替わった


 剣士の剣、斬魔の剣、薬草、解毒草ーーーーなんだか身に覚えのない物まであるのだが……私はそんなものどこにも持ってないぞ


「そしたら仕舞いたい物を『しまう』ってやれば大丈夫だから」


 説明が雑になってきているがここまで来た私にはもう恐れるものなど何も無い


 使わないものと言えば斬魔の剣か。これは本当に必要な時にしか使いたくないからな


「斬魔の剣……しまう……っと」


 その時だった。腰に差していたはずの斬魔の剣が一瞬にして消えてしまったのだ


「なっ……!? スイ! 斬魔の剣が消えたぞ!?」


「仕舞ったんだから当たり前じゃない」


「ふざけるな! せっかく父から授かったというのに! ……貴様騙したなぁ!」


「意味わかんないわよ! その巾着の中にでも入ってるんじゃないの!?」


 そう言ってスイは私の腰に付いてる巾着を指さした

 馬鹿を言うな。あの剣がこんな小さな巾着に入るわけがないだろ


 何が『しまう』だ! これでは『けす』ではないか!

 しかし一応言われた通りに巾着を覗いてみる


 するとーーーー


「おおっ! 帰ってきた! 帰ってきたぞ!」


 斬魔の剣は小さく姿を変えて巾着の中に入っていたのだ。危うく父からの大切なプレゼントを失くしてしまうところだった


 斬魔の剣を取り出すと小さかった姿から元の大きさへと戻った

 そして今度は巾着へと近づけてみるとまた小さく姿を変えて中へと入っていった


「……というか最初からこうすれば良かったではないか!」


「こんな常識を知らなかったあなたに驚きよ!」


 常識……だと……?


 こんなに面倒臭い作業が外の世界では常識と言えるほどに浸透しているのか


「やはり外の世界は恐ろしい……」


「もう疲れた……」


 ため息をついてどっと疲れた顔を見せるスイ

 メニュー画面という新たな知識を得た私だったがこんなに危ないものを2度と使う気にはならなかった


読んでくださった方、ブクマもしていただいた方。本当にありがとうございます!

書き溜めが尽きてしまったので次の更新まで少々お時間いただきます

宜しければ感想や評価などもお願いします!

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