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恋をした相手は、同級生のAV監督でした。  作者: 香坂 蓮
偏屈小僧に天使は微笑む
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3-3 桜木高校喧噪記

 問題は拡大の一途をたどります。


 では、どうぞ!

「やべーよな!?超うらやましい!」


「彩乃まなとか桃谷かなとかめっちゃかわいいもんな!」


「俺は源莉久が撮りてぇ!」


 記者会見の翌日、桜木高校でも『高校生がAVを作っている』というニュースは話題になった。


 とはいっても、まさか同じ学校に話題の高校生が在籍しているとは露とも知らず、一部の男子学生がお気に入りの女優を言い合っては盛り上がるといった感じであった。

 

 翌日になると、話題はさらにヒートアップした。


 テレビ各局が一斉に『話題の高校生』の素性の一部を報道したのだ。報道によると、その高校生はAV監督と元AV女優との間に生まれ、幼い頃から性産業に従事せざるを得ない環境で育てられてきたらしい。


 この報道により、件の高校生への評価は『うらやましい』と『かわいそう』が二分することとなった。


 校内の雰囲気が変わり始めたのは、記者会見から五日を過ぎたころあたりからである。


――どうも、例の高校生は二年の田島という生徒らしい。


 その噂は一瞬にして広まった。発信源が同時多発的に現れたからである。


「昨日さ……変なおっさんに『二年の田島』って知ってるか聞かれたんだけど?」


「あっ!俺も聞かれた。あのおっさん何だったんだ?」


 初日に悠斗を追いかけた記者なのか、それとも別の記者なのかは不明だが、ついに生徒への聞き込みが始まったのである。


 いきなり胡散臭い質問を問いかけてくる中年男性に無視をして立ち去る生徒も多かったが、一部の生徒は足を止めて記者の問いに答えた。そして逆に質問をぶつける。


――田島がどうかしたんですか?


 その問いに、男は声を潜めてこう答えたそうだ。


「実はね?最近話題のAVを作ってる高校生。あれ……田島君らしいんだよ」


 そのゴシップな内容は一気に広まり、桜木高生の好奇心を刺激した。嘘か本当か分からないような噂も多数ながれ、逆に記者の姿を探す生徒すら現れたほどだ。

 

 校内が浮足立ち、しかし誰も直接悠斗には確認出来ない。そんな均衡状態が数日続いた。

 

 それを破ったのは、一人の男子生徒の怒声であった。


「確かに俺には関係ねえよ。でもな?小松がAVに出るようなことがあったら……マジでぶっ殺すからな!」


 悠斗の胸倉を掴み睨み付けるこの男子生徒、名を田中という。

 

 笑麻が悠斗と出会って間もない頃、二人の仲を確かめようと悠斗の元に突撃をかけた、あの田中である。

 

 片思いをしていた笑麻に告白しフラれて以降も想いをずっと温め続けていた田中であったが、毎朝悠斗を駅まで迎えに行くなどの笑麻の一途な姿に、その恋を諦めていた。


 そんな田中だが、流れてくる様々な噂の中にどうしても黙っていられないものがあったのだ。


 それは悠斗の噂に合わさるようにして出来た噂。


 すなわち、悠斗が桜木高校の女子高生をAV女優にしようと画策しているというものであった。


「話があるんだけど、ちょっといいか?」


 当初田中は、悠斗をどこかに連れ出して二人で話をするつもりであった。


 しかし自分が悠斗に話しかけた瞬間ピリッと張りつめた教室の気配に、自分自身が呑まれてしまった。いや、この状況でもいつもの態度を崩さない悠斗に呑まれたのかもしれない。


「なに?」


「お前がAV作ってる高校生って……本当か?」


 前置きも何もなくいきなり本題に入るあたり、すでに田中は冷静ではなかったのだろう。そしてその緊張の糸は、悠斗の返答によってプツンと切れることとなる。


「君に関係ないでしょ」


 胸倉を掴み、今にも殴り掛かりそうな様子の田中を周囲の男子が引き離す。いつの間にか、悠斗を守るような位置に綾香が立っていた。

 

 騒然とする教室に担任の葉山が入ってくる。


 教室の様子を一瞥すると、葉山は眼鏡に手をやると特に声を荒げることなく問いかける。


「誰と誰が喧嘩したんだ?」


 人混みが割れるように分かれ、視線が悠斗と田中に集まる。


「田島と田中か。ホームルームが終わったら少し話を聞かせろ」


 葉山の指示で生徒達は席に着く。


 いつものように伝えるべき連絡事項を分かりやすく淡々と告げる葉山。しかしその内容が頭に入っている生徒は少なかった。


 連絡事項を伝えると、葉山は二人を連れて教室を出る。


 ざわざわとした雰囲気は、一限目の授業が始まるまで続く。授業が始まるとすぐに田中が教室に戻り、その後十分程してから悠斗も戻ってきた。

 

 ゆっくりと日常が戻ってくる。


 窓の外では灰色の雪が舞い、そしてすぐに止んだ。

 

 重い雲の切れ間から西日が差し込む頃には、全ての授業が終わり終礼の時間となっていた。


「まずは今朝の喧嘩の件だが、話を聞くと田中が一方的に手を出したということだ。そうだな?」


 葉山から水を向けられた田中は無言で頷く。


「どんな事情があるにせよ、手を出した奴が悪い。だから今回の喧嘩については田中が悪い。すでに田中は田島に謝罪をし、田島もそれを受け入れたので今回の喧嘩は解決した」


 その事後報告は文句のつけようのないものだった。しかし、ほとんどの生徒が何かもやもやとしたものを抱えたままである。それを葉山も分かっていた。


「今回の喧嘩は、田島に関する噂が原因ということらしい。今、世間で話題になっているアダルトビデオに関する噂だ」


 緊張が高まる教室。葉山は悠斗に目をやると、軽く会釈をした。


「田島のご両親がアダルト業界で働かれているのは事実だ」


 どよめく教室。

 

 葉山は両手をパンパンと打ち鳴らし、静粛を求めた。


「その事実を君たちが知らなかった。ということはどういうことか?」


 葉山の言葉に、生徒達は考え込むように黙り込む。


「田島がその事実を口にしなかったということだ。その話題になれば、職業の性質上どうしてもセクシャルな話になる。それによって不快な思いをする人がいるかもしれないと配慮したということだ」


 納得する者、しない者が入り混じっている。そんな状態である。


 葉山は続ける。


「田島が本学の生徒に対して悪辣なことをしたという噂もあるらしい」


 しかし、これも事実無根だと葉山は言う。


「現在、本学の女子生徒、ならびに直近の卒業生の中にAV女優として働いている人間はいない。ゆえに、田島が校内にて何人ものAV女優をスカウトしているという事実はない」


 仮に、悠斗がそのようなことを続けていたのならば、もっと早く噂になったであろう。


 既に高校二年生も終盤に差し掛かっているにも関わらず、今までにそんな話が一切出ていなかった時点で、眉唾モノの噂なのである。


 しかし、衝撃的な噂話というものは往々にして人の目を曇らせる。ここまで葉山が説明しても、真実を隠蔽しているだけだと感じている生徒が複数いるようだった。


「君たちには強く自制を求めたい。根も葉もない噂で盛り上がるのは楽しいだろう。しかし、それによって傷つく人間がいることを認識すべきだ」


 語気を強め、クラスを見渡す葉山。


「伝わりにくかったかもしれないが、田島は田島なりにクラスメートに対して配慮をしてきた。それを踏みにじるようなことをどうかしないで欲しい」


 以上だ、と葉山は終礼を締める。


 日直による号令がかかり、



 ひと昔前ならば、葉山の説明によって一件落着となっただろう。


 納得できない生徒達はこっそりと噂話を続けるだろうが、少なくとも表面上は終結したはずである。なぜならば、表立って問題を大きくすれば自分が悪者になってしまう可能性が出てくるからだ。


 しかし、現代社会では自分の身分を明かさずに、問題を大きく存在する手段が存在する。


 Twitterに、匿名のつぶやきが発信されたのはその日の夜のことであった。


『高校生でAV作ってる奴が、同じクラスにいた件』


 ご丁寧に、制服姿の悠斗の写真と共にアップロードされたそれは、あっという間に全国へと拡散された。


 自らのつぶやきに寄せられる膨大な反応に気を良くしたのか、そのアカウントはさらに確信的な情報を載せる。


『名前は”田島悠斗”。両親がAV関係者だって担任が言ってたから間違いない』


 この二件のつぶやきにより、インターネット上は所謂“炎上”という状態になった。


 全国から真偽不明の情報が寄せられ、その情報を検証していく作業が行われる。もちろん悠斗への罵詈雑言も多数寄せられた。


 そしてついに、悠斗の中学時代を知る人間がネット上に現れる。


 日付が変わった頃、某巨大掲示板に以下のような書き込みがあった。


『こいつ中学の時一緒だったわ。父親が監督の古谷ジローで、母親は女優の三浦ゆう』


 続けざまにアップロードされる一枚の写真。


 それは、かつて悠斗のクラスに出回ったあの写真であった。唯一違うのは、悠斗の幼馴染の顔が黒く塗りつぶされていることか。


 餌に群がる鯉のように、その投稿に反応が集まる。“三浦ゆう”の画像や作品のリンク、両親二人のWikipediaの情報などが寄せられ、三十分もしないうちにこの情報は真であるという結論が出た。


――マジかよ三浦ゆう子供いたのかよorg


――童貞はやっぱりママに奪ってもらったのかな?ww


――この二人の子供ならサラブレッドじゃん。そりゃAV作るわな


 掲示板はさらに盛り上がりを見せ、今度はそれがTwitterなどのネットメディアに波及していく。もはやその流れを止めるすべはない。

 

………

……



 仮想空間での大混乱など意にも介さず、静かに金曜日の朝が近づく。

 

 田島家の一室、夜中からずっと電気がついているその部屋に、悠斗の父親である信二の姿があった。ほぼ一睡もしていないためか、顔に刻まれた皺は普段よりも深い。仕事の際はしっかりとセットする黒髪も、何度もかきあげたせいか乱れてしまっていた。


(いよいよ……こうなってしまったか)


 夜も更け切った頃、仕事仲間からの電話でたたき起こされた信二は。そこで初めてネットの状況を知った。その後は、特に何が出来るわけでもないのにずっとパソコンの前から動くことが出来なかった。


――どうして放っておいてくれないのか。悠斗も、そして自分達も世間様に迷惑などかけていないじゃないか。


 思わず愚痴めいた考えが心に浮かぶ。そうこうしているうちにも時間は過ぎ、間もなく悠斗が起きだす時間だ。意を決したように信二は椅子から立ち上がり、悠斗の部屋へと向かう。


――コンコン


 そのノックに、部屋の中から返事が聞こえる。


 まだ寝ているものだと思っていた信二は少し虚をつかれたが、すぐに部屋へと入った。


「悠斗。少しいいか?」


 まだ寝間着の悠斗は座っていたベッドを軽く直すと、信二に続いて部屋を出る。互いに無言のまま、二人は信二の書斎へと入った。パソコンはでデスクトップ画面に戻っている。


「お前のことでネットが炎上している」


 そういうと信二は筋張った手でショートカットキーを押す。先ほどまで信二が見ていた、ネットニュースの画面が表示された。その見出しはこうだ。


――AV制作の少年 身元判明か!? ネット炎上


 続いて開かれたのは、掲示板の情報をまとめたサイト。


 そこには悠斗の写真や両親の写真も堂々と載せられていた。そこに記された、見るに堪えない言葉の数々から目を反らすかのように、信二は素早く画面をスクロールする。そのページの最下層まで下ったところで、信二は悠斗に振り返った。


「学校に苦情も行くだろうし、マスコミも本格的に動き出すかもしれない。ひとまず今日は学校を休みなさい」


 苦々し気な顔で、信二が告げる。


 なにより悠斗がかわいそうだった。自分達の仕事の影響で散々辛い思いをして、それでも自分の生きる道を見つけた我が子が、さらに辛い思いをする理不尽さを信二は呪った。

 

「分かった。三連休だと思ってのんびりするよ」


 口の端を上げ、シニカルに笑う悠斗。何も気にしていないように見えるその素振りに、息子の気遣いを感じてさらに哀しくなる信二。


 もう一週間もすれば冬休みだ。それまで学校に行けないことだって十分にあり得る。


 出来るだけ早く、この騒動が世間から忘れ去られることを願ってやまない信二であった。



 最近少し、後書きのコーナーがシリアスモードだったので、今日は少し楽しいテーマを。


 恵比寿マスカッツ。


 第二世代になって益々活躍されていますね。


 毎週水曜日のマスカットナイトを楽しみにしています。


 今話では、彩乃ななさん・桃乃木かなさん・湊莉久さんをモデルにした女優さんをこっそり登場させています。


 彩乃ななさん

 

 嘘つきななちゃんですね。


 そしてなぜか、パンダのイメージがある彼女です。


 ツイキャスなどで、とても気さくにファンとお話してくれるかわいい女の子です。


 桃乃木かなさん


 その細い身体からは想像できない程、よく食べるかなちゃん。


 かき氷とラーメン次郎をこよなく愛する女の子です。


 twitterを見てると、本当に信じられない量を食べているのでびっくりですよ?


 湊莉久さん


 小顔でスレンダー。正統派美人の湊さん。


 そのルックスからは想像もつかないファンキーな方です。


 一体何があれば、ガスマスクをかぶって高校に行くのか……謎です。


 普段は真面目だそうですが、間違いなく天才肌な湊さんです。


 他にもとても個性豊かなメンバーがいるので、是非是非チェックしてください。


 (悠斗のお母さんである香織のビジュアルモデルもマスカッツのメンバーですよー。詳しくは2-2を見てください)


~参照リンク~


恵比寿マスカッツ公式

http://twitter.com/ebisu_muscats_2


彩乃なな さん

http://twitter.com/ayano_nana1203?lang=ja


桃乃木かな さん

http://twitter.com/kana_momonogi?lang=ja


湊莉久 さん

http://twitter.com/riku_minato?lang=ja




 

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