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恋をした相手は、同級生のAV監督でした。  作者: 香坂 蓮
偏屈小僧に天使は微笑む
35/38

3-11 ~ エピローグ 恋人達の日 ~

本日複数更新のため、ご注意ください。 


最終話です。どうぞ!


8/23 改稿しました。

 終業式の日、桜木高校の生徒達はざわついていた。


 それは、長期休暇直前の浮かれた雰囲気というだけではない。多くの生徒が、前日に行われた悠斗の記者会見のことを知っていたのだ。


 悠斗の記者会見を生で全て観たという生徒は、さすがにほとんどいない。しかし、インターネットが発達した世の中である。記者会見をしたという事実はすぐに広まり、ネット上で拡散された記者会見の映像を多くの生徒が見ていた。


 好意的な者、無関心を装う者、そして悠斗が嘘をついていると邪推する者。


 受け取り方は人それぞれである。 


 そんな中、笑麻と親しくしている友人達は、何も言わなかった。


 普段通りの会話を笑麻に投げかけ、その傍らからは決して離れない。


 彼女達の気遣いが、笑麻にはとても嬉しかった。


………

……


 終業式と言えば、どこの学校でも恒例の、校長先生によるありがたくも長ったらしいお話である。


 高校生らしい、節度ある行動を求めるよくある話。しかし、その話の中で「インターネット上でむやみに人を傷つけるような言動をしない」という注意が出たのは、きっと悠斗の件があったからであろう。


 その後は特に変わったこともなく、終業の時間を迎える。一緒に帰る約束をしていた綾香と合流し、友達に年末の挨拶をしながら笑麻は家路についた。


 家に帰った笑麻は、制服のままベッドへと倒れ込む。

 

 自分ではそんなつもりはなかったが、やはり緊張していたのだろう。冬休みの始まりは、笑麻に安堵をもたらしていた。


 明日は12月24日、クリスマスイブだ。


 残念ながら、悠斗と一緒に過ごすことは無理そうである。


 今も悠斗は、取材を受けるなど、必死に戦っているはずだ。そんな悠斗を邪魔したくはない。


 日付が変わる頃に、『メリークリスマス』とメールを送ろう。少しくらい、悠斗が気を緩めるタイミングも必要なはずだ。


 返って来る返事は、きっとひねくれているに違いない。例えば、『クリスマスは今日じゃない、明日だ』とか。


 そんないつも通りの、少しひねくれたやり取りを楽しみにしつつ、笑麻はいつの間にか眠ってしまっていた。


 冬の冷たいベッドが、少しずつ温められていった。




 流れるように時は過ぎ、十二月も二十八日になった。


 街を彩っていたクリスマスイルミネーションも片づけられ、人々は今年の終わりを実感している。今日が終われば、年末年始の休みに入るということで、ラストスパートをかけている人も多いことだろう。

 

そんな中、笑麻は緊張の面持ちでカフェオレをすする。

 

――カラン、コロン


 小気味いい音と共に開く扉。


 時が止まったかのような時間が流れ、ついに待ち人がその姿を見せた。


「悠斗くん……久しぶり!」


 いつかも利用した喫茶店の半個室。長く待ち焦がれた相手との再会に、笑顔と涙をこぼれた。


「……久しぶり」


 一言。


 しかし、その言葉に万感の想いを込めて、悠斗は席に着く。


 記者会見が終わってからは、本当にバタバタと時間が過ぎていった。


 何件ものメディアから、取材を受けた。


 AV業界への誤解を解くため、またよりよいAV業界へと足を踏み出すため、全力で頑張ってきた。


 悠斗が、隠れることなく堂々と取材に応じたため、メディアの報道は心なしか好意的なものへと変わってきている。また、悠斗を付け回すような記者の姿も消えた。


 数日前には、さくらが被害届を取り下げ、同時に謝罪文を公表した。


 AVへの出演強要が嘘であったことを告白するその謝罪文には、全ての責任が自分にある旨が書かれていた。


『私の軽はずみな嘘が大きな問題となり、多くの方にご迷惑をおかけしてしまいました』


 自らの身勝手さを謝罪する文章。


 これまでAV業界を非難しつづけてきたマスコミは、現在その矛先をさくらに向けていた。なお、当のさくらは警察にて取り調べを受けている。


「大変だったね……」


 悠斗から、その後の話を聞いた笑麻は、しみじみと言葉を漏らす。


 目の前に座っている悠斗が、以前よりも少し大きく見えた。


「君に……お礼を言いたい」


 カフェオレを飲み干した悠斗が、居住まいを正して笑麻を見つめる。


「君が側にいてくれたから……僕を支えてくれたから、僕は戦うことが出来た。僕一人では、あの場には立てなかった。」


――本当に、ありがとう。


「本当に……大変だったね!頑張ったね!」


 涙はもはや、止めることが出来なかった。


 大いに泣き、しかし微笑みを浮かべる笑麻に、悠斗は困ったような表情でハンカチを渡す。


 しばし二人は、言葉を交わすことなく見つめ合う。


 喫茶店のマスターがそっとテーブルにカフェオレを置き、奥へと戻った。


 サービスです、という言葉を残して。


「来年のクリスマスは……どこかに行こうか」


 唐突に、悠斗が告げる。その視線は笑麻を捉えていた。


 一瞬驚いた顔をした後、笑麻はイタズラっぽく笑う。


「知ってる?クリスマスって……恋人達の日なんだよ?」


「……だから誘ってるんじゃない」


 少し顔を赤らめ、ぶっきらぼうに答える悠斗。


 笑麻の顔が太陽のように輝く。


 すっかり見慣れたそのエクボに、悠斗は目を細めた。


~End~ 

 『恋をした相手は、同級生のAV監督でした。』をお読みくださり、本当に、ありがとうございました。


 皆さまのおかげで、なんとか完結にまでこぎつけることが出来ました。


 これまで、途中で挫折してきてしまっていただけに、完結まで書くことが出来たのは感動の極みです。


 またいつか、違う作品でお会い出来れば、と思います。


 この物語も、続編が書けたらいいな、なんて思っていたりもします。


 出来ることならば、感想や評価、アドバイスなど頂けると嬉しいです。泣いて喜びます(´;ω;`)


 それでは!本当にありがとうございました。


 香坂蓮でしたー。

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