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恋をした相手は、同級生のAV監督でした。  作者: 香坂 蓮
偏屈小僧に天使は微笑む
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3-4 電話越しの大好き

 時としてマスコミの追及の仕方は、目を背けたくなるほどに厳しいです。


 最近は、プライバシーとかの問題で少しマシになってきましてけど、まだまだ考え直さなければいけない部分も多いと思います。


 それでは、どうぞ!


 時として、最悪な予想ほど当たってしまうことがある。


 まるで言霊が存在するかのように、自分の言った悪い想像がそのまま現実になってしまった時、人は必要以上の後悔に苛まれることになる。それはまさに、信二の口からこぼれ出た言葉に集約されるだろう。


「あんなこと言わなきゃよかった」


 視線の先、窓の外には十数人の人だかりが見える。


 三脚にカメラ、さらには音声を拾うための大きなガンマイク。大半の人間が着ているダウンジャケットが、マスコミであることを示すユニフォームにすら見えた。


 確かに信二は、悠斗に対してマスコミの動きが本格化する可能性を告げた。しかし、それはあくまでも最悪の場合を想定したつもりであった。


 自分達は全国に名の知れた有名人でもなければ、凶悪犯罪者でもない。さらにいえば、自分達はまだしも悠斗はまだ未成年だ。


「この時間に来るってことは……悠斗にカメラを向ける気か?」


 平日の朝早く、高校生ならば通学のために家を出なければいけない時間だ。


 腹の底で怒りの感情が渦巻く。


 今すぐ出て行き、追い散らしたいという気持ちを信二はなんとか抑え込んだ。ここでそんなことをすればマスコミの思う壺である。


「あなた……」


 気が付くと、すぐそばに妻である香織の姿があった。いつもほわんとしている表情が、今は不安そうである。慰めるようにその肩をさすると信二は言う。


「もうしばらくしたら、俺が出て対応する」


 一家の大黒柱として、矢面に立つのは自分であるべきだ。

 

 そんな自負心が、今の信二を支えていた。



『今日は学校を休むから駅まで来なくていいから』


 悠斗からのメッセージを笑麻は茫然と見つめる。

 

 珍しく笑麻は、自宅のリビングにあるパソコンの前に座っていた。その原因は、昨日の深夜に『田島悠斗対策会議』のグループチャットに寄せられた、翔太からのメッセージである。


『ヤバい。ネットで悠斗がさらし者になってる』


 そのメッセージが来たとき、不覚にも笑麻は夢の中であった。


 笑麻が寝ている間に、翔太と綾香は何件かその場でやり取りをした後、寝ているであろう笑麻を気遣って、個人メッセージへと切り替えたらしい。

 

 朝起きてその内容を確認した笑麻は、即座にグループチャットにメッセージを送る。すると、深夜まで起きていたではずの翔太からすぐに反応があった。

 

 翔太から教えられたサイトを確認し、怒りに震える笑麻。そこには悠斗やその家族に対する誹謗中傷の言葉が多数並んでいた。中には桜木高校の生徒であると思われる書き込みもある。


(悠斗君のことを何も知らないくせに……!なんでここまで酷いことを言えるの!?)


 そして気付く。


 おそらく悠斗が中学生の頃に体験したのは、こんな思いだったのだろうと。


 笑麻は涙があふれそうになった。 


 そんな時に送られて来た悠斗からの「学校を休む」という連絡に、笑麻は放心してしまったのだった。


(大丈夫……なわけないよ!)


 すぐさま笑麻は悠斗に電話を掛ける。リビングから自室に戻る途中で、悠斗の声がスマホから聞こえた。


「悠斗君!……大丈夫?」


 電話越しに聞こえる声はいつもより低い。これは単純に電話を通したゆえの声の変調であるのだが、今の笑麻にそれを冷静に判断する余裕はなかった。


(やっぱり……落ち込んでるよね)


 そんな精神状況の笑麻にとっては、気丈と思える言葉を悠斗が告げる。


「僕は別に大丈夫だ。ただ、学校に迷惑を掛けるかもしれないから今日は様子を見るってだけの話だよ」


 その“強がり”に笑麻は言葉が出ない。


 息を呑む笑麻に悠斗の言葉が続く。


「君にも迷惑をかけている。……本当にごめん」


 その言葉を笑麻は望んでいなかった。


 迷惑だなんて思わないし、謝って欲しいなどとはこれっぽっちも思っていない。


 怒り、哀しみ、寂しさ。様々な感情が心の中で渦を巻く。


 しかしそれを悠斗にぶつけるこはしない。それだけは絶対にしてはいけない。一番辛い思いをしているのは悠斗なのだから。


「こういう時は……“ごめん”じゃなくて“ありがとう”だよ」


 涙声で笑麻は告げる。


 それは咄嗟に口から出た言葉。ただ悠斗に謝って欲しくないという思いが溢れたものであった。


 よく考えれば意味の通らないものである。


 悠斗が笑麻に掛ける迷惑は、世話を焼いてもらうといった類のものではない。無粋な事だが、この場合は“ありがとう”ではなく“ごめん”で正解なのだ。


「……いつも側にいてくれてありがとう」


 その言葉に、笑麻の涙腺が崩壊した。

 

「なんで……なんでこんな時にそんなこと言うの」



 それは嬉し涙であった。


 初めて悠斗が、自分が側にいることを認めてくれた。


 友人としてなのか、恋人としてなのか、そんなことはどうでもいい。これだけ辛い状況で、それでも悠斗が自分を受け入れてくれたという事実がたまらなく嬉しかった。


 悠斗の返事はない。電話越しでも、悠斗が困っているのが伝わってきて思わず笑麻は微笑む。


「大好きだよ。ずっとずっと……何があっても大好きだから」


 心を込めた愛の誓い。 


 たとえ電話越しであっても、その気持ちは決して軽いものではない。


「ありがと」



 その誓いに対する返事は、小さな小さな感謝の声。


 そこに込められた思いもまた、決して軽いものではなかった。



 朝食を食べ、しばらくすると綾香が迎えに来た。


 思えば、笑麻と綾香が一緒に登校するのは久しぶりである。入学当初は一緒に登校していたが、しばらくすると、自然とお互い好きな時間に登校するようになった。二年生になってからは一緒に下校することはあっても登校したことはなかった。


「……笑麻、大丈夫?」


 ちなみに、悠斗が今日学校を休むことは当然綾香も知っている。悠斗・笑麻・綾香・翔太の四人で登録しているグループチャットでも、その報告がされていたのだ。


「大丈夫。一番辛いのは悠斗君だから」


 まだ少し赤い目をしているものの、笑麻は笑顔で答える。その笑顔に綾香が安心した矢先、耳慣れぬ声が聞こえた。


「小松……笑麻さんだよね?」


 二人組の男、一人はカメラをこちらに向け、既にシャッターを切っている。すぐさま綾香が笑麻の前に立ちふさがり男を睨み付けるが、ファインダー越しでも男が全く動じていないのが分かる。


「なんですか?」


 そんな男に向けて、笑麻は絶対零度の声を出す。綾香ですら聞いたことのない、心の底からの怒りの声であった。


「田島悠斗君……今話題だよねー?で、小松さんはその田島君の彼女だって聞いたんだけど……本当?」


 カメラを持っていない方の男が、にやつきながら問いかける。より険しい顔になる笑麻に追い打ちを掛けるかのようにシャッターの音が響く。


「答えるつもりはありません」


 そう言うと、笑麻は綾香の手を引いて歩き出す。


 男二人は回りこむようにして笑麻の横につくと、しつこく質問を浴びせる。何度かの質問の後、男が発した言葉が笑麻の逆鱗に触れた。


「大丈夫ー?弱味とか握られてない?……ほら、最近AVの強要がニュースになってるじゃない。小松さんも無理矢理AVに出演させられちゃったら、大変だよ?」


「ふざけないでください!悠斗君は……そんなことをする人じゃない!」


 睨み付ける笑麻に、男はしてやったりの表情を浮かべる。


「だって、中学生でAVの現場にいる子だよ?普通じゃないじゃない。小松さんみたいなかわいい子だったら、狙わ……っ」


 最後まで言い切る前に笑麻が男に殴りかかる。直前でなんとか綾香がそれを止めた。


「もう放っておいてください」


 それだけ言うと、綾香は笑麻を引きずるようにして学校へと向かう。腕の中の笑麻は、いまだに男に一撃を喰らわさんと暴れていた。それなりに学校にも近い位置であるため、周りの生徒の視線が集まる。


 結局、二人組の男は学校のすぐ近くまで着いてきた。もう少し、学校までの距離が長ければ、綾香もキレてしまっていたかもしれない。執拗に笑麻を撮影しようとするカメラマンと、無礼なことを言い続ける記者に、綾香の我慢も限界だった。


 学校につくと、二人は教室には行かず職員室へと向かった。今あった出来事を、担任である葉山に報告するためである。


 すでに葉山は出勤しており、二人が職員室に入ると直ぐに反応した。


 まだ落ち着きを取り戻していない笑麻に変わり、綾香がいきさつを報告する。真剣な顔で話を聞くと、葉山は笑麻の方に向き直った。


「……分かった。大変だったな、小松。ひとまず今日の帰りは、私が送って帰ろう」


 その言葉に頷く笑麻。


 緊張の緒が切れたのか、涙がポロポロとこぼれた。その様子に葉山は一瞬顔をしかめ、すぐに優しい顔を作る。


「それとも……今日はもう帰るか?」


「大丈夫です」


 俯きながら、それでもしっかりとした口調で笑麻が言う。そんな笑麻を葉山は、そして綾香も心配そうに見つめる。


「分かった。辛かったらいつでも言いなさい」


 そう言うと葉山は、綾香に軽く目線を向ける。その視線に軽く頷くと、綾香は笑麻を連れて教室へと向かった。


 結局この日、笑麻は最後までしっかりと授業を受けて帰った。帰り道は、葉山が同行していたこともあり、記者と思われる男が近寄ってくることはなかった。


「大丈夫です……もう、負けません!」


 明日は学校が休みである。


 来週の月曜日は迎えに来たほうがいいか、という葉山の申し出を笑麻は断った。そこまで葉山に迷惑を掛けたくないという気持ちもあったが、同時に悠斗と共に戦いたいという気持ちもあった。


「……分かった。ではこちらとしても注意しておく」


 そう言い残し、葉山は学校へと帰っていく。


 その後ろ姿を見送ると、笑麻は家の中へと入った。



 時間は少し巻き戻り、ちょうど桜木高校が昼休みのころ。田島信二が玄関のドアを開こうとしていた。


 朝早い段階でマスコミが自宅前に集まっていることを確認した信二は、すぐに各方面に連絡を取った。具体的には、悠斗と仕事で接したことのある関係者である。


 信二の思いはただ一つ。


 例え自分がどうなったとしても、悠斗だけは守りたいというものであった。そのために、自分に出来る限りのことをする。関係者との口裏合わせもその一環であった。


「古谷監督!息子さんがAVの制作に関わっていたというのは本当ですか!?」


 ドアを開けると同時に焚かれる大量のフラッシュ。


 朝よりは数が減ったように見えるが、それでもカメラを向けられる側としては大きな圧力を感じる。ワイドショーなどで散々目にしてきた自宅前での突撃インタビューは、想像していた以上に大きなストレスであった。


(この騒動が終われば……ここには住めないだろうなぁ)


 心の中のもう一人の自分が呟く。


 これだけの騒ぎだ。近所にかける迷惑も大きい。


「この度はお騒がせして申し訳ありません」


 頭を下げる信二を責め立てるかのように、再度焚かれるフラッシュ。


 顔を上げると、目の前には数本のマイクが突き出されている。


――息子さんは今、どうされているんですか!?


――AV出演を強要された女性が息子さんの件を告発したわけですが、息子さんも強要に関わっていたんですか!?


――息子さんにもAV制作を強要したんじゃないんですか!?


 複数人の記者が一斉に質問を浴びせかける。


 大きく一つ、息を吸い込むと信二は事前に用意した内容を話し始めた。


「えぇ……。息子がAVの制作に携わったというのは、あくまでも趣味の範囲内です。趣味で書いた作品のうち、出来が良いものを参考にさせてもらっているという事です」


 悠斗がどれほどの熱量を持って作品に携わっているかを知っている信二にとって、このようなことを言うのは断腸の思いであった。こんな“言い訳”を、「仕方ない」と受け入れた悠斗の姿に、信二は胸が締め付けられた。

 

 しかし、当然マスコミはそんな心情など知ったことではない。


――趣味でAVの台本を書くなんて不健全ではありませんか!?


――実際に息子さんが、女優さんと面接をしたうえで台本を書いていた、という噂がありますが、そこまでやっていて趣味という言い訳が通るとお思いですか?


 同時に浴びせられる質問に、答えを用意する時間がない。まごつく信二は、傍から見れば『マスコミの追及に言い訳できない犯罪者』のようであった。


「彼が趣味として書いた台本を読ませてもらって……彼の才能に気付いたわけです。私は職業柄、AV女優に顔が利きますから、彼の趣味を応援する形で、何度か女優を紹介したことはあります」


 徹底的に取材をされれば、悠斗が女優と面接していたことは発覚するであろう。それゆえの苦しい言い訳である。


――まだ学生である息子さんが、AV女優に会うことが不健全だとは思わなかったのですか?


「撮影現場を見せることは、勿論不健全だと考えます。しかし、撮影の場を離れれば、女優も一人の社会人です。特に不健全であるとは思いません」


 信二の答えに、一斉に非難の声が上がる。その中で聞こえた一部のあまりにも心無い罵声に、これ以上冷静さを保つことは難しいと信二は判断した。


「大変申し訳ありませんが、ここではご近所の方に迷惑をかけてしまいます。後日しかるべき対応を致しますので、今日はお引き取りください」


 そう言って報道陣に背を向ける信二。その背中に厳しい言葉が突き刺さる。

 

 後ろ手でドアを閉めると、玄関には涙ぐむ香織の姿があった。


「……すまん」


「ううん。……私も同罪だから」


 それが誰に対する、どのような罪であるのか。答えてくれる存在はこの場にいなかった。


 追い詰められた状況でくっついたカップルは、その後別れやすい、なんていいます。


 しかしそれは、今までなんとも思っていなかった相手、それこそ初対面の相手などが、緊急時にかっこよく見えたと錯覚するために起きることだと思います。


 要は、相手のことをよく知らないまま、錯覚に身を任せてしまうのです。


 悠斗と笑麻のように、互いを良く知る二人が困難を乗り越えた時、そこにはきっと絆が生まれることと思います。


さて!本日の後書きコーナー!


 皆さん、今、中国で日本のAV女優が人気なのはご存知ですか?


 一番有名なのは蒼井そらさん。


 中国で一番有名な日本人女性だと言われるほどの人気で、中国のSNSのフォロワーが2000万人を超えているそうです。


 さて、ここで中国のAV事情について紹介しましょう。


 中国では、基本的にAVを観ることは出来ません。また、AVを作ることも許されていません。


 お店でAVを売ることも出来なければ、アダルトサイトを運営することも出来ません。


 もしバレれば、逮捕されてしまいます。


 そんな中で中国の人達は、当局にばれないようにこっそりと、日本のAVを観ているのです。


 その一番メインの方法は、非合法にて運営されているアダルトサイトだそうです。


 逮捕されるリスクがあろうとも、AVを観る。


 人間、性に対する欲求は止められないのですね。

 

 現在、日本でもAVへの規制を強める声が聞かれます。


 仮に日本が、中国並みに厳しい規制を設けたら……。


 日本人は、どこのAVをこっそりと観るんでしょうね?


 もしそれが、日本人が作った非合法なAVだった場合、出演している女優さんは法の力では守ってもらえません。なにせ、法に反してAVに出演しているのですから。


 少なくとも、AVを規制すればAVを観る人はいなくなる。なんていう幻想だけは捨てるべきだろうと思います。


 健全なビジネスとして、法律の下、自由にAVを楽しめる社会の方がよほど健全であると、僕は思います。


 それでは、次話もお付き合いください。


 香坂蓮でしたー。


~参照リンク~


個人ブログ様ですね

http://storys.jp/story/3534


蒼井そら さん

http://aoisola.net/  英語・中国語・韓国語でも観れるというサイトです。国際派!


http://twitter.com/aoi_sola?lang=ja


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